■綱取り失敗からなかなか調子上がらず
大相撲の番付で上から2番目の地位である大関は、最上位である横綱の対抗馬としての活躍が求められる存在である。一般的には2ケタ勝利が及第点とされることが多く、1ケタ勝ち越しは“ハチナナ”(8勝7敗)、“クンロク”(9勝6敗)などという言葉で揶揄されることも珍しくない。
そのハチナナを3場所連続で記録しているのが、名古屋場所から一人大関となっている琴櫻だ。今年は綱取りをかけて臨んだ初場所で5勝10敗と大きく負け越し、自身初のカド番に。翌春場所で8勝を挙げギリギリでカド番を脱出したが、同場所から名古屋場所まで3場所連続で8勝が続いている。
勝ち越しがやっとという状態が続いていることもあり、場所を経るごとに歓声の量も減少している感は否めない。9月に予定される秋場所でも、現時点では優勝候補にはほとんど挙げられていない。だが、過去に同様の状況に陥った先輩大関と同じ道を辿れれば復調、そしてその先の優勝へ道が開けるかもしれない。
■大関で3場所連続8勝の前例は元兄弟子
琴櫻が現在記録している「大関で3場所連続8勝」は、角界では約13年ぶりの珍記録だ。前回記録したのは、現在秀ノ山親方として部屋を構えている琴奨菊。琴櫻にとっては自身が入門した2015年から琴奨菊が引退した2020年にかけ、佐渡ヶ嶽部屋で共に過ごした兄弟子にあたる。
琴奨菊は2011年秋場所後に大関に昇進すると、翌場所から5場所連続勝ち越し、内3場所で2ケタクリアとまずまずの滑り出しを見せた。ところが、昇進6場所目の2012年秋場所で左膝内側側副靱帯損傷に見舞われ、2勝2敗11休と大きく成績を落とすと、翌九州場所から3場所連続で8勝に終わった。
琴奨菊は左を差しながらのがぶり寄りを得意としていた力士だが、左膝の故障により得意技の威力を支える下半身の馬力が落ちた面があった。加えて、当時は2横綱(白鵬・日馬富士)、4大関(鶴竜・稀勢の里・琴欧州・琴奨菊)と同格以上の力士が多数いたことも好成績を阻む要因となっていた。ただ、2013年5月場所では11勝を挙げ久しぶりに存在感を発揮。同場所前に年寄名跡を取得し引退後のメドがついたこと、千秋楽まで優勝を争った稀勢の里らライバルの活躍に発奮したことなどが復調につながったとされている。
その後も右大胸筋断裂、左前脛骨筋挫傷など度々怪我に見舞われながらも大関の座を守った琴奨菊は、2016年初場所で自身初優勝(14勝1敗)を達成。結果的にはキャリアで唯一の優勝となったが、日本出身力士としては10年ぶりとなる賜杯獲得は多くのファンの感動を呼んだ。
■復調願う元兄弟子に応えられるか
琴櫻は琴奨菊とは所属部屋が同じ、左膝に故障歴アリ、3場所連続8勝は大関昇進後7場所目が起点など共通点が複数ある。であるならば、次の秋場所も琴奨菊と同じ様に11勝程度を挙げ復調を果たしたいところだろう。
琴奨菊も琴櫻の現状はかなり気になっているようで、『東スポWEB』(東京スポーツ新聞社/2025年7月22日付)が伝えたところによると、元弟弟子について「考えすぎて体が動いていない印象。以前ならしっかり体をぶつけて相手に圧力が伝わっていたし、上半身の柔らかさを生かして相手に巻きつくような差し身のうまさもあった。今は形にこだわりすぎて小手先だけで相撲を取っているから、重さも伝わらない。琴桜の本来の良さが消えてしまっている」と指摘。その上で、「勝ち負けや形にこだわらず、思い切って自分の相撲を取ることだけに集中してほしい。お客さんも、琴桜らしい相撲を見に来ている。いい相撲を一つ取れば、それがきっかけになって流れが変わるのも相撲だから。良かったころの自分の感覚を早く取り戻してもらいたいですね」とエールを送っている。
琴櫻は昨年全6場所中5場所で2ケタ勝利をクリアし、九州場所では自身初めて優勝(14勝1敗)、年間最多勝(66勝24敗)にも輝いている。ハイレベルな実力を有していることは間違いないだけに、秋場所ではここまで鳴りを潜めている強さが再び発揮されることを期待したいところだ。
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