大相撲秋場所は16日、3日目の取組が行われた。各段で熱戦が繰り広げられたが、東前頭3枚目・熱海富士対西関脇・霧島の一番で、一部観客による残念なマナー違反が発生した。
熱海富士は1勝1敗、霧島は2勝0敗で迎えたこの一番。行司が「待ったなし!」と声を発し軍配を返した後、足元をならす熱海富士を見ながら霧島が先にゆっくりと腰を下ろし、後を追うように熱海富士も腰を下ろす。立ち合いへ向け両力士が集中力を研ぎ澄ます中、ここで客席から突然「熱海富士ー!」とがなり立てるような大声が挙がる。また、これにつられたのか直後には「フォー!」というような甲高い叫び声も響いた。
この後、腰を下ろした両者はお互いに手をつかないまま、熱海富士がその場に立ち上がったことで仕切り直しに。2度目の立ち合いは熱海富士が先に手をつき、霧島がこれに合わせる形で成立したが、わずかに立ち遅れた熱海富士は巻き替えからもろ差しを許すとそのまま寄り切られた。
行司が軍配を返し、両力士が呼吸を合わせて立ち合いを行おうとしているタイミングで観客が大声を発することは、力士の思考や集中力を削ぎかねない行為だ。今回の一件がどこまで立ち合いに影響したかは定かではないが、熱海富士が1度目を不成立にしたこと、2度目で立ち遅れたことを踏まえると、何らかの影響があった可能性は決してゼロではないだろう。
また、大相撲観戦時のマナーや禁止行為について定める『相撲競技観戦契約約款』では「相撲場内外でみだりに気勢を上げ騒音を出す行為」、「相撲競技の円滑な進行または他の観客の観戦を妨げまたは妨げる虞のある行為」などは禁止行為と定められており、主催者である日本相撲協会の判断次第では退場処分を受ける可能性もある。自身はもちろん、他の観客の本場所観戦を台無しにしないためにも、現地で観戦するファンには節度ある行動が求められている。
本場所では以前から、立ち合い直前のタイミングで客席から大声や指笛が響くことがしばしば問題となっている。おそらくは恣意的なものではなく、力士を応援したい気持ちが行き過ぎてしまったものと思われるが、4日目以降は同じような状況が発生しないことを期待したいところだ。
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