■両横綱まとめてバッサリ
大相撲名古屋場所は27日、千秋楽の取組が行われ全日程が終了した。一夜明けた28日、豊昇龍・大の里の両横綱が横綱審議委員会(横審)から厳しい指摘を受けたことが報じられた。
各報道によると、東京・両国国技館で開かれた横審の定例会合では、13勝2敗で初優勝を果たした平幕・琴勝峰をはじめ、優勝争いを盛り上げた力士らが高く評価された。一方、左足親指の怪我により5日目から休場した豊昇龍、千秋楽まで優勝争いに絡むことができなかった大の里については「ファンの期待に応えられなかった結果を生んだことは残念至極だった」と総括したという。
横審は本場所千秋楽の翌日に定例会合を開き、「大関で2場所連続優勝、またはこれに準する成績」と内規で定めている横綱昇進の可否や、横綱の成績などについて話し合い見解を出す日本相撲協会の諮問機関である。今場所は豊昇龍、大の里のどちらも落第点だと結論付けたようだが、これについて相撲ファンの間では少なからず異論が挙がっている。
■横審には“任命責任”がある?
ファンが横審の見解に異を唱えている理由だが、豊昇龍と大の里でそれぞれ内容が異なっている。豊昇龍については、横審側に“任命責任”があるという意見が目立っている。
豊昇龍は12勝3敗で2度目の優勝を果たした今年初場所後、横審が全会一致で推薦を決定したことで横綱昇進が実現した。ただ、3敗が全て平幕相手の取りこぼしだったことや、直前の2024年九州場所で大関・琴櫻との千秋楽相星決戦に敗れ優勝を逃していたことなどから、当時は昇進判断が甘いのではと指摘が相次いでいた。また、照ノ富士(現伊勢ケ濱親方)の引退により、横綱が空位になるのを避けたい思惑もあったのではという見方もされていた。
物議を醸す形となった豊昇龍は、新横綱として臨んだ春場所は5勝5敗5休と振るわず。翌夏場所は大の里の全勝優勝を阻止しつつ12勝3敗をマークするなど存在感を見せたが、名古屋場所では2場所ぶりの途中休場となった。横綱として役割を果たしているとは言い難い状況となっているが、誰もが納得しているわけではない中で横綱に昇進させた横審の責任も大きいのではとみられているようだ。
■大の里の成績はそもそも悪くない?
次は大の里についてだが、こちらは11勝4敗という成績の捉え方が横審側とファン側で異なっていることが要因になっていると推測される。一般的に、横綱は優勝争いの中心的存在として、12勝程度をマークできれば及第点とされることが多い。今場所の大の里は白星が伸びず優勝争いにも今一つ絡めなかったため、横審は奮起を促す意味合いで厳しく指摘を行ったようだ。
一方、ファン側からは新横綱としての11勝4敗は、そこまで悪い数字ではないのではと指摘されている。角界では平成以降、大の里以前に12名の新横綱が誕生しているが、勝敗の内訳は13勝が4名、12勝が1名、11勝が1名、10勝が3名、9勝が2名、負け越しが1名となっている。1ケタ勝利や負け越しを喫したケースも少なからずあることを考えると、11勝は踏ん張った方だという評価もできそうだ。なお、大の里と同じ11勝を挙げた白鵬は、その後史上最多となる45回の優勝を重ねている。
今場所の見解を巡り意見がぶつかっている面もある横審とファンだが、豊昇龍・大の里が横綱としてふさわしい活躍を見せてくれることを期待している点は共通している。故障を抱える豊昇龍はもちろん、場所終盤は疲労で相撲が不安定になっていたという大の里も、コンディションを万全に整えた上で秋場所では逆襲を見せてほしいところだ。
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