■海外興行は2013年以来12年ぶり
大相撲は日本時間10月16日(現地時間15日)から5日間、イギリス・ロンドンにあるロイヤル・アルバート・ホールで海外公演を開催する。既に参加力士たちは現地入りしており、日本相撲協会の公式Xには観光や買い物を楽しむ力士たちの写真も複数ポストされている。
相撲の海外興行には勧進元が主催する「巡業」と、相手国から招待を受け相撲協会が主催する「公演」の2種類があるが、海外公演は2005年のアメリカ・ラスベガス公演以来20年ぶりで、ロンドンでの開催となると1991年以来34年ぶりとなる。また、海外巡業も2013年8月のインドネシア・ジャカルタ巡業を最後に行われていないため、ほとんどの力士は今回が初めての海外興行になっている。
今回の公演には右膝の怪我を抱える大関・琴櫻など一部を除き、ほとんどの幕内力士が参加している。加えて、普段から彼らの身の回りの世話をしている付け人も一部帯同しているが、日本に帰国するまでの間はかなり目まぐるしい時間を過ごすことになるかもしれない。
■角界OBは付け人が一番大変と断言
13年前のジャカルタ巡業に参加した経験を持つ元小結の臥牙丸氏は10月9日、自身の公式YouTubeチャンネルに『【海外ハプニング】大相撲ロンドン公演直前!海外巡業トーク/食文化の違いでトラブル続出!?/深夜にバレて怒られる』というタイトルの動画を投稿。ジャカルタ巡業で見聞きしたトラブルや、海外興行ならではの事情などを語っている。
その中で、臥牙丸氏は「(海外興行で)一番大変になるのは付け人。付け人がなんで大変って言ったら、お相撲さんは(普段付け人が)幕内で3人、大関には5人、横綱には10人(つく)。だけど、巡業では3人の関取に1人の付け人です」と言及。普段は複数の付け人で関取に対応するところが、海外興行では1人で複数の関取に対応しないといけないため忙しさが段違いだという。
また、「明け荷は色んなもの入れて巡業に持っていけるんですけど、海外巡業は3人で1人(分)の明け荷を使わないといけない。実際、(全員分の荷物は)入るは入るんですけど、小さいタオルとかテーピングとかそういうのは使えない(入れられない)。そういう付け人の大変さもあるんです」と、化粧まわしをはじめとした荷物の管理も普段よりは難しくなると語っている。
■大変さも一生ものの経験に?
各報道によると、今回のロンドン公演の参加者は約120人だというが、付け人が何人帯同しているのかについては詳しく報じられていない。ただ、ロンドンは世界的に見ても物価が高い都市とされていることに加え、今は円安でさらに費用がかさむことを考えると、おそらくは少数精鋭の体制が組まれているものと思われる。となると、臥牙丸氏が言及したような気苦労が絶えない日々がしばらく続くことになるだろう。
ただ、異国の地で行われる興行の雰囲気を肌で感じられることは、普段の雑務や稽古とは一味違った貴重な経験になることもまた確かだろう。相撲協会は今回のロンドンに加え、来年6月にはフランス・パリでも公演を行う予定となっているが、両公演後も定期的に海外興行が行われるのかについては定かではない。場合によっては、現役生活最初で最後の機会になる可能性も決してゼロではないといえる。
チケットがほぼ完売するなど、現地では大きな注目を集めているというロンドン公演。参加する力士たちはもちろん、付け人たちにとっても実りある時間になることを願いたいところだ。
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