「『はい、わかりました』とはならない」大相撲、人気親方の電撃退職にファン失望 協会に制度改革を訴える声も

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■ファン人気の高い親方が突然の退職

日本相撲協会は27日、大相撲九州場所(11月9日初日、福岡国際センター)の新番付を発表した。各力士の番付変動に注目が集まる裏で、同日に発表された北陣親方(元幕内・天鎧鵬)の退職がファンの間で波紋を広げている。

現在41歳の北陣親方は初土俵を踏んだ2007年1月場所から2019年3月場所まで現役生活を送った後、年寄「秀ノ山」を襲名し親方に転身。その後、「音羽山」、「佐ノ山」、「北陣」と名跡を変更しながら親方業を続けていた。明るいキャラクターと軽妙な語り口で、相撲協会公式YouTubeチャンネルの一つ『親方ちゃんねる』では中心的存在として人気を博していたが、2025年10月26日付で同協会を退職したことが突然発表された。

相撲協会は公式Xでも「北陣親方(元幕内 天鎧鵬)が10月26日付で退職いたしました。 平成19年1月場所の初土俵から約19年間、たくさんの応援を誠にありがとうございました」と退職の旨をポストしているが、リプライ欄には「相撲協会にとって大きな損失だと思います」、「若手親方がこういう形で協会から去るのはもったいない」、「いきなり退職を知らされても『はい、わかりました』とはならないですよ」といった失望の声も少なからず見受けられる。

■遠藤の引退で押し出される形に…

大相撲の力士が引退後も親方として協会に残るためには、105ある年寄名跡(年寄株)のいずれかを取得する必要がある。一般的な取得条件としては「最高位が小結以上」、「幕内在位通算20場所以上」、「関取在位が通算30場所以上」、「関取在位が通算28場所以上で、年寄株の前保有者と師匠、保証人となる親方の願書を持って、理事会でその是非を判断し認められた者」の4パターンがあり、今回退職した北陣親方は4つ目のパターンで年寄株取得が認められている。

協会では2014年11月から導入された再雇用制度(65歳の定年を迎えた親方が最長で5年間、年寄株を保有したまま参与の立場で協会に残ることができる制度)により、年寄株にほとんど空きが無い状況が慢性化している。そのため、昨今は現役力士が取得している年寄株を引退力士が一時的に借り受ける形で親方になるケースも多いが、借株親方は貸主が引退するまでの間に別の年寄株を確保できないと協会を追われることになる。

「北陣」の貸主は元小結で現東幕下3枚目の遠藤だが、近く現役引退を発表すること、引退後は「北陣」を襲名して親方に転身することなどが27日に報じられている。これに伴い、北陣親方は退職に至ったものと思われる。

■協会は制度改革を検討すべき?

制度に則っただけと言われればそれまでだが、今回の北陣親方を含め、働き盛りの親方が志半ばで協会を去らざるを得ない現状が続いていることを多くの相撲ファンが嘆いている。また、一部からは制度改革を訴える声も挙がっている。

改革案の一例としては、再雇用制度を利用した親方に年寄株を返納させるという案がある。再雇用されると部屋持ち親方や協会理事などにはなれなくなり、定年前からは一歩引いた形で各業務にあたることになるが、こうした立場の親方が年寄株を所持し続ける必要性については疑問もある。そのため、再雇用の場合は年寄株を返納し、現役時代の四股名を名乗るようにすれば状況がマシになる可能性は決してゼロではないだろう。

また、そもそも再雇用制度自体が不要であり即刻廃止すべきという厳しい意見も散見されるが、相撲協会が今後何かしらの手を打つことは果たしてあるのだろうか。

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Editorial Team