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アルネ・スロット監督は解任されるのか? 11月が正念場のリバプールに何が起きているのか

Senior Editor
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昨シーズンに圧倒的な強さでプレミアリーグ優勝を果たしたリバプールは、2年目のアルネ・スロット監督に大きな期待を寄せていた。

オランダ人指揮官は就任1年目でリーグタイトルを掲げ、さらに夏の移籍市場では巨額の資金を投じてチームを強化した。ファンやクラブ関係者の間では、前年の偉業を再現するだけでなく、複数タイトルの獲得にも手が届くのではないかという期待が高まっていた。

しかし、シーズン開幕からその期待は裏切られる形となった。開幕序盤は、リーグ戦5連勝と勝ち点を積み上げていたものの、その後はリーグ4連敗と、チームの課題が次々と露呈していった。

日本時間10月30日、リバプールはEFLカップ(カラバオカップ)4回戦でクリスタル・パレスと対戦し、0-3で完敗した。これで、直近の成績は、7試合で6敗という苦しい状況に陥っている。10月唯一の勝利は、チャンピオンズリーグのフランクフルト戦(5-1勝利)となっている。

この結果、初年度に栄光をつかんだスロット監督にも突如としてプレッシャーがのしかかっている。

本記事では、スロット監督の去就や、リバプールがここまで苦戦している理由、そして11月に行われる7試合がシーズンの行方をどう左右するかを詳しく見ていく。

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スロット監督は解任されるのか?

現在のチーム状況は深刻だが、報道によればスロット監督の解任については現時点で「懸念はない」とされている。

フリージャーナリストのファブリツィオ・ロマーノ氏は、10月末のブレントフォード戦の敗戦後に 自身のYouTubeチャンネル で次のように語っている。

「クラブ内部では、リバプールはアルネ・スロット監督を完全に信頼しています。彼こそがこの状況を立て直すのに最適な監督だと100%確信しているのです。もちろん、シーズン序盤は良いスタートではありませんでした。しかしリバプールは、新加入選手を含むチームを見極め、昨季のような姿勢を取り戻すには時間がかかると理解しています。
それでも、彼らはスロット監督を全面的に信頼しています。クラブの幹部陣、スタッフ、スロット監督の間では日常的に良好なコミュニケーションがあり、関係性に問題はありません。選手たちとの間にも不和はなく、すべてがしっかりとコントロールされています。」

ロマーノ氏は続けて、リバプールの不振の原因について「戦術面、そしてメンタル面の問題もある」と分析している。

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リバプールにとって11月の試合が正念場か?

11月は、リバプールにとってまさに「正念場」の1カ月となる。

11月は、リバプールは全コンペティションを通じて6試合を戦う。そのうち4試合はホームのアンフィールドで行われ、もう1試合もリバプールから近いマンチェスターでの試合となる。つまり、月末のロンドン遠征(ウェストハム戦)以外はすべてイングランド北西部で戦う日程だ。

この7試合には、さまざまなタイプの相手が含まれており、シーズンを通してタイトルを狙えるチームであるかを試す「真のテスト」となる。

11月最初の試合は、アストン・ヴィラとの一戦だ。リバプールは、プレミアリーグでの4連敗という悪循環を止められるかが問われる。ヴィラは、前節マンチェスター・シティに勝利しており、シーズン序盤の不調から立て直しており、油断できない相手だ。

続く試合は、チャンピオンズリーグ、シャビ・アロンソ監督率いるレアル・マドリード戦だ。

皮肉にも、リバプールにとって、この試合は “やりやすい” 展開になる可能性が高い。というのも、リバプールは最近、自らの「ハイテンポなプレースタイル」が裏目に出ているため、アロンソ監督の支配的でテンポを落とす戦術が、結果的にリバプールの助けになるかもしれない。

そして11月の代表ウィーク前には、宿敵マンチェスター・シティとのアウェー戦が控えてる。このビッグマッチを終えると、比較的「勝ち点を稼ぎやすい」3試合が待っている。とはいえ、いずれも油断は禁物だ。

ホームではショーン・ダイチ監督率いるノッティンガム・フォレスト戦、続いてオランダ王者・PSV戦(チャンピオンズリーグ)。そして11月のラストには、低迷中のウェストハム戦(アウェー:ロンドン・スタジアム)と続く。

この7試合をどう乗り切るかによって、リバプールの未来は大きく変わる。

この戦いを終えたとき、彼らがすべてのタイトルレースから脱落するのか、それとも再びタイトルを狙える位置に返り咲くのかが決まる。

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リバプール11月の試合予定

※日程は、すべて日本時間で表記。

日程大会試合会場
11月2日(土)プレミアリーグリバプール vs アストン・ヴィラアンフィールド(イングランド・リバプール)
11月5日(水)チャンピオンズリーグリバプール vs レアル・マドリードアンフィールド(イングランド・リバプール)
11月10日(月)プレミアリーグマンチェスター・シティvs リバプールエティハド・スタジアム(イングランド・マンチェスター)
11月23日(日)プレミアリーグリバプール vs ノッティンガム・フォレストアンフィールド(イングランド・リバプール)
11月27日(木)チャンピオンズリーグリバプール vs PSVアンフィールド(イングランド・リバプール)
11月30日(日)プレミアリーグウェストハムロンドン・スタジアム(イングランド・ロンドン)

なぜリバプールは試合に負け続けているのか?

