白鵬らが君臨した平成とは大違い!? 令和の大相撲、豊昇龍・大の里ら横綱陣が“V逸”続きのワケは

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■令和は横綱の強さに陰り

現在、相撲の番付には横綱、大関、関脇、小結、前頭、十両、幕下、三段目、序二段、序の口の計10地位が存在する。最高位である横綱は成績不振や故障などによる降格はない代わりに、常に勝ち続けることが責任とされている。

平成の時代は初期から末期まで、横綱たちは一定の責任を果たしてきた。相撲では過去に優勝10回以上を記録した横綱が15名いるが、白鵬(45回)、朝青龍(25回)、貴乃花(22回)、武蔵丸(12回)、曙(11回)の5名は平成時代に誕生している。成績が残せなければキャリアを絶たれるという重圧を背負いながら、優勝を重ね続けた姿はまさに横綱にふさわしいものだったといえるだろう。

ところが、令和の世に入ってからの横綱陣は、今一つ結果を残せていない状況が続いている。先の名古屋場所でも、豊昇龍は1勝4敗10休と早々に故障休場。大の里は11勝4敗を挙げたが、13勝2敗で優勝した平幕・琴勝峰には及ばなかった。これで横綱が優勝を逃すのは6場所連続となったが、V逸期間がここまで伸びるのは令和では2020年7月(東京開催)~2021年夏に続き2回目。平成では同等以上の記録は1回(1991年名古屋~1993夏)しか出ていないことを考えると、異例の事態が起こっているという見方もできるだろう。

■令和にピーク迎えた横綱はまだ不在

令和の横綱陣が苦戦している理由だが、まずは“間の悪さ”が挙げられる。令和初の場所になった2019年夏場所では白鵬、鶴竜の2横綱体制だったが、両名共に故障休場が頻発するなど衰えが目立っており、現役晩年を迎えていることは誰の目にも明らかだった。実際、鶴竜は2021年春場所、白鵬も同年九州場所限りで現役を引退している。

2021年7月場所後に横綱へ昇進した照ノ富士も、故障や病気で一時序二段まで番付を落としていた時期があることなどから、そう長くは身体が持たないだろうという見方が多かった、2025年初場所で引退するまで21場所横綱に在位したが、この間は6回の優勝を果たした一方、13場所で休場を強いられている。ファンの間では状態が万全なら…と惜しむ声は今も根強い。

その照ノ富士と入れ替わる形で、2025年初場所後に豊昇龍が横綱に昇進。同年夏場所後には大の里も後を追うように横綱になったが、両名は横綱としてはまだこれからの段階だ。このように、令和で全盛期を迎えた横綱がまだ1人も出ていないことが、大関以下に付け入る隙を与えている一要因であることは明白だろう。

■横綱復権のカギは稽古場にアリ?

全盛期の白鵬や朝青龍は、他の部屋への出稽古に非常に熱心だったことで知られている。自らの鍛錬はもちろん、若手の注目株などを相手に番数をこなすことで苦手意識を植え付け、本場所の対戦で心理的に優位に立つことも主目的だったという。その結果がどうだったのかは、前出の優勝回数を見れば一目瞭然だろう。

一方、令和の横綱陣は前出の通りトップフォームではない影響もあるのか、出稽古で精彩を欠いた、番数が今一つにとどまったというような報道が散見される。時にはコンディションを優先したり、何らかのテーマや縛りを設けたりといったこともあるだろうが、これでは相手を怖がらせるどころか「決して敵わないような相手ではない」などと逆に調子づかせてしまうことは想像に難くない。

2025年名古屋場所終了時点では、近いうちに横綱になれそうな力士はまだ見当たらない。そのため、現状打破には豊昇龍、大の里の成長が必要不可欠だ。豊昇龍は26歳、大の里は25歳とまだ若く、伸びしろも課題もまだまだ多い力士。長所を伸ばし短所を改善するため、今以上に稽古に打ち込むことが求められているといえるだろう。

豊昇龍、大の里の2横綱体制になった2025年夏場所以降、多くのファンやメディアの間では両名が切磋琢磨し、後に「大豊時代」、「豊大時代」と呼ばれるような一時代を築くことを期待する声が高まっている。その一歩として、まずは秋場所でどちらかが優勝を果たし横綱の復権を印象づけたいところだ。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。