悲願の初優勝も再び“エレベーター力士”へ… 幕内・琴勝峰、「三役、そしてその先」へ勢い取り戻せるか

柴田雅人 Masato Shibata

悲願の初優勝も再び“エレベーター力士”へ… 幕内・琴勝峰、「三役、そしてその先」へ勢い取り戻せるか  image

Jiji Press

■悲願の初優勝果たすも勢い続かず…

11月に行われた大相撲九州場所では、関脇・安青錦(場所後に大関へ昇進)が12勝3敗で自身初優勝を果たした。同場所を含め、今年は6場所中5場所で三役以上の力士が賜杯を手にしたが、唯一平幕優勝を成し遂げたのが幕内・琴勝峰だった。

現在26歳の琴勝峰は、初土俵を踏んだ2017年九州場所当時から将来を期待されるも、度重なる怪我などもあり幕内上位~下位を行ったり来たりしていた力士。今年も初場所から5勝、8勝と今一つだった上、夏場所では直前に「右大腿二頭筋肉離れ」を負うアクシデントに見舞われ6勝にとどまった。

そんな中、東前頭15枚目で臨んだ名古屋場所は序盤5日間は3勝2敗だったが、6日目から千秋楽まで破竹の10連勝をマーク。優勝争いのライバルだった横綱・大の里、当時幕内だった安青錦との直接対決も制し、13勝2敗で悲願の初優勝を果たした。

ただ、遂に才能が開花したかと多くのファンが期待した中、次の秋場所では東前頭5枚目で3勝12敗と大敗。西前頭10枚目に下がった九州場所も7勝8敗と勝ち越せず、“エレベーター力士”へ逆戻りしつつある。

■師匠の助言の効果が薄れている?

優勝当時の報道によると、名古屋場所前にも右太ももの肉離れを起こした琴勝峰に対し、師匠の佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は前に出る相撲を徹底するよう指導。これが初優勝の一要因になったとされている。実際、同場所では立ち合いから鋭く踏み込む相撲が多く、優勝を決めた千秋楽・安青錦戦も一気に相手を押し込んだところから突き落としを決めている。

一方、優勝後の2場所では、その積極性が失われているような印象を受ける。勝ち越しをかけた九州場所千秋楽・千代翔馬戦でも、立ち遅れてうまく押し込めないところから左上手をとられ、最後は上手投げでひっくり返された。

師匠が前に出る相撲を説いたのは攻撃面はもちろん、受け身の相撲だと身体への負担が大きいという守備面のことも考えてのことだとされている。この教えをどこまで徹底できるかが、来年の復調を左右することになるのではないか。

■弟への対抗心も原動力にできるか

佐渡ヶ嶽部屋は2024年九州場所、琴勝峰の弟である琴栄峰が新十両へ昇進した。同場所は7勝にとどまったが、今年は年6場所中4場所(初、夏、秋、九州)で勝ち越し。名古屋場所では新入幕も果たすなど、大きく飛躍を果たした一年となった。

来年もこの勢いが続くと仮定すると、どこかのタイミングで琴栄峰が琴勝峰を追い抜かすという展開も十分予想される。ただ、これまで常に弟をリードしてきた兄としては、そう簡単に抜かれたくないという思いはあるはず。来年はこうしたプライドや対抗心も相撲の原動力にしたいところだ。

琴勝峰は名古屋場所千秋楽で行われた優勝力士インタビューの中で、「上に上に。とりあえず三役、そしてその先も見据えてやっていきたいです」と今後の目標を口にした。2025年は失速して終わったが、2026年は目標を実現するような活躍を見せられるだろうか。

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