■大きな期待を背に秋場所へ臨んだが…
9月に行われた大相撲秋場所は、東関脇・若隆景にとって大関とりがかかる場所だった。大関は「三役で直近3場所33勝以上」という昇進目安があるが、若隆景は夏場所は西小結で12勝、名古屋場所は西関脇で10勝をマーク。秋場所は11勝以上をマークすれば目安クリアという状況で臨んだ。
しかし、初日~5日目の序盤こそ3勝2敗と白星先行だったものの、6日目~10日目の中盤で2勝3敗と負け越し、この時点で11勝クリアの可能性が消滅。それならばせめて2ケタは死守したいところだったが、11日目~千秋楽は1勝4敗と大きく負け越し、2ケタはおろか勝ち越しすら逃す結果に。大関とりが白紙に戻っただけでなく、九州場所では三役からの陥落も確実視されている。
若隆景は5日目の取組で西前頭筆頭・阿炎を押し出した際、勢い余って阿炎もろとも土俵下へ転落。この際にテーピングで固めてある右膝を地面に強打しており、土俵下へ降りた後に険しい表情を浮かべる場面があった。6日目以降の苦戦ぶりを考えると、何らかのコンディション不良が生じていた可能性は高そうだが、その一方で場所前のアクシデントが大きく響いたという見方もある。
■角界OBが指摘した悪影響は
若隆景の苦戦について持論を述べたのは、2005年九州場所~2020年九州場所まで現役生活を送った元小結の臥牙丸氏。同氏は秋場所終了後の10月1日、自身の公式YouTubeチャンネルに動画を投稿。動画内では千秋楽まで優勝を争った大の里、豊昇龍の両横綱をはじめに、複数力士の名を挙げながら秋場所を総括している。
その中で、同氏は若隆景が場所前の9月5日に行われた横審稽古総見を発熱のため欠席したことについて言及。当時の報道では大事を取って欠席したと伝えられていたが、同氏は「元々身体は作ってきてるから、風邪が治れば何も変わらない」とコンディション面への影響は少なかっただろうと指摘。
一方、「自分らしく稽古ができないとモチベーションが上がってこない。『やっぱりあの日に休んだから…』(とか)、どこか足りない部分が心の中に湧いてくるから、それで自信が少なくなってくる。こんなに自信があってもちょっと(減る)、稽古を休んだとかで。そういうのはあると思う」と、メンタル面では少なくないダメージがあったのではないかと推察している。
相撲の世界では肉体や技術を磨き上げることはもちろん、「これだけ努力してきたのだからやれる」といった自信をつけるためにも日々の稽古は重要とされている。若隆景は発熱により5~7日の3日間稽古を控えることを強いられたというが、稽古量が減ったことにより、本場所で苦境に陥った際の心の拠り所をうまく築けなかったという面もあったのかもしれない。
■次場所以降の逆襲は体調管理次第?
6勝9敗の負け越しで大関とりを逃す形になった若隆景だが、今回は結果を出せなかっただけで、それまでの実績が無かったことになるわけではない。2023年に右膝の大怪我で関脇から幕下まで番付を落としながら、不屈の闘志で元いた地位まで戻って来たように、次場所以降また大関とりのチャンスを得る可能性はあるだろう。
ただ、それを実現させるには実力の維持・向上はもちろん、本場所で十分に実力を発揮できるようなコンディション調整も大事になる。若隆景は7月の名古屋場所でも、序盤に食あたりに見舞われるアクシデントがあったと伝えられているだけに、特に体調管理については今一度対策を考える必要がありそうだ。
次の九州場所では昨年、10勝5敗で技能賞を受賞する活躍を見せている若隆景。2年連続で好成績を挙げ、まずは三役への復帰を目指したいところだ。
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