右腕手術明けの尊富士、秋場所出場ならまさかの大勝ちも!?「60番くらい相撲を…」兄弟子も助けられた復調への好材料は

柴田雅人 Masato Shibata

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■秋場所出場は不透明も…

7月に行われた大相撲名古屋場所では、横綱・豊昇龍を筆頭に幕内では7名の休場者が出た。9月14日に初日を迎える秋場所では逆襲が期待されるが、平幕・尊富士については出場可否の見通しが不透明になっている。

尊富士は3勝2敗で迎えた名古屋場所6日目の取組で相手を寄り切った際、右腕を持っていかれる形で自らも土俵下へ転落したことで同箇所を負傷。7日目以降は2連敗、1勝、3連敗と明らかに調子を落としていた中、13日目に日本相撲協会に「右上腕二頭筋腱断裂で2カ月間の安静加療が必要」との診断書を提出し休場となった。場所後の8月に行われた夏巡業も全休していたが、各報道によるとこの間に右腕の手術を受けていたといい、秋場所の出場については流動的な状況だという。

故障により稽古量や実戦感覚が低下していることを考えると、仮に出場したとしても苦戦を強いられるように思われる。ただ、尊富士が所属する伊勢ケ濱部屋の特色を考えると、いい意味で予想を裏切るような相撲を見せてくれる可能性もゼロではないかもしれない。

■兄弟子は故障中の指導でレベルアップ

伊勢ケ濱部屋は先代(元横綱・旭富士、現宮城野親方)が長らく師匠を務めた後、2025年6月から当代(元横綱・照ノ富士)が師匠の座を継承し、先代ら3名の部屋付き親方と共に指導にあたっている。秋場所時点で力士数(33名)、関取数(7名、幕内5名・十両2名)ともに最多を誇る角界屈指の名門で、所属力士たちは日々激しい稽古と競争の中で鍛錬を重ねている。

先代は膵炎、当代は両膝故障や糖尿病などに長らく苦しめられたが、それを乗り越えて横綱の地位まで上り詰めた。こうした経緯があるからか、故障者に対しても簡単に休ませたりはせず、今できることに可能な限り取り組ませてレベルアップにつなげている。尊富士の兄弟子である十両・錦富士も、そんな部屋のスタンスに助けられた力士の一人だ。

錦富士は2024年2月17日放送の『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)に出演した際、左肘の故障を巡る先代親方とのやり取りを明かしている。錦富士は過去に3度左肘手術を経験しているが、術後に参加したある年の大阪合宿での稽古中、先代に「稽古ができないので今日は抜けてもいいですか?」と申し出。この時点で既に申し合いは20番ほどこなしていたというが、先代からは逆に「右腕はどうしたんだ?」と問われたという。

錦富士が右腕に問題はない旨を返答すると、先代は「じゃあまだいけるな」と続行を指示。この日は前出の20番に加え「60番くらい右腕だけで相撲を取らされた」そうだが、本人は「その時はちょっと厳しいなと思ったけど、今は相撲のバリエーションも増えて感謝しています」と振り返っている。

■アクシデントを怪我の功名にできるか

尊富士は立ち合いから素早く攻める押し相撲を武器とする力士だが、以前から筋骨隆々とした上半身に比べ下半身が細いと複数の親方衆から指摘されている。この影響もあってか、昨年は春場所で角界110年ぶりとなる新入幕での優勝を果たした一方、同場所終盤に右足を故障し翌場所は全休を強いられるなど苦しんだ。

ただ、今回の右腕故障・手術により上半身のトレーニングは少々やりにくくなった一方、下半身のトレーニングに割く時間が増えたことは想像に難くない。また、先代・当代親方は前出の錦富士のように、右腕以外の箇所を活かす相撲の形も仕込んでいるはずだ。こうした取り組みが新たな境地の開拓につながれば、早ければ秋場所から一味違った姿を見られるとしても不思議ではないだろう。

尊富士は再入幕した2024年九州場所から10勝、10勝、9勝、6勝、5勝と成績が徐々に落ち込んでいるが、右肩故障・手術を怪我の功名にすることはできるだろうか。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。