横綱・豊昇龍、状態イマイチでも休場はNG!? 秋場所後に危惧される最悪のシナリオは

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■先場所休場後も不安拭えず

大相撲の世界で戦う力士の多くは、常に身体のどこかに怪我や痛みを抱えているとされている。相手力士に付け入る隙を与えること、痛いのはみな同じで言い訳にはならないことなどから、可能な限り詳細は明かさずだましだましやっているケースがほとんどだ。

1つあるだけでもケアが大変な弱点が、現時点で既に2つもバレてしまっている力士がいる。それが横綱・豊昇龍だ。7月に行われた名古屋場所では初日から1勝3敗と大きく黒星が先行すると、日本相撲協会に「左第1趾MTP関節捻挫、左第1中足骨骨挫傷で1か月間の安静・加療と休場を要する」という診断書を提出し5日目から休場。新入幕を果たした2020年9月場所以来ではワーストとなる1勝に終わった。

同場所後の8月3~31日にかけ行われた夏巡業も「左拇趾、脱臼骨折」により同月7日まで合流できなかった上、同23日には巡業参加中に左肩を痛めるアクシデントも発生。患部に一時テーピングを施しながら何とか完走したが、9月14日の秋場所初日までにどこまで状態が戻るかは不透明な状況だ。

名古屋場所では1つの故障で相撲が大きく崩れる形となったが、2つ故障を抱える秋場所は先場所以上に苦しい戦いになることは想像に難くない。患部の悪化や別箇所の故障が誘発するリスクも少なくないため、秋場所は全休し九州場所で再起をかけるというのも選択肢になり得るが、日本相撲協会や横綱審議委員会(横審)の存在を考慮するとその手は使えそうにない。

■場合によっては進退を迫られる事態に?

豊昇龍は今年1月の初場所で12勝3敗をマークし自身2度目の優勝を果たしたが、協会審判部は同月26日の千秋楽終了後、横綱昇進をはかる臨時理事会の招集を八角理事長(元横綱・北勝海)に要請し了承された。同理事長から諮問を受けた横審も、同27日の定例会合で豊昇龍を全会一致で横綱に推薦し、29日の臨時委員会で正式に昇進が決定された。

同場所限りで引退した横綱・照ノ富士(現伊勢ケ濱親方)と入れ替わる形になった豊昇龍だが、初場所の3敗は全て平幕相手の取りこぼしだったこと、直前の2024年九州場所では大関・琴櫻との千秋楽相星決戦に敗れ優勝を逃していたことなどから、ファンの間では昇進判断が甘いのではという指摘が相次いた。それでも協会や横審が豊昇龍を横綱に昇進させたのは、10月に34年ぶりのイギリス・ロンドン公演を控える中、横綱空位の状況に陥るのは避けたいという心理があったとみられている。

昇進後の豊昇龍は5勝、12勝、1勝と結果を今一つ結果を残せていないが、協会や横審は苦言を呈しつつも進退を迫るようなところにはまだ至っていない。しかし、秋場所休場でロンドン公演も不参加となれば、物議を醸す中で昇進させた意味が薄れてしまうため、これまでとは態度が急変する可能性も決してゼロではないのではないか。

■秋場所は皆勤2ケタが最低条件か

豊昇龍は現段階では、秋場所、ロンドン公演のどちらにも出場予定となっている。9月2日に出席した同公演に関するイベントの中では、多くの人に相撲の魅力を伝えたいと意気込みを口にしたという。

言葉通りに役割を果たしたいのなら、秋場所はどのような理由があろうが千秋楽まで皆勤し、最低でも2ケタ勝利はクリアしたいところ。逆に2場所連続で故障休場となれば、ロンドン公演に参加するどころの話ではなくなるだろう。

現状のコンディションを考えると見通しは厳しいと言わざるを得ないが、最終的な結果を左右するのは外野の予想や下馬評ではなく本人である。不甲斐ない場所が続くことに対するフラストレーションは間違いなくあるはずだが、秋場所では今までのうっぷんを晴らすような相撲を見せることができるだろうか。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。