【サッカー豆知識】多言語国家のベルギー代表はどう意思疎通しているのか

Kyle Bonn

小山亮 Akira Koyama

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「サッカーは世界共通語」とよく言われるが、実際にはピッチ上で高度なパフォーマンスを発揮するために、言葉による意思疎通は欠かせない。

クラブチームでは世界中から選手が集まり、多言語環境の中でプレーするのが当たり前になっている。そのため、日常的にコミュニケーションの難しさを感じる選手も少なくない。いくら戦術や技術が高くても、意思の伝達がうまくいかなければ、チームプレーは崩れてしまうことがある。

一方、代表チームでは同じ国や地域出身の選手が集まることが多く、母国語で意思を伝えられる安心感がある。クラブとは異なる環境は、選手にとって大きな心の支えとなり、チーム内の連携にも良い影響を与える。

しかし、この状況がすべての国で当たり前というわけではない。例えばアメリカ代表では、英語を母語とする選手もいれば、スペイン語を母語とする選手もおり、国の多様性がそのままチームに反映されている。このように、代表チームでも言語の違いが意思疎通の課題になることがある。

そして、特に複雑な事情を抱えているのがベルギー代表だ。国内で複数の言語が話されていることが、チーム内のコミュニケーションにも大きく影響している。そこで本記事では、ベルギー代表チームにおける言語事情について解説する。

ベルギーの言語事情:3つの公用語が共存する国

ベルギーはヨーロッパの中心に位置し、多言語国家として知られている。公用語はオランダ語・フランス語・ドイツ語の3つで、国内ではオランダ語が多数派、フランス語がそれに次ぎ、ドイツ語は一部地域でのみ話されている。北部はオランダ語圏、南部はフランス語圏、そして東端にわずかなドイツ語圏が存在するという、非常に特徴的な言語分布を持つ国だ。

2006年にブリュッセルの大学が実施した調査では、首都ブリュッセルの住民の95%がフランス語を話し、59%がオランダ語、41%が英語を話せると回答している。この結果からも、ベルギー国民の多言語能力の高さがうかがえる。

ベルギー代表をつなぐ「共通言語」の選択

では、ベルギー代表チームではどの言語が使われているのだろうか。

イギリスの公共放送『BBC』によると、近年のベルギー代表では、代表活動時の共通言語として英語を使用することが一般的になっているという。

英語はベルギーの公用語ではないが、特定の言語を優遇せず、すべての選手が公平に意思疎通できるよう配慮された選択だ。

国内の言語分布は地理や文化と深く結びついており、特にオランダ語話者とフランス語話者の間には歴史的な背景もある。そんな中で英語を採用することは、公平性を保ち、チーム内の一体感を高めるうえで重要な役割を果たしている。

このように、ベルギー代表チームは英語を軸とした多言語環境を形成しており、世界各国のクラブでプレーするスター選手たちが集まる中でも、母国の複雑な言語事情を反映した独自の文化を持つチームとなっている。公平性と実用性を兼ね備えた「英語」という選択こそが、選手たちの円滑なコミュニケーションと強固なチームワークを支えているのだ。

原文:What language do the Belgium national team players speak? How soccer stars communicate in Red Devils games
翻訳:小山亮(スポーティングニュース日本版)

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Kyle Bonn

Kyle Bonn is a Syracuse University broadcast journalism graduate with over a decade of experience covering soccer globally. Kyle specializes in soccer tactics and betting, with a degree in data analytics. Kyle also does TV broadcasts for Wake Forest soccer, and has had previous stops with NBC Soccer and IMG College. When not covering the game, he has long enjoyed loyalty to the New York Giants, Yankees, and Fulham. Kyle enjoys playing racquetball and video games when not watching or covering sports.

小山亮 Akira Koyama

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。埼玉県出身。都内の大学に在学中。15年間にわたりサッカーに打ち込んできたが、プロの試合観戦や分析も趣味。幼少期からJリーグや欧州サッカーを追いかけ、現在は年間20試合以上をスタジアムで観戦している。大学のサークルでは監督を務め、全国2位を経験した。