■逆境を乗り越え秋場所で大関とりに挑戦
大相撲秋場所(東京・両国国技館)は、9月14日の初日が間近に迫っている。同場所の最大の注目点は、何と言っても関脇・若隆景の大関とりだろう。
若隆景は新関脇場所だった2022年春場所で初優勝を飾ったこと、同場所を含め7場所関脇をキープしたことなどから次期大関候補と目されていた。ところが、2023年春場所13日目の取組中に、右前十字靱帯損傷、右外側半月板損傷、骨挫傷、右外側側副靱帯損傷を負うという大アクシデントが発生。場所後に手術を受け、3場所連続全休を経て同年九州場所で復帰したが、この間に番付は東関脇から東幕下6枚目まで下がってしまった。
しかし、キャリア最大ともいえる逆境にもめげずに徐々に番付を戻し、2024年7月場所で幕内に帰還。今年は西小結で臨んだ夏場所で12勝を挙げ久しぶりに関脇に戻ると、名古屋場所でも2ケタ10勝をマークした。秋場所では11勝以上を挙げれば、「三役で直近3場所33勝以上」という大関昇進目安をクリアできる状況だ。
大関は東西に最低1人ずつは置かれなければならないとされる地位だが、現在は琴櫻1人しかおらず、空いた枠は横綱(先場所は大の里、今場所は豊昇龍)が「横綱大関」として兼任する形で埋めている。そのため、10勝でも昇進できる可能性はあると見る向きもあるが、できれば目安をしっかりクリアし堂々と昇進を果たしたいところだろう。
■昇進目安クリアを左右するカギは
昇進目安クリアに必要な11勝以上という数字だが、若隆景は過去に6度クリアした経験を持っている。右膝の大怪我以降も3度クリアしているため、秋場所でも十分に狙えるラインといえるが、実現できるかどうかは序盤5日間の出来に左右されそうだ。
若隆景は新入幕場所の2019年九州場所から2025年名古屋場所まで幕内に27場所在位し、全休した3場所を除く24場所に出場している。その24場所における序盤5日間成績、最終成績は以下の通りだ。
5勝0敗:0回
4勝1敗:5回(12勝3回、11勝1回、負け越し1回)
3勝2敗:5回(11勝1回、10勝1回、9勝2回、8勝1回)
2勝3敗:10回(11勝1回、10勝3回、9勝2回、8勝2回、負け越し2回)
1勝4敗:3回(9勝2回、負け越し1回)
0勝5敗:1回(負け越し1回)
4勝1敗をマークした場所では、そのほとんどで最終成績が11勝以上になっている。唯一負け越した1場所は右足首の怪我により4連勝の状態で途中休場しているが、これが無ければ好成績を残せていた可能性は高い。
3勝2敗と2勝3敗もそれぞれ11勝をクリアしたケースはあるが、当然ながら4勝1敗に比べるとその数は大きく減少している。また、2勝以下では負け越しを喫したケースがある上、1勝以下については11勝はおろか2ケタ勝利もないという状況だ。秋場所は1ケタ勝ち越し以下なら大関とりが保留、もしくは白紙に戻ることが確実なため、序盤は最低でも3勝は欲しいところだろう。
関脇の序盤5日間は、小結~平幕上位が対戦相手として当てられることが多い。秋場所でも同範囲には、先場所敗れた高安、安青錦の両小結を筆頭に難敵が揃っている。彼らを相手に、下からのおっつけで相手を浮かせ一気に攻め切るという得意の形で白星を重ねることができれば、自ずと期待も高まっていくだろう。
■コンディション面のケアも欠かせないポイントに
若隆景は8月3~31日にかけ行われた夏巡業を完走しているが、終盤に足首を痛めたことが報じられている。現段階では秋場所の出場に関わるレベルではないものとみられるが、初日までに悪化させないよう、日々の状態には注視していく必要がありそうだ。
また、一部報道では序盤5日間で2勝3敗と苦しんだ名古屋場所の前半は、食あたりに見舞われていたとも伝えられている。秋場所ではさすがに同じ轍を踏むことはないだろうが、その他の体調不良についてもリスクを回避する行動が求められているといえるだろう。
大関とりを期待する声が多いことは若隆景自身も認識しており、秋場所ではそうした声に応えられるような相撲を見せたいと意気込んでいるという。思わぬ怪我で一度は遠ざかった大関の座を目指す戦いはもう間もなくだ。
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