■場所前の負傷が悪化し途中休場に
大相撲名古屋場所は17日、5日目の取組が行われた。各力士の明暗が徐々に分かれつつある中、前日まで1勝3敗だった横綱・豊昇龍が5日目から本場所を休場することになった。
各報道によると、豊昇龍は今場所前の稽古で左足親指を痛めていたが、15日に行われた3日目の平幕・安青錦戦で患部が悪化。師匠の立浪親方(元小結・旭豊)とも話し合ったうえで、17日に「左第1趾MTP関節捻挫、左第1中足骨骨挫傷で1か月間の安静加療を要する」との診断書を提出し休場するに至ったという。
診断書の内容を額面通りに受け取るならば、豊昇龍は8月中旬ごろには治療期間を終え競技復帰できるということになる。翌9月に行われる秋場所には十分間に合いそうな見込みではあるが、故障箇所が箇所なだけに慎重な判断が求められているといえそうだ。
■故障が連鎖してしまったケースも
大相撲の力士にとって、足の親指は生命線とも言える。立ち合いで踏み込む時や土俵際で踏ん張る時など、相撲におけるありとあらゆる動きに密接に関わっているからだ。痛めてしまうと本場所で相撲をとることはおろか、稽古も満足に行えないような状態になるため、瞬く間にコンディションや相撲勘が衰えてしまうリスクは大きい。
角界では足の親指を故障したことをきっかけに、成績や番付を大きく落としてしまった力士は過去に少なからず存在する。2018年名古屋場所では、大関・栃ノ心が右足親指側副靭帯損傷を負い7日目から途中休場。この故障の影響で身体のバランスが崩れたのか、翌2019年は右大腿四等筋肉離れ(初場所)、右膝前十字靱帯再建後再断裂・左肩腱板断裂など(名古屋場所)、右肋軟骨骨折(九州場所)と相次いで怪我に見舞われた。同年秋場所で大関、翌九州場所で関脇から陥落した栃ノ心は、その後三役には戻れないまま2023年5月場所で引退している。
豊昇龍の故障の程度について、立浪親方は骨の部分に出血があることや、触るだけで痛みが生じるような状態であることなどを明かしているという。明らかに軽症ではなさそうなだけに、途中休場は懸命な判断だったといえるだろう。
■秋場所見送りも選択肢か
日本相撲協会の八角理事長は豊昇龍の今後について、コンディションを万全の状態に戻してからの復帰を求めているという。協会や横綱審議委員会(横審)がどこまで猶予を許すかは不透明な部分もあるが、場合によっては秋場所も休場し、九州場所で復帰するというのも選択肢に入るだろう。
豊昇龍は身長188センチ、体重150キロと幕内では軽量級の部類に入るが、組んでよし、離れてよしの相撲で大柄な相手と渡り合ってきた力士。その分、身体にかかる負担が大きい面もあるため、中途半端な状態で復帰すると怪我が再発したり、別箇所を新たに故障したりといった危険性も増すことになる。
また、近年の豊昇龍は右膝内側側副靱帯損傷(2024年初場所)、右内転筋挫傷(2024年名古屋場所)、右肘関節内遊離体、頸椎捻挫(2025年春場所)と他にも怪我に見舞われている。こうした古傷の再発を防ぐ意味でも、コンディション回復に充てる時間は長めに確保しておいた方が無難かもしれない。
豊昇龍は2025年初場所後に横綱へ昇進したが、昇進後は故障や不振が続いていることもあり、一部ファンの間では昇進を判断した協会や横審の責任を問う声も散見される。本人も不本意な場所が続くことを悔しく思っていることは想像に難くないが、次に出場する場所ではこうした声をかき消すような活躍ができるよう、患部の回復やコンディション調整に努めてもらいたいところだ。