5年前、ホークスは番狂せで東決勝進出を果たし、「若く勢いのあるチーム」としての期待を背負っていた。だがその後の4シーズン、アトランタのプレイイン・トーナメント出場は、ドレイモンド・グリーンのシーズン中出場停止よりも確実なものとなってしまった。
その4年間、ホークスは勝率5割から10試合以上離れることはなく、シーズン成績は順に43勝、41勝、36勝、そして40勝と、常に中途半端な位置にとどまっていた。
しかし、その平均的なバスケットボールの時代は、今年で終わりを迎えるはずだ。新シーズン初のメディア対応では、選手もスタッフも勝利数やプレイオフに関する質問を巧みにかわした。クイン・スナイダーHCは冒頭で「ホークスはリーグで3番目に若いチーム」であることを強調した上で、明確なメッセージを送った。
「私たちは忍耐強くありながら、緊張感を持つことができる」
ホークスは焦って物事を進めようとはしていない。とはいえ、自然とそうなる可能性もある。ペイサーズはわずか2年で35勝チームから、あと1勝で優勝というところまで到達した。NBAは模倣のリーグであり、どのチームも成功モデルからどう学べるかを考えている。ホークスは、そのモデルを実際に再現できる数少ないチームのひとつなのだ。
関連記事: 先発予想の150選手をランキング
ポジション別ランキング: PG | SG | PF | SF | C
ホークスが次のペイサーズになるには?
ホークスのオフェンスを「飛ばせ」
ペイサーズのオフェンスの代名詞といえば「走ること」で、本当によく走るチームだ。しかし、意外にも昨季の「hit-ahead passes(前方への速攻パス)」の回数トップはペイサーズではなく、実はホークスだった。アトランタは昨シーズン、リーグで最も高いトランジション(速攻)頻度を誇り、ペースでも3位にランクインしていた。
ただし、ホークスはその速攻のチャンスを十分に得点へ結びつけることができず、ハーフコートオフェンスでも十分な脅威を生み出せなかった。その結果、攻撃効率は中途半端な数字にとどまり、これがスナイダーHCがメディアデーで繰り返し使ったキーワードとなった。
「攻撃効率なんてボックススコアには載らないんだ。ネットで検索しても出てこない。みんなが見るのは最終的な数字だけだ。だから、その部分を伝えるのはメディアのみなさんの役割だよ」
ペイサーズが高い効率を維持できたのは、そのオフェンスが「予測不能」だったからだ。リック・カーライルHCはほとんどセットプレイをコールせず、選手自身の判断に任せてプレイを構築させていた。
カーライルは「試合がよりランダムで利己的でなく、その瞬間に最適なショットを見つけることに集中できれば、ディフェンス側にとって守るのはほぼ不可能になる」とオフシーズン中に語っていた。
スナイダーHCも、自身の新たに進化したオフェンスで同様の哲学を取り入れたいと語った。
「言葉を選ばずに言えば、ランダムなバスケットボールというか、読み合いに基づくバスケットボールを続けて磨いてきた。これが私たちのスタイルだ。ロスター(選手構成)も少しずつ形になってきていて、こうしたプレイをより高いレベルで実現できるようになってきていると思う」
その上昇のカギを握るのはジェイレン・ジョンソンだ。プレイメイキング能力を持つフォワードである彼の復帰は、攻撃力強化のために欠かせない要素となるだろう。
さらに新戦力の存在も極めて重要だ。クリスタプス・ポルジンギスは、トレイ・ヤングにとってこれまでになかった「ピック&ポップ」の理想的な相棒となる。また、リーグ屈指の効率を誇るポストプレイヤーであり、ミスマッチを執拗に突くことができる。さらに、アレクサンダー・ウォーカーは優れたシューターで、ルーク・ケナードは超一流のシューターだ。この2人の加入により、ヤングは昨季よりもはるかに広いスペースを活用できるようになる。
選手 | 1試合における3P試投数 | 3P% |
---|---|---|
クリスタプス・ポルジンギス | 6.0 | 41.2 |
