■史上最速で新三役昇進を達成
日本相撲協会は1日、14日に初日を迎える大相撲秋場所(東京・両国国技館)の番付を発表した。各段位で様々な力士の番付が変動したが、最も注目を集めたのは安青錦の新三役・小結昇進だろう。
安青錦は東前頭9枚目で臨んだ5月の夏場所で11勝4敗をマークしたことから、名古屋場所での新三役昇進が有力視されていた。ところが、夏場所で東小結だった高安が6勝9敗ながら西小結に残留したあおりを受け、東前頭筆頭にとどまる形となった。
番付運に恵まれなかった安青錦だが、名古屋場所ではそれを引きずることはなく11勝を挙げ、自身初となる技能賞を獲得するなど場所を大いに盛り上げた。この活躍により初土俵から所要12場所で新三役の座を掴んだが、これは年6場所制が定着した1958年以降(幕下付け出し除く)では、元大関・小錦、元横綱・朝青龍、元大関・琴欧州の14場所を上回る史上最速記録となった。
快挙を打ち立てた安青錦だが、秋場所でも達成が期待される大記録が2つある。一つは、新入幕から4場所連続の2ケタ勝利。そしてもう一つは小結としての優勝だ。
■小結優勝が過去にほとんど出ていないワケは
年6場所制が定着して70年近くが経つ角界では、これまでに数多の優勝力士が誕生してきた。もちろん、小結が優勝したケースもあり、直近では2024年夏場所で西小結・大の里(現横綱)が12勝3敗で自身初優勝を果たしている。
ただ、1958年初場所から2025年名古屋場所までの計406場所で、小結が賜杯を手にしたのは大の里を含めても6例のみ。幕内で一番下の地位である平幕の優勝(27例)よりも少ない状況となっている。
なお、同期間では第45代・若乃花から第75代・大の里まで31人の横綱が誕生している。数字だけを単純に比較すると、小結優勝は横綱昇進以上に成し遂げることが困難な記録であるともいえる。
小結には昇進に必要な条件は特に定められておらず、他力士との兼ね合いによっては5枚目近辺で8勝にとどまった力士が一気に引き上げられるケースもある。また、場所前半は横綱~平幕上位、後半は好成績を挙げている平幕中位~下位力士と当てられることが多いため、1場所を通じて難しい対戦が続く地位でもある。こうした要素などから、小結の力士が賜杯まで辿り着くのは非常に困難となっている。
■偉業を成し遂げるためのポイントは?
ただ、安青錦は前出の通り3場所連続で11勝をマークし堂々の昇進を果たしている上、先場所は1横綱1大関2関脇1小結を撃破している。既に幕内上位で戦える力を身につけていることは明白なため、史上7例目の小結優勝を成し遂げる可能性も決してゼロではないだろう。
また、過去1年の本場所では、優勝力士の成績は12~14勝となっている。仮に14勝以上で優勝すると同時に、秋場所で関脇・若隆景の大関とりが失敗に終わった場合は、次の九州場所がいきなり大関とりの場所になるという展開もあり得るかもしれない。
安青錦は名古屋場所では大の里、高安、平幕の草野、琴勝峰に敗れているが、大の里、琴勝峰戦は立ち合いからなかなか懐に潜り込めずに力負け。高安、草野戦は肩越しに回しを掴まれ、強引に横方向へ振り回されたことで体勢を崩し敗れている。こうした負け筋をケアしつつ、最大の武器である低く鋭い攻めのクオリティをさらに上げていくことで偉業達成が見えてくるのではないだろうか。
安青錦は番付発表と同日、師匠・安治川親方(元関脇・安美錦)と共に会見を行った。そこでは三役はあくまで通過点であり、師匠を超える大関を目指していきたいと今後の抱負を語ったというが、秋場所では果たしてどのような相撲を見せてくれるのだろうか。
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