上野由岐子、山田恵里ら金メダリスト2人と若手が融合した女子ソフトボール日本代表

Shoichi Sato

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8月2日から始まる第16回世界女子ソフトボール選手権大会2018千葉。日本代表に選ばれた選手17人は、すべて日本女子ソフトボール1部リーグに所属するチームに在籍している。現在、世界ランキング2位の日本が開催しているリーグのレベルは、世界トップクラスだ。日本女子ソフトボール1部リーグは、全10節中、第5節までの試合を終え、現在はサマーブレイク中。リーグ前半の成績なども含め、今大会の日本代表の注目選手を紹介しよう。

投手は盤石3本柱と初選出の“上野の後継者”

今年の世界女子ソフトボール選手権大会で、投手は4人体制となっている。絶対的エース上野由岐子投手を筆頭に、次世代エースと呼ばれる濱村ゆかり投手と藤田倭(やまと)投手が選出されている。この国際大会の経験豊富な3本柱が日本代表の軸だ。

ビックカメラ高崎に所属する上野投手は、リーグ前半も安定したピッチングを披露した。8試合を投げて6勝2敗、防御率1.14、奪三振54の成績を残している。かつて国際大会世界最速の121km/hを記録した上野投手も、今年で36歳。先日行われた壮行会では、「三振を取れなくても試合に勝てるピッチング、ランナーを背負ってもゼロに抑えるピッチングを見てもらいたい。経験を生かした駆け引きで抑える」と話していた。

次世代の日本代表を牽引するといわれる、上野投手と同じくビックカメラ高崎に所属する濱村投手も、力で押すスタイルだ。昨年のリーグ戦成績は7勝1敗、防御率0.94。試合を作る安定感が魅力の快速右腕の持ち主である。

藤田投手は豪快なピッチングが持ち味。打撃も良く、所属する太陽誘電では4番ピッチャーという二刀流で活躍する。リーグ前半は調子が上がらず2勝5敗、防御率2.49。被本塁打7というのが気になるところだが奮起に期待したい。

上記の3本柱に加え、日本代表には期待の星も選ばれた。4人目の18歳、勝俣美咲投手だ。多治見西高校を卒業し、今シーズンからビックカメラ高崎でプレーしている。世界女子ソフトボール選手権には初選出された。“上野2世”の呼び声が高いだけに、今大会で日本代表の救世主となるかもしれない。


捕手はビックカメラ高崎の2人

日本代表の正捕手は、上野、濱村投手らの球を最も受けてきた我妻悠香選手(ビックカメラ高崎)だ。リーグ前半も全試合でマスクをかぶるなど、上野と濱村からの信頼度は抜群だ。また、勝俣投手と同じく18歳の山内早織選手(ビックカメラ高崎)も選ばれている。世界最高峰のレベルを体感し、打てる捕手として成長してもらいたいという期待値からの選手だろう。

内野陣は前半4割超えなど好打者が揃う

内野陣のキーマンは代表では4番サードの山本優選手(ビックカメラ高崎)である。前回大会でも頼りになる存在だった山本選手のリーグ前半成績は打率.382、本塁打3本、10打点と申し分ない。また、内野陣で一番若手のデンソーの川畑瞳選手(セカンド)も打撃が好調だ。今季のリーグ前半の打率はなんと.429。そして、2017 年に初めて代表入りした内藤実穂選手(ファースト)は打率.346。3本の本塁打に加えバントも5つ決めるなど、小技もできる。

前回大会でバットから快音が鳴り響いたショート・渥美万奈選手(トヨタ自動車)、セカンド・市口侑果選手(ビックカメラ高崎)、そして中軸での起用が多いファースト・洲鎌夏子選手(豊田自動織機)も日本代表に選出された。渥美、市口両選手は前回大会で2本の本塁打を放っている。洲鎌選手は1本塁打に二塁打2本、三塁打1本と長打が魅力だ。

ベテランと中堅のバランスが取れた外野陣

外野は“女イチロー”の異名をとる1番センター・山田恵里選手が光る。前回大会で見せた勝負強さはもちろん健在だ。所属する日立では、今シーズンも打率.375の成績で折り返した。2004年のアテネオリンピックからソフトボールの主要大会で日本代表としてプレーしている経験豊富の選手なだけに、今大会での活躍も期待される。

