キャリアの岐路に立たされる可能性も!? 厄介な故障抱える“元大関候補”若隆景の今後は

柴田雅人 Masato Shibata

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Jiji Press

■大関とり挑戦から一転…

11月に行われた大相撲九州場所では、12勝3敗で自身初優勝を果たした関脇・安青錦の大関昇進が話題となった。その安青錦の前に大関とりに挑んだのが、幕内・若隆景だった。

若隆景は小結で臨んだ今年夏場所で12勝、続く名古屋場所は関脇で10勝をマーク。「三役で直近3場所33勝以上」という昇進目安クリアが射程に入ったため、秋場所は大関とりの場所と位置付けられた。

大関昇進は勝ち星だけでなく相撲内容も重視されるが、若隆景は秋場所前時点で三役在位12場所、優勝1回(2022年春場所、12勝3敗)と一定の実績を残していた。加えて、当時は琴櫻しか大関がいなかったこともあり、秋場所は2ケタクリアなら大関に上がれるとの見方も強かった。

しかし、迎えた同場所は11日目までに6敗を喫して早々に2ケタの可能性が消滅すると、その後も調子上がらず6勝9敗で負け越し。大関はおろか三役の座も失った九州場所でも7勝8敗の負け越しと、精彩を欠いたまま2025年を終える結果となった。

■冬巡業まで故障の影響続く

調子がガタ落ちした主要因は、秋場所4日目の小結・高安戦で負ったと伝えられている首の故障だ。同日終了時点では2勝2敗と五分だったが、5日目以降は4勝7敗と大きく黒星が先行している。

また、九州場所前には痛みが再発して稽古が十分に積めていないことが伝えられていた上、同場所後から行われている冬巡業も「頸椎捻挫」を理由に初日から休場している。それだけ状態が悪いのか、それとも大事をとってのことなのかは定かではないが、いずれにせよ厄介な故障になっていることは確かだろう。

若隆景は身長183センチ、体重137キロと幕内では小柄な部類だが、低く鋭い立ち合いや強烈な左おっつけを武器にここまで出世してきた。大柄な力士を相手に戦い続ける中で、首にかなりのダメージが蓄積されていたという面もあるのかもしれない。

■故障悪化なら最悪のシナリオも

身体を勢いよくぶつけ合って勝敗を争うという競技の性質上、ほとんどの力士は身体のどこかに大なり小なり故障を抱えているとされている。首の怪我も“職業病”の一つではあるが、多くの神経が通るデリケートな箇所ということもあり、悪化した場合はキャリアに関わるような深刻な事態になるリスクも高い。

直近では2024年に大関・貴景勝が、頸椎症性神経根症により初場所、頸椎神経根症により春場所、頸椎椎間板ヘルニアにより夏場所をそれぞれ途中休場。さらに、大関から陥落して迎えた秋場所も頸椎椎間板ヘルニアで途中休場すると、そのまま現役引退に至っている。

状態を悪化させずに改善していくため、若隆景はこれからも日々患部のケアに腐心する必要があるといえる。とはいえ、あまりに慎重になり過ぎると、九州場所前のように稽古量が不足してしまう可能性もあるだろう。稽古とケアのバランスをどうとっていくかも、今後のキャリアを左右することになりそうだ。

万全の状態なら、再び大関とりに挑むことができる力量はある若隆景。来年はたとえ少しずつでも、本来の調子を取り戻していけることを祈るばかりだ。

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Editorial Team