大相撲秋場所は26日、13日目の取組が行われた。結び前には西横綱・豊昇龍対東大関・琴櫻という好取組が行われたが、その一番で一部客が残念な振る舞いを見せた。
豊昇龍は東横綱・大の里と並びトップタイの11勝1敗、琴櫻は8勝4敗で迎えたこの一番。立ち合い、豊昇龍は左足を踏み込んで当たりながら左上手を掴んだが、右足を踏み出した琴櫻もほぼ同じタイミングで右を差す。さらに、琴櫻は左をのぞかせながら胸を合わせると、一気に豊昇龍を土俵際へ追い込んだ。
劣勢の豊昇龍は琴櫻の右足に左足をかけつつ突き落としを狙ったが、体勢は崩れずに寄り切りで敗戦。角界最高峰の力士同士の対戦は、横綱がわずか4秒ほどで土をつけられるという結果になった。
一部客が残念な振る舞いを見せたのは、立ち合い直前の場面。この一番は行司が軍配を返した後も少々客席が騒がしかったものの、両者が腰を下ろすと館内は静寂に包まれた。先に両手をついた琴櫻に対し、豊昇龍も呼吸を合わせてさあ立つぞというタイミングで、突然「オイッ!」という大声が客席から響いた。
相撲の取組では一般的に、立ち合いは勝敗の8割以上を左右するとされている。そのため、多くの力士は勝負の直前まで戦略を練った上で、仕切りで極限まで集中力を高めて立ち合いに臨んでいる。そのタイミングで観客が大声を発することは、取組結果に大きな影響を与えかねないリスクがある行為だ。
また、大相撲観戦時のマナーや禁止行為について定める『相撲競技観戦契約約款』でも「相撲場内外でみだりに気勢を上げ騒音を出す行為」、「相撲競技の円滑な進行または他の観客の観戦を妨げまたは妨げる虞のある行為」などは禁止行為と定められており、主催者である日本相撲協会の判断次第では退場処分を受ける可能性もある。
取組後の報道では、両力士が立ち合い直前の大声について言及したとは伝えられていない。ただ、立ち合いで後手に回りそのまま敗れた豊昇龍には、何らかの影響が及んでいた可能性も決してゼロとは言えないだろう。しっかり力を出そうと集中している力士に水を差さないよう、取組を見守る観客には節度が求められているといえそうだ。
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