山田選手に次ぐ経験の豊かさで外野陣をまとめるのは太陽誘電の河野美里選手(ライト)だ。リーグ戦、国際大会ともに常に安定した成績を残している。リーグ前半の成績は打率.324。失策0という高い守備力がチームを救ったように、今大会でも日本代表のピンチを救うキーパーソンになりそうだ。

前半首位ターンとなったトヨタ自動車を引っ張る2選手。長崎望未選手(ライト)と山崎早紀選手(レフト)も存在感がある。長崎選手は.394の高打率をキープ。また、出塁率は.487と選球眼も良い。得意の打撃を活かして、今年の日米対抗野球では第一試合でDPを務めた。山崎選手も.351の打率を残している。更に4本塁打、12打点はいずれもリーグトップの成績だ。

外野陣で初選出となったのはビックカメラ高崎の大工谷真波選手(レフト)だ。昨年はリーグ戦で打率.357をマークし、今年の開幕戦でも本塁打と二塁打を放つ活躍を見せた。その後、徐々に打率を落としているが、初代表を派手に飾りたいところだ。

日米対抗ソフトボール2018スターティングラインアップ

 第1戦 6/20(水)第2戦 6/21(木)第3戦 6/23(土)
 1(中)山田恵里1(中)山田恵里1(中)山田恵里
 2(右)河野美里2(右)河野美里2(右)河野美里
 3(左)山崎早紀3(左)山崎早紀3(左)山崎早紀
 4(三)山本優4(三)山本優4(三)山本優
 5(一)洲鎌夏子5(一)洲鎌夏子5(一)洲鎌夏子
 6(遊)渥美万奈6(DP)大工谷真波6(DP)藤田倭
 7(DP)長﨑望未7(遊)渥美万奈7(遊)渥美万奈
 8(捕)我妻悠香8(捕)我妻悠香8(捕)我妻悠香
 9(二)川畑瞳9(二)市口侑果9(二)市口侑果
 FP(投)上野由岐子FP(投)濱村ゆかりFP(投)上野由岐子

世界女子ソフトボール選手権大会メンバー17人

投手

  • 上野由岐子(うえの・ゆきこ)/ビックカメラ高崎
  • 勝股美咲(かつまた・みさき)/ビックカメラ高崎
  • 濱村ゆかり(はまむら・ゆかり)/ビックカメラ高崎
  • 藤田倭(ふじた・やまと)/太陽誘電

捕手

  • 我妻悠香(あがつま・はるか)/ビックカメラ高崎
  • 山内早織(やまうち・さおり)/ビックカメラ高崎

内野手

  • 渥美万奈(あつみ・まな)/トヨタ自動車
  • 市口侑果(いちぐち・ゆか)/ビックカメラ高崎
  • 川畑瞳(かわばた・ひとみ)/デンソー
  • 洲鎌夏子(すがま・なつこ)/豊田自動織機
  • 内藤実穂(ないとう・みのり)/ビックカメラ高崎
  • 山本優(やまもと・ゆう)/ビックカメラ高崎

外野手

  • 河野美里(かわの・みさと)/太陽誘電
  • 大工谷真波(だいくや・まなみ)/ビックカメラ高崎
  • 長崎望未(ながさき・のぞみ)/トヨタ自動車
  • 山崎早紀(やまざき・さき)/トヨタ自動車
  • 山田恵里(やまだ・えり)/日立

 

采配は優勝請負人、宇津木麗華(うつぎ・れいか)監督

代表チームを率いるのは宇津木麗華監督だ。2011年に代表監督に就任すると、翌年の第13回世界女子ソフトボール選手権大会で日本を42年ぶりの優勝に導いた。2014年の第14回大会も連覇し、2015年に一時退任。2016年に行われた前回の世界選手権後に再度監督に就任した。つまり、宇津木体制では世界選手権で全て優勝している。

再び宇津木体制になった2017年、日本代表は好成績を収めている。2017年2月にオーストラリアで行われた大会「2017 International Down Under Series」では5戦全勝で優勝。6月の東アジアカップも全勝優勝を成し遂げた。また、世界の頂上決戦と位置付けられる日米対抗ソフトボールでは、宿敵アメリカに2勝1敗と勝ち越し。続く7月のUSAワールドカップ、カナダカップも立て続けに優勝している。

