サッカーのオフサイドとは? 基本ルールから判定の難しさまで解説

Staff Writer
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サッカーは一見すると、非常にシンプルなスポーツである。

1チームは11人で構成され、ゴールキーパーを除く選手は手を使うことができない。相手チームより多く得点を挙げたチームが勝利を収める。

ただし、初心者をしばしば混乱させるルールがひとつ存在する。それが「オフサイド」である。

ここでは、このやや複雑なルールについて解説する。

オフサイドの基本ルールとは?

簡単に言えば、攻撃側の選手がボールおよび相手チームの最後から2人目の選手よりも、相手ゴールラインに近い位置にいる場合、その選手は「オフサイド」となる。

オフサイドの位置にいる選手がボールに触れたり、味方チームがボールを保持している状況でプレーに関与したと審判が判断した場合、相手チームには間接フリーキックが与えられる。

なお、選手の頭・体・足はいずれもオフサイドの判定対象となるが、手や腕は含まれない。イングランドサッカー協会(FA)は、「オフサイドを判定する際、腕の上限は脇の下の下端のラインと一致する」と定義している。

オフサイドが適用されないケースと判定の仕組み

サッカーのオフサイドルールは、ゴールキック、スローイン、コーナーキックからは適用されない。

ピッチ両側のタッチライン沿いには副審が配置されており、それぞれの担当ハーフ内でオフサイドを確認し、旗を上げて主審に知らせる。主審はその合図をもとに最終的な判断を下す。

近年ではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)も導入されており、ゴールがオフサイドポジションの選手によって生まれた、または影響を受けたとみなされた場合には、主審にその旨を伝えることができる。

ボールに触れなくてもオフサイドとなるケース

オフサイドのルールの中でも、観戦者を最も混乱させ、判定を巡って議論を呼ぶのが、「ボールに触れていないのにプレーに関与した」と見なされて反則を取られるケースである。

国際サッカー評議会(IFAB)が定める「競技規則(Laws of the Game)」では、味方のプレー(パスやシュート)が行われた瞬間に、オフサイドポジションにいた選手が、次のいずれかの行為によってプレーに関与した場合、オフサイドとみなされると定義している。

  • ボールに触れた場合
  • 相手選手の視野を妨げたり、ボールを奪いに行く、あるいはプレーを試みるなどして、相手に明確な影響を与えた場合
  • セーブやブロック、ゴールポストからの跳ね返りの後にボールに触れたり、相手に干渉した場合

たとえば、ある選手がシュートを放ってゴールが決まったとしても、その瞬間に味方の選手がオフサイドポジションにいてゴールキーパーの視界を妨げていた、あるいはセーブを阻害していたと判断されれば、その得点はオフサイドとして取り消される。

このルールを巡る議論の多くは、「その選手が実際にゴールキーパーのプレーに影響を与えていたかどうか」という点に集中する。

テクノロジーが変えたオフサイド判定のあり方

VARは依然として多くのリーグや大会で重要なオフサイド判定を担っているが、一部の大会では、審判をサポートする新たな技術「半自動オフサイドテクノロジー」が導入されている。

このシステムは、FIFAワールドカップ カタール2022で初めて正式採用された。その後、UEFAチャンピオンズリーグやセリエAでも一部仕様を変更して運用が開始され、2024-2025シーズンからはプレミアリーグにも導入されている。

仕組みとしては、スタジアムの屋根下に設置された12台の追跡カメラが、ボールと各選手の29個のデータポイント(センサー)を常時トラッキングする。大会によっては、使用される試合球自体にマイクロチップが内蔵されている場合もある。

これらのデータをもとに、選手とボールの位置関係を示す3Dアニメーションが生成され、主審に結果が通知される。2022年のワールドカップでは、この3D映像がスタジアムの大型スクリーンにも表示され、観客にも判定内容が分かりやすく伝えられた。

半自動オフサイドテクノロジーは、2021年のアラブカップやFIFAクラブワールドカップで実験的に運用され、成果を収めた。その後、2022年ワールドカップ(カタール)、2023年女子ワールドカップ(オーストラリア/ニュージーランド)、そしてユーロ2024(ドイツ)でも採用されている。

FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、半自動オフサイドテクノロジーについて次のように述べている。

「半自動オフサイドテクノロジーは、世界各地で導入されてきたVARシステムの進化形だ」

「この技術は、チームや選手、そしてファンに最高の環境を提供するために、3年にわたる研究とテストを重ねて完成したものであり、FIFAはその成果を誇りに思っている」

このテクノロジー導入の目的は、人為的なミスによって誤った判定が下されるリスクを極力排除することにある。ただし、当然ながら、この技術が未導入の大会や試合では、依然として判定ミスが起こる可能性は残されている。

Offside VAR
FIFA

VAR時代でも誤審が起こる理由

VARは誤審を防ぐために導入された技術だが、人為的なミスが完全になくなるわけではない。それはオフサイドの判定にも当てはまる。

VARが導入されていても、審判のルール解釈やリプレイ映像の見方によっては、誤った判断が下される可能性がある。

また、十分なリプレイ映像や角度が得られないことも、正確なオフサイド判定を難しくする要因のひとつとなっている。

さらにVARの導入によって、オフサイド判定はこれまで以上にミリ単位の精度が求められるようになった。そのため、以前なら見逃されていたわずかな差でゴールが取り消されるケースも増え、ファンの不満を招く場面も少なくない。

オフサイドルールの始まりとその変遷

オフサイドは、サッカーという競技が正式に体系化された当初から存在するルールのひとつであり、1863年にイングランドサッカー協会(FA)が「競技規則」の一部として制定した。

その後、細かな修正は数多く加えられてきたものの、基本的な部分は現在もほとんど変わっていない。

大きな変更が行われたのは1990年で、それまで「相手選手より少しでも前に出ていればオフサイド」とされていたルールが改定され、攻撃側の選手が「相手チームの最後から2人目の選手と同じライン上」に位置している場合はオンサイドと見なされるようになった。

この改定によって、攻撃側の選手は以前よりもわずかに高い位置を取ることが可能になり、オフサイドの基準がやや緩和された。

一方で、元アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏は、近年さらにこのルールを攻撃側に有利な形で見直す提案をしている。その内容は、「得点可能な身体の一部(頭・体・足など)が、最後から2人目の選手と同一線上にあればオンサイドとする」というものだ。

つまり、現行ルールでは「身体の一部でも相手より前ならオフサイド」だが、ベンゲル氏の案では「身体の一部でもまだライン上に残っていればセーフ」となる。

オフサイドルールの目的とその意義

オフサイドのルールは時に分かりづらいと感じられることもあるが、選手がゴール前に張り付いて守備を崩すだけの単調な展開を防ぎ、試合をより流動的で戦略的なものにしている。

このルールがあることで、チームはより賢くプレーすることを求められ、高度な駆け引きや戦術的な攻防が生まれてきた。

現代サッカーの強豪クラブの多くは、相手をオフサイドにかけるためにハイラインを活用している。この戦術は守備側に有利に働く一方で、攻撃側がタイミングよくオンサイドで抜け出せば、ディフェンスの背後に大きなスペースを与えるリスクも伴う。

オフサイドルールは攻撃側にとってはもどかしい存在かもしれないが、サッカーに戦略的な奥行きを与え、ピッチ上のバランスを保つうえで重要な役割を果たしている。

原文:Offside rule in soccer, explained: The simple definition and how referees still manage to get it wrong
翻訳・編集:浄見耕志(スポーティングニュース日本版)

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