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ドジャースの前に敗れたフィラデルフィア・フィリーズの2026年シーズンに向けた変化・展望は?

石山修二 Shuji Ishiyama

Daniel Mader

ドジャースの前に敗れたフィラデルフィア・フィリーズの2026年シーズンに向けた変化・展望は? image

フィラデルフィア・フィリーズは4年連続でワールドシリーズ制覇の夢を叶えられなかった。

2022年にワイルドカードからワールドシリーズ進出を果たした時は驚きだった。ヒューストン・アストロズに敗れたはしたものの、ワールドシリーズ制覇の可能性へ確信を強めることができた。その後、フィリーズは主力選手たちを保持したまま3度ポストシーズンに進出し、その過程で2度のナショナル・リーグ東地区優勝を掴んだ。

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しかし過去3年とも、10月のストーリーは同じだった。打線が沈黙し、リードを明け渡し、チャンスを活かせずに終わる。レギュラーシーズン96勝を挙げた2025年もフィリーズの挑戦は昨年のワールドシリーズ優勝チーム、ロサンゼルス・ドジャースの前に敗退し、ナショナル・リーグ・ディビジョンシリーズ(NLDS)で幕を閉じた。

近年は安定した成功を収めてきたが、カイル・シュワーバーをはじめとした複数の中核選手たちがこのオフにフリーエージェントとなり、現在のチームは分岐点に達しようとしている。またしても失意のポストシーズンとなったフィリーズには2026年に向けてどんな道がひらけているのだろう。

ここでは、フィリーズの今オフシーズンの展望と、2026年シーズンに向けた変化の可能性を考察する。

今オフのフィリーズのフリーエージェント

ここ数年、フィリーズは主力フリーエージェントをほぼ残留させてきた。しかしこのオフはシュワーバー、捕手のJ.T.リアルミュート、サウスポーの先発投手レンジャー・スアレスという3人の主力選手がフリーエージェントとなる。その他のフリーエージェントは以下の通りだ。

  • J.T. リアルミュート(捕手)
  • カイル・シュワーバー(DH)
  • レンジャー・スアレス(先発投手)
  • ウォーカー・ビューラー(先発投手)
  • デビッド・ロバートソン(救援投手)
  • マックス・ケプラー(外野手)
  • ジョーダン・ロマノ(救援投手)
  • ティム・メイザ(救援投手)
  • ルー・トリビーノ(救援投手)
  • ホセ・アルバラード(救援投手)*
  • ハリソン・ベイダー(外野手)**

* -2026年は900万ドル(1ドル152円換算で約13億6800万円、以下同)のチームオプションあり。
**-2026年は1000万ドル(約15億2000万円)の相互オプションあり。 

フィラデルフィアは、オーナーのジョン・ミドルトンと編成本部長のデイブ・ドンブロウスキーの下、リーグでも屈指の資金を費やすチームとなった。これまではスター選手を積極的に獲得し、チームに留め続ける方針をとってきた。だが、4年連続でポストシーズンで敗退し、特に直近3年は高い期待を集めながら結果を残せなかったことで、フィリーズはこのオフ、複数のフリーエージェントを巡って決断を迫られる。

中でも最も注目されるのはカイル・シュワーバーだ。彼はレギュラーシーズンで56本塁打を放ち、MLBトップの132打点を挙げた。現在では主に指名打者としてプレイするシュワーバーだが、32歳という年齢にもかかわらず、その攻撃力から高額契約を獲得すると見られている。報道ではフィラデルフィア残留の可能性が高いとされるが、指名打者というポジションとポストシーズンでの不安定な成績を考えると、フロント陣としても要検討な存在となるかもしれない。

J.T.リアルミュートはフィリーズが残したいもう一人の主力選手だ。ただし彼の将来は、ドンブロウスキーが今オフにどこまでチームの変革を考えているか次第となる。控え捕手のラファエル・マルシャン(26歳)は今季42試合で打率.210に終わり、チーム内には明確な後継者がいない。そのため、リアルミュートと再契約するか、あるいは他チームから補強するか、判断が分かれるところだ。

