■堂々の成績で三役復帰も視野に
9月に行われた大相撲秋場所では、3名の力士が三賞を一つずつ分け合った。殊勲賞は東前頭2枚目・伯桜鵬、技能賞は西小結・安青錦、敢闘賞は東前頭7枚目・隆の勝が受賞したが、最も成績が良かったのは隆の勝だった。
同場所の隆の勝は1勝1敗で迎えた3日目から中日まで6連勝をマークすると、9日目以降も1敗、3連勝、1敗、2連勝と連敗はしないままフィニッシュ。13勝2敗で優勝決定戦を戦った大の里、豊昇龍の両横綱には一歩及ばなかったが、12勝3敗と堂々の数字を残した。
秋場所で大勝ちした隆の勝は、次の九州場所では2022年春場所以来となる小結復帰が濃厚となっている。同場所では2022年初場所以来の関脇復帰はもちろん、大関とりの起点にもなるような好成績を残したいところだが、そのためには長らく続く負の流れを断ち切る必要がある。
■2ケタ勝利の後は意外にも苦戦
隆の勝は新入幕を果たした2018年秋場所から2025年秋場所まで、幕内として37場所で相撲をとっている。この内、今場所を除く8場所で2ケタ勝利をクリアしているが、その8場所の当場所、翌場所成績は以下の通りだ。
2019年九州 :10勝5敗(西前頭12枚目)→2020初 : 7勝 8敗 (東前頭9枚目)
2020年春 :12勝3敗(東前頭 9枚目) →2020年7月 : 8勝 7敗 (東前頭2枚目)
2020年秋 :10勝5敗(西前頭筆頭) →2020年九州 : 8勝 7敗 (西関脇)
2021年九州 :11勝4敗(西前頭 2枚目)→2022年初 : 7勝 8敗 (西関脇)
2022年夏 :11勝4敗(西前頭 4枚目)→2022年名古屋: 1勝 6敗8休(西前頭筆頭)
2024年初 :10勝5敗(東前頭12枚目)→2024年春 : 5勝10敗 (西前頭3枚目)
2024年名古屋:12勝3敗(東前頭 6枚目)→2024年秋 : 4勝11敗 (東前頭筆頭)
2024年九州 :11勝4敗(東前頭 6枚目)→2025年初 : 6勝 9敗 (東前頭筆頭)
これまでの8場所では翌場所も2ケタ勝利をクリアしたケースは無く、勝ち越したのもわずか2場所のみ。直近のケースである2020年秋→九州からは約5年が経過しているという現状になっている。
2ケタ勝利をクリアした力士は他力士との兼ね合いはあるが、基本的には番付が大きく上がることが多い。平幕上位までいくと役力士以上と総当たりになったり、取組が幕内後半になったりといった変化も生じるが、過去8場所ではこの辺りの要素に今一つ適応できなかったのかもしれない。
隆の勝は幕内では優勝経験こそないものの、優勝同点1回(2024年名古屋)、殊勲賞1回(2022年夏)、敢闘賞5回(2020年春、2021年九州、2024年名古屋・九州、2025年秋)、金星3個(いずれも照ノ富士から)と豊富な実績を残している。上位でも通用するようなハイレベルな実力を有していることは明白なだけに不思議だが、もしかしたらメンタル的な問題で実力を出し切れていないという可能性もゼロではなさそうだ。
■秋場所の勢いを次場所以降につなげるには?
隆の勝は強烈なのど輪やもろ手突きを駆使した突き押しや右を差しての寄りを武器に、秋場所では1大関2関脇を撃破している。現段階でもかなりのクオリティを有しているといえるが、さらなるレベルアップのために、今まで以上に稽古に励むことがまず大事になるだろう。
また、今場所は千秋楽の東関脇・若隆景戦で、のど輪を繰り出し前に出ていたところから引いた結果、逆に土俵際に追い込まれるという場面があった。名古屋場所の大の里が記憶に新しいところだが、安易な引きに頼ると相撲が一気に崩れるリスクがある。14日目の西関脇・霧島戦のように、立ち合いから最後まで攻め切る相撲を重視する方が安定感は出るのではないだろうか。
今年の隆の勝は初場所から6勝、3勝、8勝、9勝と少し停滞していたが、秋場所で大勝ちした勢いのまま、1年最後の九州場所をいい形で締めくくることはできるだろうか。
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