今年に入っても快進撃は止まらず、6月の日米対抗ソフトボールでアメリカに3連勝して勝ち越した。東京オリンピックまで指揮を執ることが決まっている優勝請負人、宇津木監督の采配に注目が集まる。

王座奪還、そして2020年東京オリンピックへ

今回の世界女子ソフトボール選手権大会は当然、2020年の東京オリンピックへつながる。

改めて、今大会の注目といえば、2大会ぶりの参戦となる上野投手の奮起だ。ケガで前回の2016年大会に出場できず、アメリカに王座を奪われた悔しさをぶつける投球に期待したい。

今大会の後、8月19日からはアジア競技大会がインドネシアでスタートする。ソフトボール競技種目に参加チームは日本、フィリピン、チャイニーズ・タイペイ、中国、韓国、香港、インドネシアの7カ国だ。同大会は2002年以降、日本が優勝し続けており、貫禄を見せたいところ。

日本のリーグ戦は9月8日から再開する。国際大会で躍動した代表選手が、自チームに戻ってプレーすることになるが、リーグ戦の決勝トーナメント前の11月には、JAPAN CUP国際女子ソフトボール大会が群馬県で開催される。つまり、日本代表選手は休みなくリーグ戦や大会を戦うのだ。

そして、2020年は待望の東京オリンピックが行われる。ソフトボールは、2008年に行われた北京オリンピックを最後に、12年間競技から除外された。現在、日本代表選手の中でオリンピックを経験しているのは、上野投手と山田選手の2人だけである。国際大会で確実に1位2位を獲得しているにもかかわらず、オリンピックの出場が叶わなかった今のソフトボール女子代表はまさに、悲劇の世代でもある。

空白の12年を埋めるべく、今年の千葉、そして2020年東京で輝く日本女子ソフトボール代表の雄姿に期待する声は多い。

第16回世界女子ソフトボール選手権大会2018千葉 開催概要

◆大会日程


8月2日(木)~12日(日)

◆会場


予選リーグ・順位決定戦:

  • ナスパ・スタジアム(成田市)
  • 第一カッター球場/秋津野球場(習志野市)
  • ゼットエーボールパーク(市原市)

決勝トーナメント:

  • ZOZOマリンスタジアム(千葉市)

◆参加国

開催国:

  • 日本

アフリカ:

  • ボツワナ
  • 南アフリカ

アジア:

  • チャイニーズ・タイペイ
  • 中国
  • フィリピン

ヨーロッパ:

  • イギリス
  • イタリア
  • オランダ

北中南米:

  • アメリカ合衆国
  • カナダ
  • プエルトリコ
  • ベネズエラ
  • メキシコ

オセアニア:

  • オーストラリア
  • ニュージーランド

 

世界女子ソフトボール選手権大会2018千葉 放送予定


テレビ東京にて本大会の日本の試合を全試合、生中継予定。
(放送スケジュール:テレビ東京公式サイトより引用)

予選リーグ

 8/2(木)19:58-21:48日本vsイタリア
 8/3(金)18:55-20:50日本vsボツワナ
 8/4(土)19:00-20:54日本vs中国
 8/5(日)18:30-20:24日本vsイギリス
 8/6(月)18:55-21:00日本vsベネズエラ
 8/7(火)18:55-20:54日本vsカナダ
 8/8(水)18:55-21:00日本vsオーストラリア

決勝トーナメント

 8/10(金)18:59-20:54準々決勝 or 敗者復活1回戦 ※2 延長有
 8/11(土)12:00-14:25敗者復活2回戦 ※2 TXローカル
 8/11(土)19:00-20:54準決勝 or 敗者復活最終戦 ※2 延長有
 8/12(日)14:00-16:00準決勝II ※2 延長有
 8/12(日)18:30-21:54 or 19:54-21:54決勝 ※2 延長有
 8/12(日)26:40-28:10決勝(外国勢同士の対戦の場合のみ放送)

※ 荒天の場合、番組変更の場合あり
※2 日本チーム進出の場合のみ放送
※3 8/9(木)は予備日。日本戦が行われる場合は、放送あり

 

Shoichi Sato