■盛り上がりに水を差す禁止行為が相次ぐ
大相撲名古屋場所は7月13日~27日にかけ、今年から新会場となったIGアリーナで行われた。13勝2敗で自身初優勝を果たした平幕・琴勝峰を中心とした優勝争いは千秋楽まで大いに盛り上がったが、そこに水を差すような観客のマナー違反が目立つ場所でもあった。
中でも特に目立ったのは、豊昇龍と大の里の両横綱が敗れた際に発生した座布団投げだろう。3日目の豊昇龍対平幕・安青錦戦では、豊昇龍の敗戦後に客席から大量の座布団が土俵へ向かって投げ込まれ、その内の1枚が弓取式を行うため土俵そばで待機していた力士に直撃する事態にもなった。
相撲観戦時のマナーや禁止行為について定める『相撲競技観戦契約約款』では、「土俵、座席、通路、階段等の相撲場への物品の投げ入れ」、「相撲競技の円滑な進行または他の観客の観戦を妨げまたは妨げる虞のある行為」などは禁止されている。また、主催者である日本相撲協会は来場者に配布する取組表にも、「座布団や物を投げて人にケガをさせた場合は、暴行罪・傷害罪に該当する場合があります。物は絶対に投げないようにお願いいたします」という注意文を記載している。にもかかわらず、複数回座布団が投げ込まれたわけだが、もう一歩踏み込んだ対策を行う時期にきているのかもしれない。
■座布団投げ撲滅へ有効な対策は
座布団投げを撲滅する方法としてまず思いつくのは、座布団を投げられないような重さ・構造にすることだ。九州場所では2008年から4人用マス席の座布団を、1人が座れる正方形の座布団4枚から、2人が座れる長方形の座布団2枚へ変更。さらに、2枚の座布団をひもでつなげることで、そう簡単に投げ込めないような状態にしている。コスト面などの問題からか他の場所では導入されていないが、徐々に導入していくことを検討する価値はあるのではないか。
また、座布団に各座席の番号を縫い付けるというのも一手かもしれない。表面に大きく縫い付ければ、投げ込もうとする時に必ず目に入るため、投げる寸前で思いとどまるケースが増える可能性はある。また、仮に投げ込まれた場合でも、席番号が分かれば違反者の特定・処分は容易に行えるだろう。
その他の方法としては、各座席の座布団をすべて撤去し、来場者自身が持参するスタイルへの移行も選択肢の一つになり得る。代わりに、売店で各力士がデザインされた公式マットやクッションを売り出せば収入増にもつながるのではないだろうか。
■相撲協会もシビアな対応をとるべき?
座布団投げに憤っている相撲ファンの中には、相撲協会側が違反者に対して厳正な処分を行うことを求める声も根強い。協会は今年3月、入場券を転売していた公式ファンクラブ会員を複数特定し強制退会処分にしたことを公式サイト等で公表しているが、座布団投げを行った観客にも同様の対応を行ってもいいのではということのようだ。
座布団投げは横綱が登場する結び前、結びの一番で発生することがほとんどのため、退場処分だけだとペナルティとしては弱い面がある。チケット購入サイトからの強制退会処分や、有期限もしくは無期限の本場所入場禁止処分なども合わせて課すことで抑止力になるかもしれない。
座布団投げは諸説あるが、力士に祝儀を渡したい客が個人を特定できるような品物を土俵へ投げ、これを返却しに来た力士に直接祝儀を渡すという、明治時代ごろにあった習慣が変化したものともいわれている。長らく続いているだけに対策は一朝一夕ではいかない部分も大きいだろうが、次場所以降状況が改善に向かっていくことを期待したいところだ。
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