ラミン・ヤマルが背番号10に変更 バルセロナの新たな象徴へ

Vishal Bhawani

小山亮 Akira Koyama

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マラドーナの魔法のようなプレー、ロナウジーニョのリズミカルなテクニック、そしてリオネル・メッシという史上最高のプレーヤー。FCバルセロナの背番号10は、ただのユニフォーム番号ではない。それは、受け継がれてきた象徴であり、ピッチ上の王座のような存在である。

そして今、その伝説を引き継ごうとしているのがラミン・ヤマルだ。彼はまだ18歳になったばかりだが、この背番号に宿る風格をすでに備えている。果たして、13年間で672ゴールを決めたアルゼンチンの王を超える日が来るのだろうか。その王冠は彼には重すぎるのか。

ラ・マシア出身、10代でトップチームデビュー、19番から10番への変更、左利きのアタッカーといういくつもの共通点が彼らにはある。「メッシにはメッシの道があって、僕には僕の道がある」そう語るヤマルには自信があり、決して驕ってなどいない。信念と謙虚さのバランスこそが彼の最大の強みかもしれない。

バルセロナで背番号10を背負った選手たち

バルサの10番は、長い歴史を持つ特別な番号だ。しかし、いつの時代もスーパースターが着けていたわけではない。ラ・リーガで固定番号制が導入されたのは1995年であり、それ以前の10番は単なるポジション番号に過ぎなかった。だがそれ以降、10番を託されてきた選手たちの顔ぶれは、まさにサッカー界の殿堂入りと言えるような名前が並んでいる。

2003年から2008年の間で観客を魅了してきたロナウジーニョ。あり得ない角度からゴールを決め続けたリバウド。決定力の塊だったロマーリオ。説明不要のマラドーナ。そして10番を”伝説の象徴”に変えてしまったメッシ。

メッシの退団後はアンス・ファティに10番を託されたが、怪我と不調に悩まされ期待に応えることができなかった。

そこに現れたのがラミン・ヤマルである。すでにトップチームで100試合以上に出場し、25ゴールを記録している。18歳という年齢で、これだけの記録を残しているのは驚異的だ。

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ここで、バルセロナの歴史の中で背番号10を背負った選手を振り返る。

選手名在籍期間(10番)出場試合数
ラディスラオ・クバラ1950–1961357
ルイス・スアレス1960/61176
エヴァリスト・デ・マセド1957–1961114
ファン・マヌエル・アセンシ1978/79 396 
ディエゴ・マラドーナ1982–198458
ギャリー・リネカー1986–1989138
ロベルト・フェルナンデス1989/9058
ジョゼップ・グアルディオラ1991/9247(10番を背負った期間)
ギジェルモ・アモール1992/93567 
フリスト・ストイチコフ1993/9448 (10番を背負った期間)
ロマーリオ1993–199584
ゲオルゲ・ハジ1994/9551
ジョルディ・クライフ1994–199654
アンヘル・クエジャル1995/96 15
エマニュエル・アムニケ1996/9724
ジオヴァンニ・シウヴァ1996–1999108
ヤリ・リトマネン1999/0032
リバウド2000–2002235
フアン・ロマン・リケルメ2002/0342
ロナウジーニョ2003–2008207
リオネル・メッシ2008–2021778
アンス・ファティ2021–2023, 2024/25112
ラミン・ヤマル2025/26(予定)106 (2025年7月時点)

※出場試合数は、バルセロナでのキャリア全体の数字を記載している。

ラミン・ヤマルは、メッシの記録を超えられるのか?

バルセロナは、この逸材を手放すつもりはない。ヤマルとは2031年までの長期契約を締結し、年俸は最大で2,000万ユーロとも言われている。さらに、契約解除金も10億ユーロという破格な価格に設定している。

すでに彼は、ラ・リーガ、コパ・デル・レイ、スーペルコパ、そしてスペイン代表としてユーロ制覇も経験済みだ。そして昨シーズンも、18ゴール25アシストという爆発的な数字を記録している。

CL準決勝のインテル戦と、ネーションズリーグ決勝のポルトガル戦ではいずれも敗北を喫してしまったが、その試合後の彼の姿勢は評価されるべきであった。怒ったりふてくされたりせずに、ただ静かに前を見据えていたのだ。

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メッシのような冷静さと、ロナウドのような野心。この組み合わせは非常に危険であり、彼はどちらも備えている。

メディアに誕生日パーティーが取り上げられる騒動もあったが、本人は落ち着いていた。「僕はバルサの選手だ。クラブを離れたら、自分の時間を楽しんでいるだけ」

18歳でこれだけの注目とプレッシャーを受けながら、それに押しつぶされることなく立ち振る舞える選手は、そう多くない。だがヤマルには、厳格な父と、支えてくれる母と祖母という家族がいる。その原点が、彼のスパイクを地面にしっかりと固定してくれているかもしれない。ゴール後に見せる「304」のジェスチャーも、彼が生まれ育った町「ロカフォンダ」を表している。

ヤマルがメッシの記録を超えられるかは正直まだわからない。そもそも、ひとつのクラブで13年間プレーし続けること自体が、現代サッカーでは奇跡に近い。だが、才能・精神力・カリスマ性の、すべてを兼ね備えたヤマルなら、可能なのかもしれない。

彼はまだチャンピオンズリーグも、ワールドカップも手にしていない。それらを本気で欲していることは誰の目にも明らかだ。

そして何より、彼はメッシの幻影を追っているわけではなく、自分自身の物語を築こうとしている。バルセロナの歴史が教えてくれるように、「伝説」とは、足跡をなぞる者ではなく、自ら足跡を刻んだ者のことを言うのだ。

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原文:Can Lamine Yamal break Lionel Messi’s record as Barcelona’s longest-serving No. 10?
翻訳:小山亮(スポーティングニュース日本版)

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Vishal Bhawani

Vishal Bhawani is a sub-editor for the Affiliate Content team and a writer and sub-editor for the Football Wires team at The Sporting News. Based in Indore, India, he holds a Diploma in Operations and Management from Maharashtra University.

Before joining TSN in May 2024, Vishal contributed to Football Express and Six Sports and ran his own blog, Anfield Home, as a passionate Liverpool fan. An avid traveler, he follows multiple sports, including cricket, soccer, and tennis.

小山亮 Akira Koyama

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。埼玉県出身。都内の大学に在学中。15年間にわたりサッカーに打ち込んできたが、プロの試合観戦や分析も趣味。幼少期からJリーグや欧州サッカーを追いかけ、現在は年間20試合以上をスタジアムで観戦している。大学のサークルでは監督を務め、全国2位を経験した。