世界ラリーレイド選手権(W2RC)2026年シーズンは1月3日から17日までサウジアラビアで開催される伝説のダカール・ラリーを皮切りに、各自動車メーカーの威信をかけた砂漠の大戦争が幕を開けた。
トヨタ駆る地元ヤジード・アルラジ、連覇なるか
2025年のダカール・ラリーは、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のヘンク・ラテガンと、Overdrive Racingのヤジード・アルラジによるトヨタ勢同士の一騎打ちとなり、サウジアラビア出身のアルラジが悲願の母国ラリー初制覇を果たした。
この勝利により、トヨタ勢は2年ぶり4回目のダカール四輪総合優勝を達成(2019、22、23、25年)。「砂漠の王」の異名を取るナッサー・アルアティヤ以外のトヨタ・ドライバーとして、アルラジは初めてその名を歴史に刻んだ。
2026年W2RC初戦、戦況はさらに激化。トヨタ、フォード、ダチア、ディフェンダー、Can-Amという5大メーカーが激突となった。1979年の創設以来、ドライバーと車両を限界まで追い込んできたダカール・ラリーは、かつて三菱パジェロを駆る篠塚建次郎さん、増岡浩さんという日本人王者を輩出し、「ラリーの三菱」の黄金時代を築いた舞台でもある。 トヨタ勢は、この過酷な舞台で過去4度の優勝を誇る最有力候補であり、今回も最強の布陣と最新兵器をサウジアラビアに送り込んだ。

Toyota Gazoo Racing
最大の注目点は、世界選手権デビューを果たす新型マシン「DKR GRハイラックス」だ。 25年に発売された第9世代ハイラックスの力強い外観を受け継ぐこのマシンは、中身も劇的な進化を遂げている。新設計のチューブラーシャシーにより、ねじり剛性の向上と大幅な軽量化を実現。さらに、より高強度の新型トランスミッションを搭載し、ダカールの過酷な砂漠に相対する。
この新型マシンを駆るのは、TGRが誇る強力な3組のペアだ。
ラテガンはFIA世界ラリーレイド選手権(W2RC)で初優勝を果たし、2025年シーズンランキング3位に浮上した実力派。昨シーズンの経験を武器に、今大会では明確に「優勝」をターゲットに据える。ラテガンは「TGR W2RCチーム全員による多大な準備を経て、ダカールラリーの開幕を心待ちにしています。ブレットと私は、W2RCで1シーズンを過ごしたことで、より万全な準備を整えてこのイベントに臨みます。今はこれまでの努力が報われるかどうか、ただただ楽しみにしています」と自信をのぞかせた。
若き才能セス・キンテロは、2025年のダカールで初のW2RC表彰台とトップ10入りを果たした。バハ・ドバイでのテスト走行でも新型車の速さを証明しており、今大会のダークホースとなる。キンテロは「自信とモチベーションに満ち溢れ、レースへの準備は万端。新型DKR GRハイラックスのハンドルを握り、新たな可能性を探るのが本当に楽しみです。テストでその速さを既に実感しており、自信が湧いてきます」とさらに自信満々だ。

Toyota Gazoo Racing
二輪部門で2度のダカール制覇を誇るレジェンド、トビー・プライスが、ついにTGRのファクトリードライバーとしてステアリングを握る。2025年にプライベーターとして4輪転向を果たしたばかりだが、その適応能力は未知数にして無限大だ。プライスは「ダカール2026が待ち遠しいです。アルマンとの相性も抜群です。メカニックや舞台裏で働く全員が、新しいマシンの準備に懸命に取り組んでくれました。あとは私たちに任せれば、というところです」と四輪での制覇を虎視眈々と狙う。
前回王者アルラジ、「国、チーム、自分を誇りに思う」

ディフェンディングチャンピオンとして臨むアルラジは、今回もOverdrive Racingから出走する。「もちろん、ダカールで優勝することは夢でした。誰もがダカール制覇を夢見るものです。私は世界中の何百万人もの人々が抱く夢を実現したのです。もちろん、自分自身を誇りに思いますし、自分の国、チーム、そしてコドライバーのことを誇りに思っています」 彼は王者としての自信を覗かせつつも、連覇への道のりが険しいことを熟知している。 「勝因の第一は最高のマシン、第二に最高のチームとコドライバー、そしてもちろん(笑)最高のドライバーがいたことです。しかし、ダカールでは何が起こるか分かりません。勝負は最終日まで誰にも分からないのです。毎年、必ず驚きが待っています。速いドライバーが大勢いますし、世界最高のドライバーたちが集まっています。毎日が異なる戦いなのです」と気を引き締めた。
トヨタの行く手を阻むライバルたちは強力だ。ダチアは、元トヨタのエースであるアルアティヤと、無冠の帝王セバスチャン・ローブという最強の二人を乗せて参戦。世界ラリー選手権9連覇の王者ローブにとって、ダカール制覇は成し遂げたい悲願だろう。フォードは、24年の覇者であるカルロス・サインツを獲得し、新型ラプターで王座奪還を期す。さらに耐久王ロマン・デュマもフォード陣営に加わった。

注目カテゴリー:Stock、Challenger、SSV
- Stock(市販車クラス): 新設されたこのカテゴリーには、「ミスター・ダカール」ことステファン・ペテランセルがディフェンダーで参戦。対するは、ダカール市販車部門の絶対王者、チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)。三浦昂らを擁するTLCとペテランセルの対決は、今大会の隠れたメインイベントと言える。
- Challenger / SSV: Taurusが支配するChallengerクラスには、2輪王者ケビン・ベナビデスが転向。SSVクラスにはCan-Amがマニュファクチャラーとして正式参戦し、戦いはより高度化している。
過酷を極めるルートとマラソンステージ
2026年のルートは、紅海沿岸のヤンブーをスタート・ゴールとするループコース。総距離約8,000kmのうち、競技区間(スペシャルステージ)は約5,000km。急勾配の砂丘、狭い岩場、険しい山道が選手たちを待ち受ける。ルートは古代オアシス都市アル・ウラ、首都リヤド、ワディ・アド・ダワシル、そしてビシャの砂丘群を経て、アル・ヘナキヤの川床を通過し、再びヤンブーへと戻る壮大な旅路だ。
特筆すべきは、2回設定された「マラソンステージ」(1月7日~8日、1月13日~14日)。この期間、参加者は外部からの援助(メカニックのサポート)を一切受けられず、マシンの修復はクルー自身で行わなければならない。夜は車両横のテントで寝泊まりし、食事はレーションパック(戦闘糧食)のみ。まさにサバイバル能力が問われる2日間となる。休息日は1月10日のリヤドのみだ。

ASO
「砂漠は拡大し続ける」。 本大会のスローガン通り、技術、体力、精神力のすべてが試される果てしない戦いが、ヤンブーで幕を開けた。新型ハイラックスを駆るトヨタは、地元英雄アルラジと共に王座を守れるのか。それとも、24年王者サインツ率いるフォードや、アルアティヤのダチアが新たな歴史を作るのか。世界中のモータースポーツファンが、砂漠での長い戦いのフィニッシュを見守る。
2026年シーズンカレンダー
2026年FIA世界ラリーレイド選手権(W2RC)はダカール・ラリーで開幕。シーズンはこの後、ポルトガル(3月)、アルゼンチン(5月)、モロッコ(9月)、そして最終戦アブダビ(11月)へと続く。