リバプールの不振には、戦術面と人員面の複合的な問題が関係している。単一の原因で説明できるものではなく、いくつもの要素が絡み合い、チームの「勝ち点を積み上げる力」を阻害している。

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カウンター攻撃への守備対応

昨シーズンのリバプールは、攻撃的でありながらカウンターにも強いチームだった。しかし、今季は一変した。相手のトランジション(守から攻への切り替え)に極めて脆くなっている。

2024-2025シーズンのプレミアリーグでは、1年間でわずか2失点しか速攻からのゴールを許さなかった。ところが今季は、開幕戦だけで2失点を喫している。

スロット監督はその原因として、「中盤での不用意なパスミスが危険なエリアでのボールロストを招いている」と指摘している。だが、問題はそれだけではない。チーム全体が攻撃時に前がかりになりすぎており、ボールを失った瞬間に最終ラインが手薄になっているのだ。

特に、サイドバックやセントラルMFが高い位置を取りすぎる傾向があり、ボールロスト後に戻りきれず、カウンターで簡単に背後を突かれている。

この現象は単なる守備の崩れではなく、後述する他の戦術的問題とも密接に関連している。リバプールの多くの課題は相互に絡み合っており、1つの修正では解決できない構造的なものとなっている。

 ビルドアップ(ボールの前進)の問題

昨季のリバプールがプレミアリーグを制した最大の要因の一つは、トレント・アレクサンダー=アーノルドの圧倒的なボール前進能力だった。

彼は2024-2025シーズン、プレミアリーグ全体で「前進パス数ランキング7位」という記録を残しており、守備的ポジションの選手としては突出した数値だった。ディフェンダーの中でこれを上回ったのは、同様の役割を担ったマンチェスター・シティのヨシュコ・グヴァルディオルのみだった。

Trent Alexander-Arnold

しかし今季、アレクサンダー=アーノルドがレアル・マドリードへ移籍したことで、スロット監督はチーム内で「ボール前進の役割」を分散させざるを得なくなった。その主な担い手となっているのが、ドミニク・ソボスライとフロリアン・ヴィルツだ。

ソボスライは、今季これまでリバプールのベストプレーヤーと称されている。右サイドバックから中央まで複数ポジションを転々とする過密起用が続いており、献身的に貢献しているものの、他のスター選手ほど安定した結果を出すことは難しい状況だ。

一方のヴィルツは、前進の負担を大きく背負わされ、苦戦している。レバークーゼン時代(シャビ・アロンソ監督の下)では、確かにボールを前へ運ぶ役割を担っていたものの、
テンポが遅く、ボールを配ってから前線で受け直す余裕があった。

しかし、現在のリバプールは極端にテンポの速いプレースタイルを採用しており、ヴィルツがボールを運んだ後、再び攻撃の最前線に関与する時間がほとんどない。結果として、得点に絡むプレーで存在感を発揮できなくなっている。

データもその苦境を物語っている。

昨季、ヴィルツはチャンピオンズリーグで90分あたりの8.77本の「前進パスを受け(Progressive Passes Received)」、ブンデスリーガでは、11.83本という驚異的な数値を記録した。

しかし、今季(リバプール加入後)は、プレミアリーグで7.13本/90分、チャンピオンズリーグでは5.69本/90分にまで急落している。

この直接的な影響としては、彼の得点機会が大幅に低下し、90分あたりのシュート数は1.52本にとどまり、得点はゼロ。

だが、ヴィルツはチームメイトのチャンスを演出しており、プレミアリーグ9試合で31回の「シュート創出アクション(Shot-Creating Actions)」でリーグ8位、15回のシュートアシスト」でリーグ10位を記録している。それでも「アシスト数0」という結果が続いており、周囲との連携が実を結んでいない。

また、アルゼンチン代表MFのアレクシス・マック・アリスター(マクアリスター)も大きく調子を落としている。昨季は、90分あたり6.13本の「前進パス(Progressive Passes)」(MFの上位16%=84パーセンタイル)を記録していたが、今季は3.6本まで半減。そのため、スロット監督は出場時間を減らし、他の選手にその役割を与えている。

