ニューヨーク・ヤンキースはアメリカンリーグでトロント・ブルージェイズと並んで最高勝率を記録したが、ディビジョンシリーズ第4戦でそのブルージェイズに敗れ、今季のポストシーズン敗退が決まった。
ヤンキースはゲリット・コールとフアン・ソト抜きでも充分に戦うことができた。さらに何人かのバッターが今季ブレイクし、新人のキャム・シュリットラーが終盤に圧倒的なピッチングを見せたことで、今季もワールドシリーズに出場し、昨年を上回る結果を残すのではと期待されていた。
だが、今年のワールドシリーズに臨むアメリカンリーグのチームはヤンキースではなかった。ヤンキースは2026年に再びそのワールドシリーズ制覇を目指すため、どんな手を打つべきか考え始める必要がある。
可能性は低そうだが劇的な措置としてアーロン・ブーン監督の解任という選択肢がある。9月の展開が違っていたら、去就の可能性も変わっていたかもしれない。だが報道を見る限り、2024年にワールドシリーズ進出を果たしたブーンは来季も9シーズン目の指揮を執る見込みだ。
ここでは、ヤンキースの今オフシーズンの展望と、2026年シーズンに向けた変化の可能性を考察する。
今オフのヤンキースのフリーエージェント
ワールドシリーズ終了から5日後には主力選手数名がどの球団とも自由に契約できるようになるが、昨シーズンとは違い、今オフにヤンキースからMVP級の選手がフリーエージェント市場に出る可能性はない。
- コディ・ベリンジャー(外野手)*
- トレント・グリシャム(外野手)
- ポール・ゴールドシュミット(一塁手)
- デビン・ウィリアムズ(救援投手)
- ルーク・ウィーバー(救援投手)
- アメッド・ロサリオ(内野手)
- オースティン・スレイター(外野手)
- ジョナサン・ロアイシガ(救援投手)**
* - 2026年は2500万ドルのプレイヤーオプションあり。
** - 2026年は500万ドルのチームオプションあり。
ニューヨーク・ヤンキースはこの冬、打線の再構築を進める必要がある。主力打者と再契約するか、もしくは新たな戦力を獲得するかだ。好調なシーズンを終えたコディ・ベリンジャーは、複数年契約を狙って2500万ドル(1ドル152円換算で約38億円、以下同)のプレイヤーオプションを放棄する可能性が高い。また、トレント・グリシャムも34本塁打を記録したブレイクシーズンを武器に複数年契約を勝ち取りに動くだろう。
昨年12月に1年契約を結んだポール・ゴールドシュミットはフリーエージェントとなるが、4月の好調を維持できなかった。ヤンキースの主力一塁手として復帰する可能性は低そうだ。つまりヤンキースは来シーズン、再び一塁手のポジションを再考せざるを得ない。ベン・ライスが2026年の正一塁手になる可能性はあるだろうか? オースティン・ウェルズは正捕手として今後もプレイを続けるだけの実績を残せていないことを考えると、キャッチャーとしても出場しているライスを一塁に定着させるかどうかは悩ましいところだ。
投手陣に目を移すと、このオフシーズンにローテーションの主力投手を失うことはないが、デビン・ウィリアムズはブロンクスでの波乱の初年度を経て他球団へ移籍することになるだろう。またルーク・ウィーバーも2024年の成功を取り戻せないまま、フリーエージェント市場に出る。ジョナサン・ロアイシガについては故障で再び出場機会を制限されたため、ヤンキースは500万ドル(約7億6000万円)のチームオプションを行使しない可能性がある。
その他では、トレードデッドラインに獲得したユーティリティプレイヤーのオースティン・スレイターとアメッド・ロサリオも1年契約のため、今オフにフリーエージェントとなる。
ヤンキースの2026年の契約
2026年シーズンに向けてヤンキースの契約総額は2億230万ドル(約307億4960万円)の契約総額を抱えているが、ベリンジャーがオプトアウトすれば負担額は軽減される。来季も継続する主要契約は以下の通り。
選手 | 2026年年俸 |
アーロン・ジャッジ | 4000万ドル |
ゲリット・コール | 3600万ドル |
ジャンカルロ・スタントン | 2900万ドル |
カルロス・ロドン | 2780万ドル |
ライアン・マクマーン | 1600万ドル |
マックス・フリード | 1450万ドル |
