アストン・ヴィラのユニフォーム姿のマーカス・ラッシュフォードに違和感を覚えた人にとって、バルセロナのユニフォーム姿はさらに受け入れられないかもしれない。
かつては生え抜きのマンチェスター・ユナイテッドの中心選手と見なされていたラッシュフォードだが、「新たな居場所」探しの末、次なる一歩を踏み出した。27歳の彼は、買い取りオプション付きの1年契約でバルセロナへレンタル移籍し、そのオプション金額は約3500万ユーロと報じられている。
かつては「ワンクラブ・マン」としてオールド・トラッフォードで歓迎されていたが、プレーの不調や監督との関係悪化が重なり、ユナイテッドでの時間はほぼ終わりを迎えていた。昨季後半にアストン・ヴィラでのレンタル期間を終えたこともあり、環境を大きく変えることで再生が期待されている。
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— FC Barcelona (@FCBarcelona) July 23, 2025
Rashford follows in Lineker’s footsteps. pic.twitter.com/ZvbnDAtbax
しかし、この移籍は決して批判なしで迎えられているわけではない。ラッシュフォード本人はカタルーニャへの移籍を強く望んでいたが、この契約が選手本人にとっては良くても、クラブにとっても有益かどうかには疑問が残っている。クラブのスポーツディレクターであるデコには、今こそ、その適性が問われるプレッシャーが高まっている。
スポーティングニュースは、なぜバルセロナがラッシュフォードを獲得したのか、そして彼がハンジ・フリック監督のハイテンポなスタイルにどうフィットするかを解説する。
なぜバルセロナはマーカス・ラッシュフォードを獲得したのか?
バルセロナの財政状況を考えれば、ラッシュフォードの加入は非常に理にかなっている。
クラブはオフシーズンを通して左ウイングの選手を探してきた。ラフィーニャは12月で29歳になり、バロンドール級の活躍を終えたばかりで、レヴァンドフスキは8月で37歳になる。そうした中で、アスレティック・ビルバオのニコ・ウィリアムズの獲得に失敗したことで、左サイドの穴は依然として埋まっていなかった。
何年も報じられてきた通り、バルセロナが移籍市場で動く際には常に財政面がネックとなっている。深刻な資金難が続いているクラブにとって、低コストのオプションはいつも最優先事項だ。
そうした中で、ラッシュフォードの獲得は理想的だ。レンタルであり、買い取りオプションも合理的な金額で設定されているうえ、ラッシュフォード本人がマンチェスター・ユナイテッド時代の高額給与を減額し、15%の年俸カットを受け入れたとされる。この動きにより、バルサ側が給与面で折り合いをつけやすくなっている。実際、バルセロナがラッシュフォードに関心を示していたのは2019年にまでさかのぼるという報道もある。
ユナイテッド側にとっても、ラッシュフォードの高額年俸を1年間カットできることは、今夏の補強戦略にとって非常に重要だ。
バルセロナは過去にレンタル移籍から完全移籍に切り替えるケースが少なく、ジョアン・カンセロ、ジョアン・フェリックス、アダマ・トラオレ、ルーク・デ・ヨングらも1年でチームを去っている。ただし、今季に限って言えば、この取引は両者にとって合理的であり、結果次第では長期的な関係に発展する可能性もある。
ラッシュフォードはバルセロナにとって良い補強なのか?
戦術的に見れば、ラッシュフォードの加入は的確な補強に見える。彼はイングランド代表の主力でもあり、フリック監督の4-2-3-1システムにおいて、主力選手の負担を軽減するバックアップとして有用だろう。
ラッシュフォードは左ウイング、トップ下、センターフォワードと複数のポジションをこなせるため、ラフィーニャ、レヴァンドフスキ、ラミン・ヤマルというフロントスリーの背後で多くの出場機会が見込まれる。昨季、これらの主力選手たちは大きな負担を背負っていたため、フリックにとってはローテーション要員として貴重な存在だ。
さらに、ラッシュフォードはレヴァンドフスキの後ろでもプレーでき、ダニ・オルモ、フェラン・トーレス、フェルミン・ロペスの代役にもなり得る。フリックには前線での選択肢が増えることになり、プレッシング強度と運動量を求める戦術の中で有効に活用できるはずだ。
なぜバルセロナのファンはデコに反発しているのか?
一部のバルセロナファンは、スポーツディレクターであるデコをなかなか受け入れられず、近年の移籍戦略に不満を募らせている。デコは2023年夏にフロント入りしたが、それ以降の補強実績には賛否が分かれている。
近年のクラブの成功は、大型補強によるものではなく、ラミン・ヤマル、パウ・クバルシ、ガビ、そして2019年にラス・パルマスからわずかな移籍金で加入したペドリといった新世代の育成が主な要因となっている。
とはいえ、デコは厳しい財政状況の中で、まずまずの仕事をしているとも言える。初期の補強であるヴィトール・ロケやオリオル・ロメウは成功とは言えなかったが、低コストだった。他方、イルカイ・ギュンドアン、ジョアン・カンセロ、イニゴ・マルティネスといった選手をフリーやレンタルで獲得し、特にセンターバックのマルティネスは一定の成果を残した。
昨季にはRBライプツィヒからダニ・オルモを獲得し、高いパフォーマンスを見せている。また、マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンの負傷時には、引退したヴォイチェフ・シュチェスニーを説得して復帰させたことも称賛された。
このようにデコは限られた予算内でうまく立ち回っているが、それでも批判にさらされている。長年続くクラブの混乱を考えれば、ファンがフロントに対して過敏になるのも無理はないだろう。
原文:Why did Barcelona sign Marcus Rashford? Man United star's loan move to La Liga explained amid Deco criticism
翻訳:小鷹理人(スポーティングニュース日本版)
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