優勝はおろか2ケタ勝利も厳しい!? 大相撲名古屋場所、平幕優勝・琴勝峰は次場所も輝けるか

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■中盤戦から負けなしでフィニッシュ

大相撲名古屋場所は27日、千秋楽の取組が行われた。最後まで大混戦だった優勝争いを制したのは、東前頭15枚目の琴勝峰だった。

今場所の琴勝峰は序盤5日間は3勝2敗と特に目立っていなかったが、6日目から破竹の連勝を開始し優勝戦線へ急浮上した。12日目~14日目にかけては、小結・高安、横綱・大の里、関脇・霧島を立て続けに撃破。その勢いのまま単独トップで千秋楽を迎えると、星の差1つにつけていた平幕・安青錦との大一番を制し、13勝2敗で自身初優勝を果たした。

琴勝峰は2023年初場所で優勝争いを演じるも、大関・貴景勝(現湊川親方)との千秋楽相星決戦に敗れ賜杯を逃した過去があった。約2年半前のリベンジを果たした25歳には次場所の活躍も期待されるところだが、過去の平幕優勝力士は翌場所苦戦したケースが多い。

■次場所は勝ち越せれば万々歳?

角界では2000年以降、平幕優勝力士が琴勝峰以前に12名誕生しているが、各力士の優勝場所、翌場所の結果は以下の通りとなっている。

貴闘力 :13勝2敗→2勝13敗(2000年春場所→夏場所)
琴光喜 :13勝2敗→9勝6敗(2001年秋場所→九州場所)
旭天鵬 :12勝3敗→2勝13敗(2012年夏場所→名古屋場所)
栃ノ心 :14勝1敗→10勝5敗(2018年初場所→春場所)
朝乃山 :12勝3敗→7勝8敗(2019年夏場所→名古屋場所)
德勝龍 :14勝1敗→4勝11敗(2020年初場所→春場所)
照ノ富士:13勝2敗→8勝5敗2休(2020年名古屋場所→秋場所)
大栄翔 :13勝2敗→8勝7敗(2021年初場所→春場所)
逸ノ城 :12勝3敗→6勝9敗(2022年名古屋場所→秋場所)
玉鷲  :13勝2敗→6勝9敗(2022年秋場所→九州場所)
阿炎  :12勝3敗→8勝7敗(2022年九州場所→2023年初場所)
尊富士 :13勝2敗→全休(2024年春場所→夏場所)

2場所連続で優勝を果たした力士はおらず、2ケタ勝利をクリアしたのは栃ノ心のみ。栃ノ心も含めた勝ち越しは5名で、負け越しに終わったのが7名と、全体の半数以上は思うような成績を挙げることができていない。

直近のケースである尊富士については、場所終盤に右膝を負傷しながら強行出場で優勝をもぎ取った結果、以降数場所にわたり同箇所などの故障に苦しむことになった。今場所前に右太もも肉離れに見舞われながら千秋楽まで戦い抜いた琴勝峰も、患部のケアには細心の注意を払わないと尊富士と同じような苦境に陥ってしまうかもしれない。

■優勝の勢いが続かない要因は

平幕で優勝した力士は当然ながら、次の場所では番付が大幅に上昇することになる。平幕下位から、横綱をはじめとした上位力士と総当たりになる地位まで一気にジャンプアップすることも珍しくないが、これにより対戦相手のレベルが跳ね上がることが翌場所に苦戦する第一の要因として挙げられる。

また、他力士からのマークがきつくなることや、優勝によって生じるイベントや各方面への挨拶回りなどで調整の時間が削られることも不安材料になり得る。平幕ではないが、先場所優勝し横綱へ昇進した大の里も、これらの要因により今場所の相撲が不安定になったのではとみられている。

こうした不安を払しょくして成績を残すには、来場所までにどれだけ質の高い稽古ができるかにかかってくるだろう。角界では8月3日~31日にかけ夏巡業が予定されているが、ここでなるべく多くの上位力士と胸を合わせ、来場所の戦略を練りたいところだ。特に、今場所対戦が無かった横綱・豊昇龍や関脇・若隆景らとは、もしチャンスがあれば優先的に申し合いを行うべきではないだろうか。

千秋楽の全取組終了後に行われた優勝インタビューでは、今後の番付の目標について聞かれ「上に上に。とりあえず三役、そしてその先も見据えてやっていきたいです」と答えた琴勝峰。来場所以降も結果を残し、自らの力で目標を達成することはできるだろうか。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。