アメリカ、カナダ、メキシコの3か国で開催されるFIFAワールドカップ2026は、これまでにない新たな大会となる。
この大会は、史上初の3か国共同開催となるだけでなく、出場チーム数が48に拡大される初の大会でもある。
したがって、2026年の夏、北米大陸で行われる全104試合で使用されることになり、試合球はこれまで以上に注目を集める存在となる。
アディダス(Adidas)は、この大会の公式試合球を発表した。
以下では、その詳細と問題点について紹介する。
ワールドカップ2026試合球は?
FIFAワールドカップ2026の試合球は「トリオンダ(Trionda)」と名付けられた。
この名称は、接頭語の「tri(3)」とスペイン語で「波」「雰囲気」を意味する「onda」を組み合わせたものだ。
FIFAは2025年10月2日(木)にこの新ボールを正式発表した。
デザインは主に白を基調とし、赤・緑・青のカラーが配されている。これは開催する3か国(アメリカ・カナダ・メキシコ)を象徴している。その外観は、この夏のFIFAクラブワールドカップで使用されたボールにかなり似ている。
なぜ2026年の試合球は議論を呼ぶのか?
通常のサッカーボールは切頂二十面体(truncated icosahedron)をベースにしており、平らな五角形を組み合わせて球体を形成している。
しかしアディダスは、W杯2026年大会のボールでまったく異なる構造を採用した。
今回のボールは、「曲げられた四面体(テトラヘドロン)」を基にしており、史上最少の4枚のパネルで構成されている。それぞれのパネルを平らにすると、まるで三枚羽のブーメランのような形状に見える。
このパネル構造は、見た目こそ2014年ブラジル大会の「ブラズーカ(Brazuca)」に似ているが、実際には2010年南アフリカ大会の「ジャブラニ(Jabulani)」に最も近いとされている。
なぜなら、どちらも「完璧な球体」に近づけた設計を意図しているからだ。
ジャブラニが批判された理由
多くの選手によると、ジャブラニの性能が悪かった理由は主に2つある。
- 「球体すぎた」こと
ボールがあまりにも滑らかで真球に近かったため、空気抵抗の減少点(臨界速度)が高くなり、飛行中に突然スピードが落ちる現象が起きた。この現象は『サイエンティフィック・アメリカン』誌でも報告されている。
- 「デザインの非対称性」であること
スピンが少ない状態で蹴ると、表面の空気抵抗が場所によって異なり、空中で「ナックルボール現象」のように揺れた。一方で、より対称的なデザインにすると、空気が均等に当たり、飛行軌道がより予測可能かつ安定する。
トリオンダは改良されているのか?
トリオンダの表面には細かいリッジ(凹凸)が施されており、空気抵抗を増やすことで飛行の安定性を高めているとみられる。このため、アディダスはジャブラニの欠点を踏まえ、よりコントロール性と予測性のある設計を目指した可能性が高い。
果たしてこのボールが、ジャブラニの悪評を払拭するのか、それとも再び議論を呼ぶのか注目される。
歴代のFIFAワールドカップ試合球一覧
初期のワールドカップでは、各大会で使用されるボールに一貫性がなく、複数の製造元が存在した。
しかし、1970年メキシコ大会から、ドイツのスポーツブランドアディダスが公式サプライヤーに任命され、以降すべての大会で公式球を提供している。現在もFIFAとのパートナーシップは継続している。
年 | 開催地 | メーカー | ボールの名前 |
1930* | ウルグアイ | 不明 | T-モデル |
不明 | ティエント | ||
1934** | イタリア | ECAS | フェデラーレ102 |
クリフス | グローブ | ||
ウィリアム・サイクス | ジグザグ | ||
1938 | フランス | アレン | アレン |
1950 | ブラジル | トッソリーニ、ヴァルボネージ、ポーロ&シア | スーパー・ボール・ドゥプロT |
1954 | スイス | コスト・スポーツ | スイス・ワールド・チャンピオン |
1958 | スェーデン | シュドスヴェンスカ・レデル・オック・レムファブリケン | トップ・スター |
1962*** | チリ | クルティエンブレス・サルバドール・カウサーデ | ミスター・クラック |
1966**** | イングランド | スラゼンジャー | チャレンジ・4・スター |
1970 | メキシコ | アディダス | テルスター |
1974 | 西ドイツ | テルスター・チリ・デュルラスト/アポロ・デュルラスト | |
1978 | アルゼンチン | タンゴ・デュルラスト | |
1982 | スペイン | タンゴ・エスパーニャ | |
1986 | メキシコ | アステカ | |
1990 | イタリア | エトルスコ・ウニコ | |
1994 | アメリカ | クエストラ | |
1998 | フランス | トリコロール | |
2002 | 韓国/日本 | フィーバーノヴァ | |
2006 | ドイツ | チームガイスト | |
2010 | 南アフリカ | ジャブラニ | |
2014 | ブラジル | ブラズーカ | |
2018 | ロシア | テルスター18 | |
2022 | カタール | アル・リフラ | |
2026 | アメリカ/カナダ/メキシコ | トリオンダ |
注記
*1930年大会の決勝では、ウルグアイとアルゼンチンがそれぞれ異なるボールを使用し、前半と後半で入れ替えて試合を行った。
**1934年大会では「フェデラーレ102」が最も多く使用されたが、決勝戦では「ジグザグ」が採用された。
***1962年大会では「ミスター・クラック」が公式球だったが、水分吸収などの問題により1958年の「トップ・スター」も併用された。
****1966年大会では「チャレンジ・4・スター」の白球が主に使用されたが、決勝戦ではオレンジ色のボールが採用され、最も有名となった。
原文:Official 2026 World Cup match ball: FIFA, Adidas to unveil 'Trionda' with similarities controversial to Jabulani
翻訳:小鷹理人(スポーティング日本版)
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