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日本戦を前にサッカー米国代表ポチェッティーノ監督が批判に反論「結果だけで判断するのは間違いだ」

Kyle Bonn

浄見耕志 Koushi Kiyomi

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アメリカ、カナダ、メキシコの3か国で開催される2026年のFIFAワールドカップ(W杯)が近づく中、サッカー男子アメリカ代表は準備に苦戦しており、残された時間は少なくなっている。それでもマウリシオ・ポチェッティーノ監督は自信を失っていない。

ファンやメディアは最近の不振に苛立ちを募らせている。直近では韓国との親善試合に0-2で敗戦。来夏に控える自国開催の大舞台まで準備期間が限られているにもかかわらず、ポチェッティーノ監督は主力選手を外し、W杯メンバー入りが難しいとみられる選手たちを招集しているのだ。

そんな中、今月2試合目となる日本代表との親善試合を前に、53歳の指揮官は批判に正面から反論した。

批判への反論を繰り返したポチェッティーノ監督

会見の冒頭では試合会場となるコロンバス(オハイオ州)の雰囲気を称えつつも、批判の声を耳にしていることを仄めかした。

「コロンバスのファンがどういう人たちかは分かっているし、様々な声が聞こえてくる」

この発言は、嵐の前触れにすぎなかった。以降20分にわたり、ポチェッティーノ監督は質問の内容にかかわらず、批判への反論を繰り返したのだ。

韓国戦で途中出場したDFクリス・リチャーズのコンディションについて質問されると、ポチェッティーノ監督の反論が始まった。

「人々は時に意味もなく議論を作り出し、無責任に話をするものだ」と監督は語り出した。

「この代表チーム、この国はすでにW杯出場を決めている。大事なのは常識を持つことだ。くだらないことを話したいなら勝手に話せばいい。しかし私たちは、選手全員に対して責任を感じている。彼(リチャーズ)の状態を最優先に考えなければならない。親善試合で無理をさせれば、大きな問題につながりかねない」

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さらにこう続けた。

「『なぜ彼を起用しないのか』と言う人がいれば、同時に『なぜ起用するのか』とも言う。重要なのは、我々には計画があり、何をしているかを理解していて、経験もあるということだ。選手たちが最高の状態でW杯に臨めるようにするのが最優先事項だ」

「限られた選手だけで準備をして、本大会で誰かがケガをしたらどうするのか。その時にテストや経験を積ませる余裕はない。だからこそ、明日の試合で私がメンバーを入れ替えても驚かないでほしい」

「人は結果だけを見て批判したがるが、それは少し恥ずべきことだと思う。我々は前を向き、団結しなければならない。代表が最高の状態でW杯に臨み、誇りを感じてもらえるような競争力のあるチームを作るために、一つにならなければならない。それこそが最も重要なことだ」

さらに言葉を重ねるポチェッティーノ監督

この時点で会見場の注目は完全にポチェッティーノ監督に集まっていた。しかし、彼の主張はこれで終わらなかった。本大会のメンバーの絞り込み時期について質問が出ると、さらに言葉を重ねていった。

「我々はアマチュアではない。あらゆる状況を想定して準備しているプロの集団だ」とポチェッティーノ監督は強調した。

「出場機会を与える可能性のある選手を呼ばなければならない。なぜなら、 もしティルマンがケガをしたら、誰が代わりを務めるのか。だからこそ今がその時なんだ」

「もちろん勝ちたい。韓国戦でも勝ちたかったし、明日の日本戦でも勝ちたいと思っている。だが同時に、経験の少ない選手にも時間を与えなければならない。そうすれば苦戦することも、ミスをして敗れることもあるだろう。勝利を望んでいるのは間違いないが、重要なのはプロセスだ。厳しい状況でプレーする機会を与えることで、ティルマンには『ポジションを狙う選手が後ろに控えている』と感じさせなければならない」

「今のアメリカには助けが必要だと思う。我々には公式戦がないからだ。ゴールドカップで40日間一緒に戦ったとき、チームがどれほど競争力を発揮できたかは見ただろう。それが我々の計画であり、実行したことだ。代表で活躍できるとは誰も思っていなかった選手を起用したが、それでもここにいるのは変化が必要だからだ。だからこそ約1年前、私に代表監督の話が来たのだ」

「私たちには、自分たちの計画があり、そのプロセスを進めているだけだ。もちろんすべての試合に勝ちたい。だが、もし勝てなかったとしても、W杯を最高の状態で迎えるために今取り組んでいることは極めて重要だ」

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CONCACAFネーションズリーグでの失望を引き合いに

話は続いた。普段は冷静沈着なポチェッティーノ監督だが、最近の批判に明らかに苛立ちを見せていた。会見場では落ち着いた様子を保ちながらも、言葉の端々からはフラストレーションが滲み出ていた。

