■人気商品が突然終売に…
近年の大相撲は、毎場所チケット争奪戦が勃発するほどの人気を博している。運よくチケットを手に入れたファンは各力士の取組はもちろん、多種多様なラインナップが揃う応援グッズやお土産もお目当てに会場へ足を運ぶ。
お土産の中でも特にユニークなのが「国技館カレー」だ。東京場所の会場である両国国技館の地下には日本相撲協会員専用の食堂があるが、そこで長年提供されているカレーをレトルトで再現したもの。2020年の販売開始からこれまでに「国技館カレー」、「国技館ハヤシ」、「北の富士カレー」、「甘口国技館カレー」の4種類が登場しており、シリーズ累計で200万食以上を売り上げているという。
4種類の中で唯一個人名が入っている「北の富士カレー」は、2024年11月に82歳で亡くなった角界OB・北の富士勝昭さん(第52代横綱)が監修した商品。2021年秋場所から販売が開始され、現在まで非常に高い人気を誇っている。ところが、日本相撲協会は2025年8月19日、協会公式Xで「先日行われた旭川場所では、北の富士カレー3,000個が来場者にプレゼントされましたり 販売開始から多くの方に愛していただいたこのカレーは、在庫分をもって販売終了となります」(原文ママ)と、同商品が終売となる旨をポスト。同ポストには「ずっと売ってくれると思ってました」、「終売反対です」、「レトルトカレーで一番好きな味です。何とか販売を継続してください」といったリプライが多数寄せられている。
■人気の要因は味以外にも
北の富士さんは1957年初場所の初土俵から1974年名古屋場所で引退するまで、通算786勝、幕内優勝10回、年間最多勝3回など数々の実績を残した名力士の一人だ。引退後も九重親方として千代の富士(第58代横綱)、北勝海(第61代横綱)の2横綱を育てたり、NHK大相撲中継の専属解説者として厳しくも温かい解説を行ったりと多方面に活躍し多くのファンに親しまれた。
その北の富士さんが監修した北の富士カレーについて、協会公式YouTubeチャンネルは2021年9月10日に、開発の裏側を収めた動画を投稿している。動画内では、国技館カレーシリーズの新作開発について相談を受けた北の富士さんが「他にいいアイデアなかったの?(現役の)お相撲さんを撮らなきゃダメだよ」と冗談を交えつつ、自ら包丁を握り商品開発に協力する様子が映っている。
当時は新型コロナウイルスの流行が続いており、高齢の北の富士さんにとっては外出に相応のリスクが伴う時期でもあった。また、相撲協会には長らく世話になったとはいえ、1998年の退職から既に20年以上が経過しているため、頼みを断ろうと思えば断れたはずだ。それでも協会のため、そして何よりも相撲ファンのために一肌脱いでくれたことも、北の富士カレーが販売開始から長らく人気を博している理由の1つであることは間違いないだろう。
■終売告知の影響は既に顕在化
北の富士カレーの終売理由について、協会は2025年8月26日時点では特にアナウンスは出しておらず、今後再販や復刻の可能性があるかについても不明。そのため、既に多くのファンが商品を確保しようとしているようで、協会公式通販サイト『SuMALL』では関連商品が全て売り切れとなっている。
また、大手フリマサイトの一つである『メルカリ』をみると、前出の終売告知後に北の富士カレーが出品・取引された履歴が複数確認できた。ファンの購買欲に付け込んだ“転売ヤー”も動き始めているようだ。
角界では不世出の横綱といえば、前人未到の69連勝を達成した第35代横綱・双葉山を指すことがほとんど。だが、初土俵から70年近くにわたり、土俵内外で角界に貢献し続けた北の富士さんもまた、唯一無二の横綱であったことは間違いない。
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