左腕のレンジャー・スアレスについては、この3人の中ではチームを去る可能性が最も高いと考えられる。フィリーズには、アーロン・ノラと2026年の復帰を目指すザック・ウィーラーという2人のベテラン、さらにナショナルリーグのサイ・ヤング賞候補であるクリストファー・サンチェス、復活したヘスス・ルザードに加え、トッププロスペクトのアンドリュー・ペインターが控えている。2025年は26試合に先発し、防御率3.20、151奪三振という成績を残したスアレスではあるが、絶対に残留させなくてはならない選手とは言えないだろう。

そのほかでは、ウォーカー・ビューラー、デイビッド・ロバートソン、ティム・メイザ、ジョーダン・ロマーノ、ルー・トリビーノ、ホセ・アルバラドといった投手陣、マックス・ケプラーとハリソン・ベイダーの両外野手がフリーエージェントであり、チームを去る可能性がある。

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フィリーズの2026年の契約

2026年シーズンに向けたフィリーズの契約総額は1億8938万ドル(約287億8576万円)の契約総額を抱えている。ただし、ベイダーの相互オプションとアルバラードの球団オプションを行使することで、この総額は減少する可能性がある。来季の主要選手の契約は以下の通り。

選手2026の年俸
ザック・ウィーラー$4200万ドル
ブライス・ハーパー$2755万ドル
トレイ・ターナー$2727万ドル
アーロン・ノラ$2457万ドル
ニック・カステヤノス$2000万ドル
タイジュアン・ウォーカー$1800万ドル
マット・ストラム$750万ドル
クリストファー・サンチェス$350万ドル
アレック・ボーム年俸調停権
ヘスス・ルザード年俸調停権
ジョアン・デュラン年俸調停権
ブライソン・ストット年俸調停権
エドムンド・ソーサ年俸調停権
ブランドン・マーシュ年俸調停権
ギャレット・スタッブス年俸調停権
タナー・バンクス年俸調停権
ラファエル・マーチャン年俸調停権
オリオン・カークリング調停権取得前
ウェストン・ウィルソン調停権取得前
オットー・ケンプ調停権取得前

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2026年もチームに残る選手たちを見ると、フィリーズは来年のナ・リーグ東地区の優勝争いを繰り広げるチームとなるだろう。ただ、ラインアップの中で確実視されるのはすでに長期契約を結んでいるハーパーとターナーくらいで、その他の選手の状況は不明瞭だ。

例えばニック・カステヤノスは、攻撃力の低下と守備力の低さからスタメンから左投手要員となりつつあり、おそらくトレードでチームを離れることが予想される。アレック・ボームとブライソン・ストットは来季もチームに残るだろうが、内野の再編を考えればトレード要員となる可能性も考えられる。フィリーズ打線はパワーはあるが浮き沈みも激しいため、より安定性したラインアップに向けてコンタクトヒッターの獲得を目指すかもしれない。

先発ローテーションでは、2025年シーズンは血栓で離脱したウィーラーの完全復帰が待ち望まれる。体調さえ万全なら、彼はリーグ屈指の先発投手として計算できる。サンチェスとルザードもMLB屈指の左腕投手2人として、2026年のローテーションの核となる。ノラは2025年は期待外れだったが、2026年の復活が期待できる投手だ。さらにタイワン・ウォーカーとトッププロスペクトのアンドリュー・ペインターもMLBでプレイできるレベルにあり、先発投手陣の心配は必要ないだろう。

変化が続いているところを挙げるとすれば救援投手陣だ。残留する投手で計算できるのはストラム、カークリング、デュランくらいだ。

 


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フィリーズのこのオフの獲得ターゲットは?