ニキール・アレクサンダー・ウォーカー | 4.5 | 38.1 |
ルーク・ケナード | 4.0 | 43.3 |
ヤングはリーグ屈指のパサーでありながら、その実力に見合った評価を受けてこなかった。昨シーズン、彼は1試合平均11.6アシストでリーグトップとなり、キャリアを通じて毎年その平均を伸ばし続けている。
彼はこれまでリーグ2位にまで上り詰めたホークスのオフェンスの中心に常にいた存在だ。そして今シーズンは、彼の周囲にこれまでで最も充実したタレントが揃っており、ホークスがリーグトップ10の攻撃力を誇るチームになる可能性は十分にある。

ホークスはペイサーズのディフェンス戦略を盗めるかもしれない
ハリバートンの加入初年度、ペイサーズは「楽しいチーム」だった。だが危険なチームになったのは、ディフェンスが改善されてからだ。
トレイ・ヤング時代のホークスは長らくリーグ下位の守備に甘んじてきたが、実際のところ彼らはすでに昨季のペイサーズ(ディフェンス14位)に近い水準まで来ている。昨シーズン、ホークスは18位に浮上し、その立役者の一人がダイソン・ダニエルズだった。
この順位は今季さらに上がる見込みだ。注目を集めているのは身長約218cmのリムプロテクター、クリスタプス・ポルジンギスだが、アレクサンダー・ウォーカーも同じくらい重要な存在だ。
ペイサーズが守備で飛躍した理由のひとつは、バックコートでのプレッシャーを大幅に強化したことだった。
カーライルHCは「うちの差別化要素は、他のチームがやりたがらないことを選手たちが進んでやったことだ。コート全体をフィジカルに守り抜き、そのスタイルと姿勢に全員がコミットした」と語っている。
数字もそれを裏付けている。Synergyによると、ペイサーズはポゼッションの12.7%でフルコートプレスを仕掛けており、この数字はリーグで群を抜いていた。ホークスはわずか1.3%で25位。しかも、ペイサーズには「プレス時間」上位17人中11人が所属していたのに対し、ホークスで200位以内に入っていたのはダニエルズだけだった。
コート全体で守るには膨大なエネルギーを要するが、ホークスには今、ダニエルズとアレクサンダー・ウォーカーというその任務を遂行できる2人がいる。
「ニキールがいればスイッチもできるし、フルコートでもプレッシャーをかけて相手を苦しめられる」とダニエルズは話した。
ペイサーズがもう一つ改善したのは、ハリバートンの守備を補完する方法だ。彼は1対1で狙われることが多かったが、チームはその負担を軽減する戦術を整えた。ホークスも同様の対策をヤングに施す必要がある。
「相手は彼(ヤング)を狙う。なぜなら、それがオフェンス面に影響を与えるからだ。疲れさせようとしてくるんだ。でもダイソンのようにオンボールで優れたディフェンダーがいると、相手も考え直す。理にかなった話さ」とスナイダーHCは語る。
ハリバートン自身も守備面で成長し、カーライルHCは彼のために様々な守備を導入した。センターが用いる『ドロップカバレッジ』をポイントガードが使うのは珍しいが、ペイサーズはファイナル進出時にそれを織り交ぜていた。
スナイダーHCはリーグでも屈指の戦術家であり、ヤング自身もここ数年でディフェンス面の努力を強めている。それこそが守備改善の最も重要な要素だ。
もちろん、ヤングはいまもチームの中心であり、ホークスがどこまで行けるかは彼次第だ。彼は契約延長の対象であり、その話題は今季を通してついて回るだろう。だが、今のヤングは未来よりも「今」に集中している。
「今季は本当にいいチームが揃った。これまでとは違う感覚がある」とヤングは語る。
「未来がどうなるかは誰にもわからない。でも今、自分はここにいて、今に集中している。コーチともそう話している。ワクワクしてるし、もう準備はできてるよ」
原文:Hawks could be next Pacers: Why Trae Young, Kristaps Porzingis and company may be poised for a leap
抄訳:佐藤瑞紀(スポーティングニュース日本版)