「リオネル・メッシ自身が選ぶキャリアベストゴールは何か?」そんな疑問を抱いたことはないだろうか。
史上最高のフットボーラーと称されるメッシが、自身の輝かしいキャリアの中で最もお気に入りのゴールを選出した。その選択は、インテル・マイアミCF財団のプロモーション活動の中で明らかになった。
本記事では、メッシ本人が選んだキャリアベストゴールを紹介するとともに、スポーティングニュース編集部の記者5名がそれぞれ選出したベストゴールと比較しながら、その魅力に迫っていく。
記者が選ぶ、メッシの至高のゴール5選
2015年CL準決勝 バイエルン・ミュンヘン戦のゴール
バイエルン戦で決めたゴールは、もはやサッカーという競技を超えて”芸術”と評されるべき領域に達していた。彼のドリブルに対応しきれず、バランスを崩したジェローム・ボアテングが倒れ込む場面は、CL史に深く刻まれる象徴的なシーンとなっている。
このゴールには、メッシの卓越した判断力と即興性が凝縮されており、さらに左足に注目されがちな彼だが、このシーンでは右足でもトップレベルのクオリティを誇ることを証明した。しかも、CLという最高の舞台で、名門バイエルンの守護神マヌエル・ノイアーを相手にこのゴールを決めたのだ。—ジョアン・カスタネイラ記者
2011年CL準決勝 レアル・マドリード戦の2点目
🔥 Magnificent Messi #OnThisDay in 2011 🔥 #UCL | @FCBarcelona pic.twitter.com/QbD1A0cFeS
— UEFA Champions League (@ChampionsLeague) April 27, 2019
2011年4月、わずか17日間の間に3つの大会をまたいで4試合が行われた”クラシコ・ワールドシリーズ”が繰り広げられた。ペップ・グアルディオラ率いるバルセロナとジョゼ・モウリーニョ率いるレアル・マドリードのライバル関係は、かつてないほどの激しい敵対心に包まれており、前者がリーグ戦を、後者がコパ・デル・レイ決勝を制し、国内の主要タイトルを分け合う形となっていた。
しかし、このシリーズのハイライトは間違いなくチャンピオンズリーグ準決勝であり、その試合で素晴らしいゴールが生まれた。メッシはセンターライン付近からセルヒオ・ブスケツへパスを出した後、彼の軽いボールタッチを受け取りに走る。その絶妙なアシストに応えるように、「ここは俺に任せろ」と言わんばかりにボールを受け取った。
彼はまず、ラサナ・ディアラを置き去りにし、セルヒオ・ラモス、ラウール・アルビオル、マルセロを次々と抜き去った。そして倒れこみながらも、利き足でない右足でイケル・カシージャスのゴールを射抜いた。対戦相手や状況、そして厳しいマークを受け続けた中でのこのゴールは、まさに純粋な天才の輝きと言えるだろう。—ジョー・ライト記者
2007年コパ・デル・レイ準決勝 ヘタフェ戦のゴール
#OnThisDay | April 18, 2007
— FC Barcelona (@FCBarcelona) April 18, 2020
In the first leg of the Copa del Rey semifinals, the 19-year-old future goat Leo #Messi takes the ball in Barça's half and blows past Getafe to score one of the most astounding goals ever witnessed. 😳🤯 pic.twitter.com/GmG9mjF1pk
19歳のメッシが決めたあのゴールは、彼のキャリアの中でもなお、頂点に位置すると言っても過言ではない。すべてはこの瞬間から始まり、彼は別格の存在として君臨していくことになる。
メッシが持ち合わせていた数々の世界最高レベルのスキルの中で、最初に際立ったのは、代名詞ともいえるドリブルだった。バルセロナの若きスターは自陣でボールを受け取ると、キーパーを含む5人を抜き去る。角度のない位置から放たれたボールは、戻ってきた守備選手の頭上を越えてネットを揺らした。
相手の動きを事前に読み切るようなその一連のプレーは、まさに彼にしかできない芸当だろう。―カイル・ボン記者
2015年コパ・デル・レイ決勝 アスレティック・クラブ戦のゴール
