MLB屈指の『鈍足』マリナーズのジョシュ・ネイラーが盗塁を決められるようになった訳

Dan Treacy

石山修二 Shuji Ishiyama

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今年7月にジョシュ・ネイラーを獲得した時、シアトル・マリナーズは優れたバッターを手に入れたことは分かっていた。だが、これほど脅威的な盗塁の能力を持つ選手だったとは予想していなかったかもしれない。

クリーブランドでメジャーリーグ・デビューした時から、ネイラーはスピードで知られた選手ではなかった。だが、レギュラーシーズン終盤の2ヶ月間、ネイラーは予想外の走塁面でのアドバンテージをマリナーズにもたらした。実際、彼の攻撃的な走塁がマリナーズの早期敗退を回避し、チャンピオンシップシリーズ進出へと導く要因となった。

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アメリカンリーグのチャンピオンシップシリーズ第5戦、デトロイト・タイガースのタリク・スクーバルがマウンドに立つ中、ネイラーは三盗を試みた。このプレイが延長15回まで膠着状態が続いた試合でマリナーズに得点をもたらした。この結果、マリナーズはスクーバルに屈することなく、今も球団史上最高のポストシーズンを駆け抜けている。

ここでは、ネイラーの驚異的な盗塁成功率、そして彼がその平凡な走力をどう克服しているのか、その秘密を紐解く。

ネイラーのこれまでの盗塁数

ネイラーは2025年シーズンの開幕前の時点で、6シーズン通算25盗塁を記録していた。しかし2025年シーズンは早期敗退を回避で、たった1年だけでその記録を倍以上伸ばした。

7月にマリナーズへトレードされた時点で、ネイラーは既に自己最多となる11盗塁を記録していた。だがシアトルに来てからは54試合で19盗塁と脅威的な走者となる術を身につけ始めた。これは162試合に換算すると57盗塁のペースだ。ちなみに2025年シーズン、50盗塁以上を記録した選手は一人もいなかった。

ネイラーの盗塁数増加は、単に盗塁回数を増やした結果ではない。その証拠にシアトル移籍後はネイラーは一度も盗塁を失敗しておらず、その傾向はポストシーズンも続いている。

(ジョシュ・ネイラーはマリナーズとしての61試合で盗塁21回中21回を成功🤯 彼は止められない)

では、何が変わったのか? 少なくともその答えは彼のスピードではない。むしろネイラーの足はMLBで最も遅い部類に入る。

ネイラー自身は失敗を恐れずにリスクを取る姿勢が功を奏していると語る。

「失敗を恐れないことだと思う」とネイラーは8月、『The Athletic』の取材で語った。

「臆せずにチャンスを掴むこと。それが大きい。失敗することを考えないようにしている…ただ野球をプレイするのが好きで、全力でプレイしているだけだ」

ネイラーの一塁からの平均リード距離は、ダイヤモンドバックス時代には3.0フィート(約0.9メートル)だったが、マリナーズ移籍後2週間で4.6フィート(約1.4メートル)に跳ね上がった。米ネット局『NBCスポーツ』が8月に報じたように、チームはネイラーの潜在能力を見抜き、どう活かすかを理解した結果だった。

当初はネイラーが大きなリードを取ったところでピッチャーはあまり注意を払わなかった。盗塁を仕掛けてくる選手とは思っていなかったからだ。では、評判が立った今、投手陣はネイラーに対応できるだろうか? 可能性はあるが、現時点では依然としてネイラーが優位に立っているようだ。

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ネイラーのスピードは?

『Baseball Savant』によれば、ネイラーの2025年のスプリント速度は時速24.4マイル(約39キロ)だった。これはシーズン中に50回以上のスプリント機会があった選手395人中388位という最下層に相当する。

シーズン終盤にMLBで最も効果的な盗塁を見せた選手が、投手を除いた98%よりも足が遅いという事実には驚く他ない。

2025年シーズンのスプリント速度が最も遅かった選手ワースト10(50回以上の機会あり)とその盗塁数は以下の通り。

選手名スプリント速度 (時速/マイル)盗塁数チーム
ジャンカルロ・スタントン23.50ヤンキース
ロウディ・テレス23.51マリナーズ/レンジャーズ
ジオ・アーシェラ24.20アスレティックス
アレハンドロ・カーク24.31ブルージェイズ
ビクター・カラティーニ24.31アストロズ

ホセ・トレビーノ

24.30レッズ
サルバドール・ペレス24.40ロイヤルズ
ジョシュ・ネイラー24.430マリナーズ
ウィルマー・フローレス24.51ジャイアンツ
キーバート・ルイーズ24.50ナショナルズ

この数字を見るとネイラーの異様さが際立ってくる。2025年に定期的に走塁機会を得た足の遅い選手10人中、5人は盗塁を一つも盗塁を成功できず、4人はたった1度しか成功していない。そんな中でただ一人、ジョシュ・ネイラーだけが30盗塁を記録している。

盗塁が以前に比べて容易になったとはいえ、ネイラーはあらゆる常識を覆し、優勝を狙うマリナーズの走塁面でも脅威となっている。

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原文:Josh Naylor sprint speed: How Mariners slow infielder has become serious threat to steal bases
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)

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Dan Treacy

Dan Treacy is a content producer for Sporting News, joining in 2022 after graduating from Boston University. He founded @allsportsnews on Instagram in 2012 and has written for Lineups and Yardbarker.

石山修二 Shuji Ishiyama

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。生まれも育ちも東京。幼い頃、王貞治に魅せられたのがスポーツに興味を持ったきっかけ。大学在学時に交換留学でアメリカ生活を経験し、すっかりフットボールファンに。大学卒業後、アメリカンフットボール専門誌で企画立案・取材・執筆・撮影・編集・広告営業まで多方面に携わり、最終的には副編集長を務めた。98年長野五輪でボランティア参加。以降は、PR会社勤務・フリーランスとして外資系企業を中心に企業や団体のPR活動をサポートする一方で、現職を含めたライティングも継続中。学生時代の運動経験は弓道。現在は趣味のランニングで1シーズンに数度フルマラソンに出場し、サブ4達成。