ジャズ・チザムJr. | 年俸調停権 |
デイビッド・ベドナー | 年俸調停権 |
カミロ・ドバル | 年俸調停権 |
オースティン・ウェルズ | 調停権取得前 |
ルイス・ギル | 調停権取得前 |
アンソニー・ボルピ | 調停権取得前 |
キャム・シュリットラー | 調停権取得前 |
ホセ・カバジェロ | 調停権取得前 |
ベン・ライス | 調停権取得前 |
ウィル・ウォーレン | 調停権取得前 |
ジェイソン・ドミンゲス | 調停権取得前 |
総合的に見れば、ヤンキースは来季も多くの戦力が残留する見込みだ。ただし、残留組の中には高額年俸の選手も数名含まれている。
ジャズ・チザムJr.、デビッド・ベドナー、カミロ・ドバルの年俸は、冬の調停期間前または期間中に決定されるだろう。一方、調停権未取得の選手は新人契約の初期段階にあるため、年俸はリーグ最低額に近い水準となる。
ヤンキースは2026年に向けて6人の先発投手が残留するため、このオフはローテーションについて心配する必要はなさそうだ。マックス・フリード、カルロス・ロドン、キャム・シュリットラー、ウィル・ウォーレン、ルイス・ギルは全員2026年の契約が残っているほか、ゲリット・コールはシーズン開幕前にトミー・ジョン手術から復帰する予定で、クラーク・シュミットもレギュラーシーズン終盤には復帰できるかもしれない。
先発投手は多ければ多いほど良いが、ブライアン・キャッシュマンGMにとっては素晴らしい状況と言えるだろう。
では、ヤンキースはこの冬、誰をターゲットにするだろう? 以下のような選択肢が考えられる。
ヤンキースのこのオフの獲得ターゲットは?
先発投手陣については、層を増す意味で1~2人の補強するとしても大きな補強の必要性はない。ただ、そのほかのポジションはそこまで盤石ではない。
特に、キャッシュマンGMは外野陣について対策する必要があるだろう。ベリンジャーとグリシャムがフリーエージェントとなる見込みで、ジェイソン・ドミンゲスも不振が続いているからだ。ヤンキースはベリンジャーかグリシャムと再契約したいところだろうが、二人に複数年契約を結ぶのは現実的とは思えない。キャリアハイの成績を活かして高額契約を狙ってくるであろうグリシャムについては、これまで今季のような活躍はなかったことを考えると放出する方が安全かもしれない。
ヤンキースにとって不運なのは、カイル・タッカー(カブス)に大金を投じる覚悟がない限り、このオフは外野手のフリーエージェントの層が薄いことだ。有力候補はハリソン・ベイダー(フィリーズ)で、ルイス・ロベルト(ホワイトソックス)も獲得できる可能性があるかもしれない。ベイダーはニューヨークで成功を収めた実績があるが、ロベルトはシカゴ・ホワイトソックスがオプション権を行使しなかったとしても、かつての姿を取り戻せるかどうかは賭けとなる。
次は、ライスの今後について決めたところで一塁手のマーケットに目をむけることになるだろう。ここにはピート・アロンソとジョシュ・ネイラーが有力候補となる。アロンソは契約金額に見合う選手とは言えないが、ネイラーは今シーズンのトレードデッドラインでヤンキースが獲得を狙っていたと報じられている。
また、キャッシュマンGMは今季長期にわたって不振に苦しんだボルピとウェルズの今後についても見極めなければならない。ボー・ビシェット(ブルージェイズ)を除けば、遊撃手のフリーエージェントは手薄だ。捕手ではJ.T.リアルミュート(フィリーズ)が唯一確実な先発候補だ。
ブルペンでは、ベドナーとドバルが残るが、ウィリアムズとウィーバーが去ればポジションは2つ空くことになる。
キャッシュマンGMはトレードを活用することに迷いがない。選手を残留させられないとなれば、その穴を埋めるためにより創造的な方法を模索する可能性もあるだろう。
原文:Yankees offseason outlook: What's next for Aaron Judge, Cody Bellinger, Aaron Boone after 2025 playoff exit
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)
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