■新入幕場所からの勢いは止まらず
7月13~27日にかけて行われた大相撲名古屋場所は、平幕・琴勝峰が13勝2敗で自身初優勝を果たした。その琴勝峰には及ばなかったものの、千秋楽まで優勝争いを展開した力士の1人が平幕・安青錦だった。
東前頭筆頭として名古屋場所に臨んだ安青錦は、初日から大関・琴櫻、横綱の大の里・豊昇龍、関脇の若隆景・霧島、小結の高安・欧勝馬と役力士との7連戦が組まれた。勝ち越しなら万々歳、負け越しでもやむなしというような状況だったが、大の里、高安以外の5名を撃破し5勝2敗で乗り切るという素晴らしい結果を残した。
これで勢いがついたのか、7日目~13日目は破竹の7連勝を記録し、13日目終了時点で琴勝峰と並び優勝争いの先頭に立った。14日目に平幕・草野、千秋楽で琴勝峰に敗れ優勝は逃したが、自身初金星を獲得した上での11勝4敗は立派の一言で、こちらも自身初となる技能賞を受賞した。
安青錦は今年春場所で新入幕を果たしたばかりだが、同場所を含め3場所連続で11勝をマークしている。次の秋場所での新三役昇進はほぼ確実で、同場所の成績次第では「三役で直近3場所33勝以上」という昇進目安にこだわらない形での大関昇進もあり得るのではという見方も出てきているが、他力士は躍進続く21歳をどのように攻略していけばいいのだろうか。
■名古屋場所の4敗から浮かぶ勝負のポイントは?
安青錦が名古屋場所で記録した4敗は、2日目の大の里戦、6日目の高安戦、14日目の草野戦、千秋楽の琴勝峰戦でそれぞれ喫したもの。大の里戦では立ち合い胸から当たられ突き起こされると、ほとんど何もできずに土俵外へ押し出された。高安戦では立ち合いの攻防から左を差して頭をつけると、初日に琴櫻を沈めた内無双を仕掛けたが、これをこらえた相手から上手投げを食らって敗れた。
草野戦では押し込んできた相手を突き離し一気に懐に入ったが、左上手を掴んだ相手に強引に振り回され最後は寄り切られた。そして、琴勝峰戦では膝から突き上げるような相手の圧力を受けると、そこからの突き落としで土俵にバタリと落ちた。
この4番を総合すると、対安青錦戦は懐に入られないようにケアしつつ、いかに上体を起こしていくかが勝負のポイントのようにみえる。時間をかけすぎると安青錦の生命線である左差しを許す確率も高まるため、大の里のように立ち合い一発で突き起こし、そこから休まず圧力をかけ続けるという相撲が理想ではないだろうか。
■高安・草野の攻め方も攻略のヒントになるか
安青錦は入門前に相撲と並行してレスリングにも打ち込んでおり、その経験も活かして低い体勢からの攻めを磨き上げている。足腰が強靭で重心も低いため突き起こすのはそう簡単な話ではないが、中盤の高安戦、優勝争い終盤の草野戦の相撲内容を踏まえると、それを逆手にとった攻略も決して不可能ではないようにみえる。
この両力士に共通しているのは、懐に入った安青錦の肩越しに上手を掴んだ後、そのまま横方向へ強引に揺さぶりをかけていること。死角から圧力をかけられる形になることもあってか、安青錦は横の動きには上手く対応することができていないような様子を見せていた。体格で上回る力士、リーチの長い力士にとっては、有効な戦略になり得るのではないだろうか。
彗星のごとく現れた新鋭が瞬く間に番付を駆け上がるという流れは相撲ファンにはウケがいいが、既存力士にとっては面白くない部分もあるはず。9月に予定される秋場所では、更なる出世を狙う安青錦とそれを阻止したい他力士の攻防に要注目だ。
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