先発投手陣については、スアレスとの再契約やバックアップ候補獲得を除けば、これといった補強の必要はない。またクローザー、一塁手、遊撃手も確定しており、二塁手と三塁手についてもトレード要員とならない限り、ストットとボームで決まりだろう。

残るポジションの中でフィリーズが取り組むべき課題は三つ、捕手、外野手、そして救援投手陣である。おそらく、フィラデルフィアは新たな選択肢を探すよりも、今チームにいるフリーエージェントの選手たちの残留を目指すだろう。

捕手で言えば、チーム屈指のオールラウンドな選手であり、チームリーダーでもあるリアルミュートの残留が最優先だ。34歳ながら、リアルミュートは後半134試合で打率.257、52打点と堅実な成績を残した。契約は短期契約となる可能性が高い。他のフリーエージェントの捕手も32歳以上のため、他に明確な選択肢は多くない。考えられるとすれば、ボルチモア・オリオールズでトレード要員と見られているアドリー・ラッチマンだろう。

外野陣については、フィリーズの取れる選択肢は多い。ブランドン・マーシュは後半戦好調だったが、トレード候補にもなり得る。彼は依然として右投手用の選手だろう。外野のトッププロスペクト、ジャスティン・クロフォードは2026年にフィリーズに昇格する見込みで、左翼手のポジションを獲得する可能性がある。

その意味で、ベイダーとの再契約は理にかなっている。トレードデッドライン後、彼は必要不可欠な守備力と安定した打撃を提供してきた。フィリーズ移籍後、打率.305を記録しており、31歳の彼には高額の契約を手にするチャンスがある。フリーエージェントで獲得可能なセンターは多くなく、セドリック・マリンズ(メッツ)、ルイス・ロバートJr.(ホワイトソックス)、トレント・グリシャム(ヤンキース)といった選手たちが候補となる。

ライトに目を向けると、ケプラーはフリーエージェント、カステヤノスはトレード候補となる。となると、フィリーズにはコディ・ベリンジャー(ヤンキース)、ミッチ・ハニガー、ラモン・ラウレアーノ(パドレス)といった選手を狙うことも考えられる。カイル・タッカー(カブス)はこのオフ屈指のフリーエージェントのスラッガーだが、フィリーズは既に高額契約を抱えているため、有力な移籍先とはならないだろう。

フィリーズが資金を投じるべきポジションはブルペンだ。クローザーには2025年のトレードデッドラインで獲得したデュランが既にいるので、候補となるのはカービー・イェーツ(ドジャース)、ルーク・ウィーバー(ヤンキース)、デビン・ウィリアムズ(ヤンキース)、ラファエル・モンテロ(タイガース)、テイラー・ロジャース(カブス)といった選手たちだ。

またしてもポストシーズンで早期敗退したことで、フィリーズは苦しい立場に置かれている。既にスター選手は揃っており、先発ローテーションも安定している。主要ポジションにおけるフリーエージェントを残留させることが2026年シーズンに向けた最良の選択肢と言えるだろう。それでも今オフのトレード市場では、フィリーズは積極的に獲得に動くべきと考えられる。

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原文:Phillies offseason outlook: What's next for Kyle Schwarber, J.T. Realmuto after 2025 playoff exit
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)

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石山修二 Shuji Ishiyama

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。生まれも育ちも東京。幼い頃、王貞治に魅せられたのがスポーツに興味を持ったきっかけ。大学在学時に交換留学でアメリカ生活を経験し、すっかりフットボールファンに。大学卒業後、アメリカンフットボール専門誌で企画立案・取材・執筆・撮影・編集・広告営業まで多方面に携わり、最終的には副編集長を務めた。98年長野五輪でボランティア参加。以降は、PR会社勤務・フリーランスとして外資系企業を中心に企業や団体のPR活動をサポートする一方で、現職を含めたライティングも継続中。学生時代の運動経験は弓道。現在は趣味のランニングで1シーズンに数度フルマラソンに出場し、サブ4達成。

Daniel Mader

Daniel Mader is a Content Producer for The Sporting News. He joined SN in 2024 as an editorial intern following graduation from Penn State University. He has previously written for Sports Illustrated, NBC Sports, the Centre Daily Times, the Pittsburgh Post-Gazette, The Daily Collegian and LancasterOnline. Daniel grew up in Lancaster, Penn., with a love for baseball that’ll never fade, but could also talk basketball or football for days.