先場所“準優勝”の熱海富士、長年の悪癖を克服!?「まだ良くない部分も多いけど…」師匠も評価する成長は秋場所でも見られるか

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■名古屋場所では悔しさ味わう

大相撲秋場所(14日初日・両国国技館)で東前頭3枚目に位置する伊勢ケ濱部屋所属の熱海富士は、天真爛漫な性格の持ち主として知られている。本場所では勝って花道を引き揚げる際、ニンマリと笑顔を浮かべる様子がしばしば中継カメラに抜かれており、これもファン人気が高い要因の一つとなっている。

2025年7月場所14日目、その熱海富士が花道で顔をゆがませ、悔しさを抑えきれないような姿を見せたことが話題となった。熱海富士は13日目終了時点で10勝3敗をマークし、優勝争いトップを走る平幕の琴勝峰、安青錦を星の差1つで追っていた。しかし、14日目の小結・高安戦は立ち合いから前に出て土俵際へ追いこんだまではよかったが、そこから攻めきれないまま右四つに組まれ、最後は下手投げで転がされ敗北。本人は勝てる一番を落としたという感覚だったのか、花道では苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべながら、右手に持ったさがりを数回振り回していた。

直後の取組で琴勝峰が2敗をキープしたことで、熱海富士の優勝可能性は消滅。2023年秋場所、同年九州場所に続き、自身3度目となる優勝争いも敗れる結果となった。それでも、間近に迫る秋場所では、名古屋場所に続いて活躍が見られそうな気配が漂っている。

■師匠も悩ませる悪癖に克服の兆し

名古屋場所では優勝に加え三賞も逃した熱海富士だが、2023年九州場所以来約1年半ぶりに白星を11勝に乗せている。今年は5勝、6勝、8勝と今一つの場所が続いていたが、ここまでの悪い流れを払しょくするには十分の数字といえるだろう。

白星が伸びた要因についてだが、これはただのまぐれではなく、師匠・伊勢ケ濱親方(元横綱・照ノ富士)との取り組みが実を結びつつある結果だといえる。伊勢ケ濱部屋は8月7日、部屋の公式YouTubeチャンネルに千秋楽パーティーの様子を収めた動画を投稿している。その動画の最後で、伊勢ケ濱親方は熱海富士について「まだ立ち合いからの流れがあまり良くない部分も多いけど、相手にどうやって圧をかけるかというのは本人も徐々に掴んできたみたいで、11番も勝ててよかったんじゃないかと思います。これからも諦めずに指導していきたいなと思います」と評価している。

伊勢ケ濱親方は現役時代から、立ち合いでの回しの取り方や足の動かし方などを熱海富士に口酸っぱく指導している。まだ完全に形が固まったわけではないようだが、ここまで出世を停滞させてきた悪癖を着実に克服しつつあるようだ。となると、秋場所以降はさらに成績に安定感が増していくことも十分に期待できるのではないだろうか。

■肉体面の成長も追い風になるか

技術面だけでなく、肉体面で成長がみられる点も秋場所に向けての好材料だ。日本相撲協会は9月3日、十両以上の力士の身長・体重を発表しているが、熱海富士は夏場所前の発表から12キロ増え、幕内最重量の192キロを記録している。日々の稽古や食トレを真摯にこなしてきたことの表れといえるが、体重が増えればその分相手にかかる圧力も増すため、前出の高安戦のように最後の詰めに苦戦するような取組は減らせるのではないか。

ただ、体重の増加には膝をはじめとした部位の負担や故障リスクを高めるデメリットもある。熱海富士は初土俵を踏んだ2020年九州場所から2025年名古屋場所まで故障休場の経験はないが、今後は今以上に身体のケアに気を遣う必要があるといえるだろう。

熱海富士はこれまで平幕上位の経験は何度もあるが、三役に在位した経験はまだない。来たる秋場所では優勝争いや三役の壁を破るような相撲を期待したいところだ。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。