チームの進歩について問われると、それをきっかけに再び力強く語り始めた。ここで彼は、今年のCONCACAFネーションズリーグでの失望を引き合いに出した。

「3月のことは覚えているだろう? みんな覚えていると思う。そして、その時はみんな私と同じ意見だったはずだ。だがあの敗戦は目を覚まさせる出来事だった。我々には別のプロセス、別のアプローチが必要だと気づかせてくれたんだ」

「だからこそ、最も大事なのは代表チームであり、協会であり、そしてこれだ」と言いながら胸のUSAのエンブレムを指さした。

「これはどんな個人の名前よりも大切なものだ。全員が重要だが、最も大切なのはこれであり、そのために全員が働く必要がある。そして、我々が進歩している理由は、そのメンタリティが選手たちに表れているからだと思う」

「招集された選手たちは全員、代表に来たいと望み、努力を惜しまない。例えばマリク・ティルマンについてもリスクを避けるために今回は呼ばなかったが、彼には『理解してほしい』と伝えた。ティルマンは招集されなかったことに失望していたが、それこそ我々が正しいことをしている証拠だ。出場できない選手たちは、出場を勝ち取るために全力を尽くす必要がある。それが再び呼ばれる可能性につながるし、その競争は組織全体にとって健全なものになる」

日本戦に対する準備は?

さらに、これまでの方針とは異なる発言も指揮官から飛び出した。

日本戦への準備について問われると、ポチェッティーノ監督は「複数の戦術的アプローチを試している」と明かした。

「時間があまりない。だからこそこうした試合をトレーニングのように使うことが大事だ。必要なことを実戦で試す、それが重要だ」

これは、ポチェッティーノ監督がこれまで主張してきたこととは大きく異なる。就任会見では「自分にとって親善試合など存在しない。コパ・アメリカでも、W杯でも、親善試合でも同じ。常に国のために勝つべきだと教え込まれてきた」と強調していた。

チームのベテラン選手であるティム・リームも今年1月のキャンプで「親善試合なんてものはない」と語っていた。

しかし、数か月後には監督自身が180度方向転換し、親善試合を「実質的な練習」と位置づけ、「結果を犠牲にすることもやむを得ない」という姿勢を示した。これは以前の発言と矛盾しており、混乱を招く発言だった。

3月のネーションズリーグでの敗戦が、元トッテナムやPSGの指揮官に大きな衝撃を与え、アプローチ方法に劇的な変化をもたらした。そして、彼はこの新たなプロセスに対する批判に対しても反論した。

「我々はいま、とても強いチームだ。発言する人々はもう少し考えるべきだ。物事を評価し分析する方法は、批判だけではない」

「批判すること自体は構わない。正しいことを指摘する批判は好きだ。だが、批判のための批判は違う。それは私を傷つけるのではなく、あなた自身の国を傷つけていることになる。選手たちが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、我々は皆が一体となって支えるべきだ」

ポチェッティーノ監督は最後に、こう締めくくった。

「私は勝ちたい。競争心があるからね。勝てば『素晴らしい、いい判断だった』と簡単に言われる。しかし、負けてしまうと、たとえ良いプレーをしていても『いや、違う、全部間違っている』と批判される。長い期間結果が出なければ、『その計画やプロセスは間違っていたのではないか』と言われるのは当然だ。だが、非常に短い期間で、さまざまな状況がある中では、勝ちたいという気持ちを持ちつつも、W杯までの10か月で結果を出せるチームに仕上げるプロセスこそが重要だ」

ポチェッティーノ監督は、目の前の試合での勝利や主力18人の連携の構築よりも、チーム全体の層を厚くすることを優先している。

しかし、W杯で最終的に評価されるのは「過程」ではなく「結果」だ。そしてその審判は、限られた短期間で下されることになる。

原文:Mauricio Pochettino rages at critics of USMNT World Cup prep: 'They can talk bulls—'
翻訳・編集:浄見耕志(スポーティングニュース日本版)

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Kyle Bonn

Kyle Bonn is a Syracuse University broadcast journalism graduate with over a decade of experience covering soccer globally. Kyle specializes in soccer tactics and betting, with a degree in data analytics. Kyle also does TV broadcasts for Wake Forest soccer, and has had previous stops with NBC Soccer and IMG College. When not covering the game, he has long enjoyed loyalty to the New York Giants, Yankees, and Fulham. Kyle enjoys playing racquetball and video games when not watching or covering sports.

浄見耕志 Koushi Kiyomi

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。東京生まれ・東京育ち。スポーツとの出会いは、幼少期に夢中で観戦した大相撲。以来、欧州サッカーやF1を中心に幅広く観戦し、競技そのものだけでなく、その背景や文化にも強い関心を持つ。映画や音楽をはじめカルチャー全般を日常的に吸収し、雑誌文化にも親しんでいる。