■苦難を乗り越えようやく頂点を掴むも…
7月に行われた名古屋場所で自身初優勝(13勝2敗)を果たした平幕・琴勝峰は、多くのファンから苦労人として認識されている力士だ。名門・埼玉栄高校3年時に佐渡ヶ嶽部屋へ入門し、初土俵を踏んだのは2017年九州場所でのこと。2年後の同場所で新十両に昇進すると、翌2020年名古屋場所では新入幕を果たすなど、当初は順調に番付を上げていた。
ところが、右足関節捻挫で場所の大半を欠場した2021年春場所以降は、毎年のように故障に見舞われる苦しい状況が続いた。同年から2024年の間に2ケタ以上の白星を挙げられたのは、大関・貴景勝(現湊川親方)と千秋楽まで優勝を争った2023年初場所(11勝4敗)のみ。加えて、十両に2度も落ちる屈辱を味わった。停滞が長引くにつれて「才能がある力士」から、「才能が伸び悩んでいる力士」と見方も変わりつつあった。
今年も前半3場所は5勝、8勝、6勝と目立った結果は残せなかった上、夏場所では右太腿二頭筋肉離れにより序盤5日間は休場を強いられた。それだけに、名古屋場所での優勝は力士としての自信を取り戻し、ここまで停滞していたキャリアを再び突き動かすきっかけになり得るだろう。
名古屋場所は弟・琴栄峰が新入幕を果たした場所でもあったが、これも優勝の大きな原動力になったという琴勝峰。兄弟で切磋琢磨しながら番付を上げていくことを多くのファンが期待しているが、ようやく上向きだしたキャリアが再び地に落ちる可能性もあるという。
■角界OBは重大リスクを指摘
琴勝峰の相撲に懸念を示したのは、1990年~2000年ごろにかけ幕内で活躍した元関脇の貴闘力氏。同氏は7月29日、自身の公式YouTubeチャンネル『貴闘力部屋』に動画を投稿。動画内では、琴勝峰をはじめとした複数力士への見解を述べながら名古屋場所を総括している。
その中で、同氏は琴勝峰について「問題が1つあって、足が内側に入って軽くX(のような形)になってる。股関節とお尻の後ろと内転筋をもっと柔らかくして、外に向けるようにするべき。(13日目の横綱・)大の里戦の映像を見たら分かるだろうけど、足がもう内側に入っちゃってる」と、取組中に膝が内股のような形になっているように見えると指摘。
さらに、「もし俺が意地悪な力士ならまず顔を張る。顔を張ると脳震盪を起こすじゃない? ということは(身体の)力が抜けて、内側(側副靭帯)にもモロに負担がかかる。そこから肘と膝を入れてそのまま潰したらどうなる? 内側グチャグチャになるよね。それが心配だから、今から言っても間に合うかどうかは分からないけど、足を外に向けるような練習をやるべきだと思う」と、大怪我につながる危険性もあるため改善に取り組むべきだと述べている。
相撲に限らず多くの競技では、膝が中に入るのは膝や足首、股関節などの故障リスクが高い悪癖とされている。琴勝峰は過去に右足首や左膝などの故障歴があるが、これを踏まえると貴闘力氏が指摘した点は昨日今日の問題ではないといえそうだ。
■悪癖を改善するためには?
角界では対戦相手が故障や悪癖を抱えている場合、その部分を徹底的について追い込んでいくことは当然の戦略だ。名古屋場所では引き癖を露呈した大の里に対し、対戦力士が「立ち合いで押し負けなければ勝手に自滅する」と言わんばかりに勢いよく圧力をかけていたことも記憶に新しいだろう。このような事態に陥らないためにも、琴勝峰は現在参加中の夏巡業などで、フォームを重視して稽古に打ち込んでいく必要があるといえる。
同時に、名古屋場所で目立っていた積極的に前に出る相撲を継続していくことも有効策になり得る。受け身の相撲は身体への負担が大きく故障リスクも増すが、自分から攻めていけば逆に相手に負担を押し付けることができるからだ。師匠の佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は名古屋場所前、琴勝峰に下がらない意識を持つよう指導していたというが、次場所以降も口酸っぱく伝えていくべきではないだろうか。
名古屋場所で優勝したことで、他力士からのマークがきつくなることはほぼ確実の琴勝峰。悪癖を改善した相撲を身に着け、厳しい包囲網をくぐり抜けることはできるだろうか。
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