“残念至極”呼ばわりの大の里、秋場所は横審黙らせる!? リベンジ果たした先輩横綱たちに続くには

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■横審に厳しい判断を下される

大相撲の本場所では、関取と呼ばれる幕内・十両の力士は初日~千秋楽にかけ計15番取組を行う。各地位によって望ましいとされる成績は異なるが、番付の最高位である横綱は12勝程度を挙げれば及第点とされることが一般的だ。

委員の中にも同様の考えを持つものが多かったのか、7月に行われた名古屋場所後に定例会合を開いた横綱審議委員会(横審)は、同場所11勝4敗だった新横綱・大の里に厳しい目を向けた。各報道では、左足親指の怪我により5日目から休場した豊昇龍も込みで「ファンの期待に応えられなかった結果を生んだことは残念至極だった」と総括したことが伝えられている。

横審の見解については否定的な見方をするファンも少なくはないが、名古屋場所の大の里が千秋楽までもつれた優勝争いについていけなかったことは事実である。9月に予定される秋場所では、横審を黙らせるためにもとにかく結果が欲しいところだが、過去の傾向を踏まえると期待度は高いといえる。

■先輩横綱の大半は翌場所で復調

角界では平成以降、大の里よりも前に12名の横綱が誕生しているが、その内8名は横綱デビュー場所で優勝や優勝次点は記録できなかった。その8名の同場所、翌場所成績は以下の通りだ。

曙   :10勝5敗→13勝2敗(1993年春→夏・優勝次点)
若乃花 :10勝5敗→12勝3敗(1998年名古屋→秋・優勝次点)
武蔵丸 :12勝3敗→12勝3敗(1999年名古屋→秋・優勝)
朝青龍 :10勝5敗→13勝2敗(2003年春→夏・優勝)
白鵬  :11勝4敗→13勝2敗(2007年名古屋→秋・優勝)
日馬富士:9勝6敗→15戦全勝(2012年九州→2013年初・優勝)
鶴竜  :9勝6敗→11勝4敗(2014年夏→名古屋)
豊昇龍 :5勝5敗5休→12勝3敗(2025年春→夏)

武蔵丸、朝青龍、白鵬、日馬富士の4名は、横綱としては初めてとなる優勝を果たすことに成功。曙、若乃花も優勝こそできなかったものの、次点の成績を残し横綱の責任を果たしている。

鶴竜、豊昇龍の2名は優勝戦線には今一つ絡めなかったが、デビュー場所からは数字を持ち直している。豊昇龍については千秋楽の一番で、全勝優勝がかかっていた大の里を撃破し先輩横綱の意地を見せたことは記憶に新しいだろう。

新たに横綱になった力士は昇進伝達式をはじめ様々な行事・イベントをこなす分、稽古やコンディション調整に充てる時間が削られることになる。加えて、デビュー場所からは初日から千秋楽まで毎日、7キロ前後の重さがある綱を締めて横綱土俵入りを行うことにもなる。心身の消耗が激しいことは想像に難くないが、一度慣れてしまえば本来の力を取り戻すことはそう難しい話ではないのかもしれない。

■引き癖とスタミナが秋場所の出来を左右か

大の里は身長192センチ・体重191キロと恵まれた体格を持ちながら、名古屋場所では自分から後ろに引いてしまう相撲が頻発。終盤戦ではほとんどの対戦力士が、引き癖を出させようと立ち合いから勢いよく突っ込んでいた。秋場所で結果を残したいなら、弱腰の相撲を改善することは絶対条件といえる。

また、名古屋場所終盤には疲労の影響で上手く体が動かなかった取組もあったというが、千秋楽までガス欠しないようなスタミナを養うことも重要となる。これについては現在参加中の夏巡業で、どれだけ充実した稽古を積むことができるかに尽きるだろう。

昨年の秋場所では13勝2敗で自身2度目の優勝を果たし、場所後に大関へと昇進している大の里。いいイメージが残っているであろう同場所で、横綱にふさわしい力量を見せつけることはできるだろうか。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。