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ゴールキーパー

今季のプレミアリーグで、リバプールのゴールキーパーは不安定なパフォーマンスを見せているチームのひとつとなっている。これは、シーズン前にはまったく予想されていなかった問題だった。

シーズン最初の6試合でゴールを守ったのはアリソンだ。彼は枠内シュート16本のうち9本をセーブし、7失点を記録した。数字だけ見れば良いとは言えないが、詳細なデータでは、彼に大きな責任はないとされている。

というのも、相手の16本の枠内シュートは平均して0.4 xGOT(on-target expected goals:枠内予想得点)という非常に高い値を持っていた。これは、相手が「止めるのが難しい良い形のシュート」を多く放っていたことを意味する。

最終的に、それら16本のシュートは合計6.5 xGOTに達しており、7失点のアリソンとの失点差は「-0.5」。決して良い数値ではないが、許容できる範囲に収まっている。

しかし、そのアリソンが負傷で離脱すると、リバプールは代役としてジョルジ・ママルダシュヴィリを起用した。バレンシアでの2023-2024シーズンに圧倒的なパフォーマンスを見せた彼に対して、リバプールは多額の資金を投じており、その期待値は非常に高かった。

だが、結論から言えば、彼のプレーは散々なものだった。プレミアリーグ3試合で7失点を喫し、被シュート18本のうち枠内シュートは5.2 xGOT分。つまり、相手にある程度の決定機を与えてはいたが、それを全く止められていない。

さらに深刻なのは、彼のxGOT差(被シュートの質に対する実際の失点差)が**-1.8**という極めて低い数値にとどまっていることだ。このパフォーマンスが続けば、リバプールは長期的に持ちこたえることは難しいだろう。

モハメド・サラーの急激なパフォーマンス低下

今季のリバプールで最も深刻な問題は、モハメド・サラーの急激なパフォーマンスの低下だ。

33歳となったエジプト代表のスターに、リバプールは多額の資金を投じて再契約をしたばかりだった。しかし、その直後から、サラーのプレーは一変し、年齢を一気に感じさせるような衰えを見せている。

彼のパフォーマンスを擁護する余地はほとんどない。サラーは依然として危険なエリアでボールを受けており、「前進パス受け数(progressive passes received)」は 世界のウインガーの上位10% に位置している。それにもかかわらず、その後のプレーでまったく成果を出せていないのだ。

โมฮาเหม็ด ซาลาห์ ในสีเสื้อของ ลิเวอร์พูล

Getty Images

今季、ここまでのプレミアリーグで、サラーが成功させたドリブル(take-on)はわずか2回。さらに、90分あたりのシュート数は2.13本と、昨季の3.23本から1本以上減らしている。シュートの回数が減っただけでなく、シュートの質も低下しており、1本あたりのゴール期待値(xG)は「0.158」と、昨季の「0.208」から約25%の下落を記録している。

もちろん、シーズンはまだ中盤にも達しておらず、巻き返しの時間は残されている。しかし、ファンや専門家の間では「ついにサラーにも年齢の影響が現れたのではないか」という懸念が、現実味を帯びて語られ始めている。

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総括

では、これらのさまざまな問題がどのように絡み合い、リバプールを「昨季の優勝チームの姿」から遠ざけているのだろうか。

まず、アレクサンダー=アーノルドの退団により、右サイドバックの構造が完全に変わってしまったことが出発点にある。スロット監督は、後方から前線へボールを運ぶ新たなビルドアップの方法を模索しなければならなくなった。

しかし、サラーがその負担を支えきれていないため、リバプールはボールの前進を複数の選手に分散させざるを得なくなっている。その結果、チーム全体のポジショニングが高くなりすぎ、ボールを失った際に守備のリスク管理が崩壊してしまっている。

相手チームは、そこを突いて高品質なカウンター攻撃のチャンスを次々と作り出しており、さらにその場面でGK陣が十分に対応できていない。

現在、ボールの前進の多くは、フロリアン・ヴィルツの足元に委ねられている。彼は確かに高い能力を持つが、リバプールのような超ハイテンポな攻撃スタイルでは、得点やアシストといった本来の武器を発揮できなくなっている。

一方、ドミニク・ソボスライは依然として効果的なプレーを見せているものの、スロット監督が毎試合のように布陣やポジションを入れ替えているため、彼のパフォーマンスを最大限に引き出すことができていない。

現在のリバプールは、まさに複雑に絡み合った問題の塊となっている。スロット監督には、高額な補強選手たちをどう組み合わせて機能させるかという課題が突きつけられている。

クラブは彼への信頼を失ってはいないが、現状では、それぞれの小さな問題が互いに悪影響を及ぼし合い、チーム全体の機能不全をさらに悪化させているのが実情だ。

原文:Will Arne Slot be sacked? November fixtures set to define Liverpool's 2025/26 season
翻訳:小鷹理人(スポーティングニュース日本版)

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