【大相撲】大の里はどうなる? 白鵬や朝青龍も苦しんだ横綱デビュー場所の難しさ

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■抜群の安定感で横綱へ昇進

2025年7月13日~27日にかけ開催予定の大相撲名古屋場所(愛知・IGアリーナ)。優勝候補の筆頭は、新横綱に昇進してこの場所に臨む大の里だろう。

大の里は2025年3月の春場所で12勝3敗、同年5月の夏場所で14勝1敗という成績を残し、大関として2場所連続で優勝を果たした。この結果、5月場所後に第75代横綱への昇進が決定し、名古屋場所からは豊昇龍との2人横綱体制となる。

今年の大の里は初場所の10勝を含め前半3場所で36勝をマークし、幕内における年間最多勝争いの暫定トップを走っている。ここまでの安定ぶりを見ると、横綱デビュー場所となる名古屋場所でも優勝が期待できそうだが、過去の横綱を振り返ると意外にも苦戦したケースが多い。

■平成以降の優勝例はわずか3例

角界では平成以降、大の里より前に12名の横綱が誕生している。各横綱は大きな期待をかけられ横綱デビュー場所に臨んだわけだが、その結果は以下の通りとなっている。

旭富士 :13勝2敗(1990年秋場所、優勝次点)
曙   :10勝5敗(1993年春場所)
貴乃花 :13勝2敗(1995年初場所、優勝)
若乃花 :10勝5敗(1998年名古屋場所)
武蔵丸 :12勝3敗(1999年名古屋場所)
朝青龍 :10勝5敗(2003年春場所)
白鵬  :11勝4敗(2007年名古屋場所)
日馬富士:9勝6敗(2012年九州場所)
鶴竜  :9勝6敗(2014年夏場所)
稀勢の里:13勝2敗(2017年春場所、優勝)
照ノ富士:13勝2敗(2021年秋場所、優勝)
豊昇龍 :5勝5敗5休(2025年春場所)

期待通りに優勝を果たしたのは、貴乃花、稀勢の里、照ノ富士の3名のみ。歴代1位の優勝45回を誇る白鵬や、同4位の優勝25回を記録した朝青龍も、横綱デビュー場所では賜杯に手は届いていない。

また、優勝した3名も初日から15日間、他の力士に付け入る隙を与えず盤石の優勝を果たしたわけではない。貴乃花、稀勢の里は優勝決定戦、照ノ富士も千秋楽の自身の取組直前まで優勝争いがもつれている。

さらに、豊昇龍に関しては、新横綱としては39年ぶりとなる途中休場を強いられている。直近例が最も悪い結果というのも、大の里にとっては不安なところではないだろうか。

■本来の実力が発揮できない要因は?

「大関で2場所連続優勝か、これに準ずる成績」という過酷な条件をクリアして横綱昇進を果たしながら、直後の場所で苦戦を強いられる力士が少なくないのはなぜか。様々な考え方があるが、場所に向けた調整の難しさというのも理由の一つといえる。

横綱昇進が決まった力士は昇進伝達式をはじめ、明治神宮で行われる横綱推挙式・奉納土俵入り、昇進祝いのパレード、さらには各種イベント出演、メディア対応など慌ただしい日々を送ることになる。その分、稽古やコンディション調整に充てる時間は削られることになるが、これが本場所に影響を及ぼしている可能性は少なからずあるだろう。

また、他力士にとって対横綱戦は、勝てば懸賞金や金星など昇給にかかわる報酬が得られる重要な一番となる。ただでさえ大きなプレッシャーがかかっている中、目の色を変えた力士の挑戦を連日はねのけることは、いくら横綱といえどそう簡単ではない。

優勝可否がその後の力士人生を左右するわけではないが、大きな注目が集まる横綱デビュー場所でこそ、番付最上位まで上り詰めた実力を存分に見せつけてほしいところ。約1ヶ月後に迎える名古屋場所で、大の里がどのように千秋楽までの15日間を戦っていくのかは要注目だ。

柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。