メッシのベストゴールを選ぶなら、2007年のヘタフェ戦、2011年のレアル・マドリード戦、2022年W杯のメキシコ戦も捨てがたい。いずれも難易度やシチュエーションが申し分ないからだ。だが、それらを差し置いて、2015年のコパ・デル・レイ決勝のアスレティック・クラブ戦のゴールこそ、完璧な”ゴラッソ”であり、かつ重要な一撃として際立っていると考える。
中盤付近でボールを受けたメッシは、目も眩むような技術で4人のディフェンダーをかわし、完璧なシュートを突き刺した。この貴重な先制点は、スアレスやネイマールとともにMSNトリオを形成し、バルセロナのシーズン3冠をけん引したメッシの活躍を象徴する一幕となった。— オーガスティン・アボイ記者
2022年FIFAワールドカップ決勝 フランス戦の2点目
🇦🇷 Messi's goals for Argentina: No.98
— FIFA World Cup (@FIFAWorldCup) March 29, 2023
Scoring a double on the biggest stage of them all... 🏆 pic.twitter.com/2i95v3mDuA
利き足ではない足でキーパーのセーブ後に押し込み、ディフェンダーにギリギリ阻まれそうになり、さらにVARの判定見直しまであった変則的なシュートが、メッシのベストゴールになり得るのか?5人、6人、7人も抜き去った華麗なドリブルや、伝説級の強烈シュートがたくさんあるのに?答えは「イエス」だ。理由は簡単で、史上最高のW杯決勝で生まれたゴールだからである。
2022年カタールW杯決勝の延長後半、フランス戦でメッシが決めた2点目は、その重要性も含めて間違いなく彼の最高傑作にちがいない。たとえキリアン・エムバペがその後チームをPK戦に持ち込み、勝利に望みをつないだとしても、このゴールこそが私が選ぶ最高の瞬間だ。— マウリシオ・コドセア記者
メッシ自身が選ぶキャリア最高のゴールとは?
これまで5人の記者がメッシの名ゴールを紹介してきたが、本人が最も気に入っているゴールは一体どれなのか?
2025年5月22日、インテル・マイアミCF財団のイベントにおいて、メッシが挙げた自身のベストゴールはこれだ。
The Goal of Rome. A masterpiece from an unparalleled career by Leo Messi. Now, @refikanadol will turn it into one of the most iconic pieces in the history of art. All to support the IMCF Foundation and its charitable causes.
— Inter Miami CF (@InterMiamiCF) May 22, 2025
El Gol de Roma. Una obra maestra de una carrera… pic.twitter.com/uRJxB3YRUh
「ローマのゴール」と呼ばれるこの一撃は、メッシの比類なきキャリアの中でも傑作中の傑作といえる。今回、このゴールは現代アーティストのレフィク・アナドルによってアート作品として再構築される。すべてはインテル・マイアミCF財団とその慈善活動を支援するためだ。
2009年CL決勝、マンチェスター・ユナイテッドを相手に、バルセロナが1-0でリードして迎えた場面で、シャビのクロスにメッシが頭で合わせた。体を反らせながら放たれたヘディングは、守護神ファン・デル・サールの頭上を抜け、ゴールの右隅に突き刺さった。空中戦を得意としないメッシにとっては異色ともいえるこのゴールだが、だからこそ彼自身がこの得点に感銘を受けたのかもしれない。
「決まった瞬間の意味合い、何を成し遂げたか、忘れられない1年を締めくくったこと。自分にとって最も意味のあるゴールは、あのマンチェスターとの決勝で決めたヘディングゴールだ」とメッシは語った。
このゴールを題材にしたアート作品は、6月11日に公開予定である。
原文:What is Lionel Messi’s best goal? Selecting his top stunners from Barcelona, Argentina, others
翻訳:小山亮(スポーティングニュース日本版)