■今年は1年を通じて低迷が続く
2024年の大相撲で、一年最後の九州場所を制したのは大関・琴櫻だった。同場所では14日終了時点で、大関・豊昇龍(現横綱)とともに1敗をキープ。千秋楽ではその豊昇龍を下して自身初優勝を果たした。
当時の活躍ぶりを考えると、2025年は琴櫻にとっては想定外の一年だったといえる。綱取りをかけ臨んだ初場所は、5勝10敗と負け越しまさかのカド番に転落。続く春場所で8勝を挙げ辛くも脱出に成功したが、翌夏場所~九州場所も8勝、8勝、9勝、8勝と低空飛行だった。
ただでさえ調子が上がらない中、秋場所では右膝内側側副靱帯損傷を負うというアクシデントにも見舞われた琴櫻。一見すると、来年の見通しも厳しそうに思えるが、九州場所では目立たないながら確かな上がり目もあった。
■優勝場所で見せた勢いが戻ってきた?
九州場所の琴櫻は初日こそ白星を挙げたものの、翌2日目から7日目は1勝5敗と大きく黒星が先行。場所がまだ折り返し付近の中、勝ち越しには残り2敗しか許されないという状況に陥った。
ただ、8日目に勝利して連敗を3で止めると、そこから12日目まで怒涛の5連勝をマーク。最後の3日間は1勝2敗と息切れ気味になったものの、結果的には勝ち越しまで持っていくことに成功している。
琴櫻が5連勝を記録したのは、破竹の12連勝で一気に賜杯を掴んだ昨年九州場所以来1年ぶり。また、5連勝の間には小結・隆の勝、関脇・王鵬、幕内・義ノ富士と実力者を下した上、勝ち越しをかけた14日目は、横綱・大の里からこちらも1年ぶりとなる白星を挙げている。大の里は前日の関脇・安青錦(現大関)戦で左肩を負傷しており手負いの状態だったが、それでも一定の自信につながったことは確かだろう。
琴櫻は前出の右膝故障について、再生医療を受けるなどして出場にこぎ着けたと場所前に伝えられていた。その右膝の動きが場所を追うごとに、自身のイメージと合致してきた結果復調できたという見方もできそうだ。
■課題を克服し復調なるか
角界では現在冬巡業(11月30日~12月21日)が行われているが、九州場所のダメージが大きかったのか故障休場している力士も複数いる。一方、琴櫻は16日終了時点では巡業に帯同し続けているため、右膝の状態はある程度良好だと推測される。
ただ、故障と付き合いつつ復調を目指していく上では日々の稽古に加え、取り口を工夫していくことも必要だろう。琴櫻は以前から、相手を組み止めたところからの攻めが遅いことが課題とされている。取組時間が長ければ、その分患部にかかる負担も増すことになるため、立ち合いから前に出て積極的に攻勢を仕掛けていきたいところだ。
来年初場所は安青錦が大関に昇進し、2横綱2大関体制となる。今年は豊昇龍、安青錦が1回、大の里は3回優勝を果たした傍ら、琴櫻は終始優勝争いとは無縁だったが、来年は今年のうっぷんを大いに晴らすような1年にしてくれることを期待したいところだ。
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