成功確率75%!? 関脇・若隆景、大相撲秋場所での大関とりは“己との戦い”か

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■最後の大一番を制して望みつなぐ

大相撲名古屋場所は7月13日~27日にかけ、今年から新会場となったIGアリーナで行われた。最後までもつれた優勝争いの裏で、大関とりへ望みをつないだのが関脇・若隆景だ。

若隆景は小結で臨んだ2025年夏場所で12勝3敗の好成績をマーク。そのため、今場所は「三役で直近3場所33勝以上」という大関昇進目安を射程圏内に入れられるような好成績が期待された。迎えた場所では、中日までに4敗を喫し一時は可能性が潰えたかと思われたが、9日目から5連勝を記録し復調。14日目で横綱・大の里に敗れ連勝は止まったものの、千秋楽では同じく大関候補の関脇・霧島との大一番を制し、最後の最後で10勝5敗と星を2ケタに乗せた。

千秋楽後の報道では、大関昇進を預かる審判部の高田川審判部長(元関脇・安芸乃島)が「大関に上がるには、ドアは開いているから、あとは入るだけ」とコメントしたことが伝えられている。2場所合計22勝、両場所とも2ケタをクリアしたことで、審判部にも好印象を与えることに成功したようだ。

■11勝をクリアできる確率は75%?

次の秋場所は悲願実現へ向け非常に大事な場所となるが、実は若隆景は全6場所の中でもトップクラスに秋場所を得意にしている。2019年九州場所で新入幕を果たして以降、これまでに4度(2020年~2022年、2024年)幕内として秋場所を戦っているが、全ての場所で勝ち越しを記録。また、2020年(11勝)、2022年(11勝)、2024年(12勝)は2ケタ勝利もクリアしている。

今年の秋場所では11勝以上をマークすれば昇進目安クリアとなるが、過去に2ケタをクリアした3ケースではいずれも11勝以上をマークしている。そのため、今回も好相性を発揮できると仮定するなら、75%の確率で11勝クリア、すなわち大関とり成功という計算になる。

角界では名古屋場所と秋場所の間に夏巡業が行われることが慣例で、今年も8月3日~31日にかけ、近畿~北海道の各所を巡る予定となっている。ただでさえ過密日程な上、猛烈な暑さにも見舞われる厳しい期間だが、ここでどれだけ充実した稽古・調整を行えるかが秋場所成績を大きく左右するともいわれている。若隆景は稽古熱心な力士として知られ、名古屋場所前も出稽古などに精力的に取り組んでいたことが伝えられているが、こうした姿勢も秋場所で結果が出ている一因であることは間違いないだろう。

■最大の難関はコンディション調整か

若隆景は新関脇として臨んだ2022年春場所で自身初優勝を果たしたが、この頃から次期大関候補としての注目が一段と高まった。ところが、関脇をキープして迎えた2023年春場所終盤に右前十字靱帯損傷、右外側半月板損傷、骨挫傷、右外側側副靱帯損傷という大怪我を負ってしまい、翌夏場所から3場所連続で全休に。この影響で番付も東幕下6枚目まで降下した。

そこから不屈の闘志で関脇まで戻ってきたわけだが、もう一段上の大関を目指すなら古傷のケアは最重要事項といえる。名古屋場所でも右膝には厚くテーピングを巻いた状態で取組に臨んでいたが、秋場所も引き続き慎重に対応していく必要があるだろう。

また、一部報道によると、若隆景は黒星がかさんだ名古屋場所序盤で食あたりに見舞われていたという。15日間皆勤した上で大関とりに失敗するならまだしも、体調不良で本来の力を出せずに逃すのは本人にとってもファンにとっても悔やみきれない展開であるため、秋場所では絶対に二の舞は避けたいところだ。

目安をクリアできる地力は既に証明しているだけに、その力を十分に引き出せるような状態に持っていけるかがカギとなりそうな若隆景。2024年秋場所後の大の里以来となる新大関誕生を、自らの手で実現することはできるだろうか。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。