新生マンチェスター・シティに試練 開幕2試合目で浮き彫りになった課題とは

Dom Farrell

小山亮 Akira Koyama

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プレミアリーグ開幕戦でウルヴァーハンプトンに4-0と快勝した1週間後、マンチェスター・シティはホームでトッテナムに0-2の敗北を喫した。シーズン最初の試合での勢いは影を潜め、過去5シーズンで3度目となるホームでのトッテナム戦黒星となった。

試合後ペップ・グアルディオラ監督は、勝利と敗北を同じものとして受け止める姿勢を見せている。

「開幕戦のあと人々は『すべてが順調だ』と言っていたから、私は『まだ1試合目だ、これからいろいろ起こる』と答えた。今回も同じだ」

「我々が取り組んでいることや、選手たちのプレーには良い点がいくつもあった。一歩ずつ着実に進めていけば、まだ新しい要素が多いチームでも連携がうまく噛み合うようになる」と語った。

これは、昨季チームが失速した際に疲弊しきっていたグアルディオラ監督の姿とは大きく異なる。トッテナム戦では多くの課題が明確になったことから、冷静でバランスの取れた視点を保つことが今後の戦いにおいて重要になるだろう。

急速に変化するスカッド

シティは今季、2020年以来初めて「王者」としてシーズンを迎えることができなかった。トッテナム戦の先発メンバーでプレミア制覇を経験していたのはわずか5人で、そのうちの一人であるFWオスカー・ボブは昨季のリーグ戦でわずか2試合しか先発していない。

また、昨年11月にトッテナムに0-4で敗れた際の先発メンバーのうち、週末の試合に出場したのはDFジョン・ストーンズ、FWアーリング・ハーランド、DFリコ・ルイスの3人のみで、チーム編成の大きな変化が鮮明になった。

「昨季トッテナムに0-4で負けたから、多くの選手を入れ替える必要があったかもしれないね」と冗談めかす指揮官。そのうえで、トッテナム戦で明らかになった若いチームならではの課題についても言及した。この日のシティの先発メンバーは平均年齢24歳326日で、シティにとって2010年10月以来プレミアリーグで最も若い布陣だった。

「我々のビルドアップ時に相手がマンマークをしてくる場合、相手を引きつけて次の展開やパスコースを作らなければならないが、今日はその状況に正しく対応できなかった」

「ただ、それ自体は大きな問題ではない。有利な位置までボールを運べた場面で"シンプル"なプレーができなかったんだ。パスをつなぐ連続性が重要なのに、それが途切れてしまったんだ。3本、4本のパスでいきなり攻め切ることはできない。今日のメンバーでは、その部分を少し欠いてしまった。それだけだよ」

今季のシティに必要なこと

グアルディオラ監督は「シンプルなプレーの欠如」をどれだけ効果的かつ迅速に、しかも永続的に改善できるかが、今季の成功のカギになることを理解している。 この“シンプル”さがあったからこそ、プレミア4連覇や三冠を達成した際にも、まるで何も苦労していないかのように自然に試合を進めることができた。試合中にプレッシャーや困難な状況に直面しても、こうした基本技術が身についていたことで、試合中のミスやプレッシャーをやわらげる役割を果たしていたのだ。

しかし、トッテナム戦で2失点を喫した10分間は、まさに対照的だった。相手の巧みなプレスにより判断ミスが連鎖し、最終的にGKジェームズ・トラフォードのミスからMFパリーニャに追加点を許してしまった。開幕戦で堂々としたプレーを見せたトラフォードだったが、この日は相手のプレッシャーに苦しめられた。

一方、2018年にベンフィカから加入して以来、長年シティの守護神を務めてきたGKエデルソンは、この試合ではベンチから見守る立場だった。ボールを足元で扱う際の彼の“シンプル”なプレーのレベルは、おそらくこれまでにプレーしたどのゴールキーパーよりも卓越していると言える。

ただ、シティの黄金期を支えてきたケビン・デ・ブライネやカイル・ウォーカーらと同様に、エデルソンにとってもチームを離れる時期が近づいてきている。彼の去就については過去2度の夏の移籍市場で繰り返し話題になっており、今夏も移籍の噂が絶えず、移籍期限前の退団が確実視されている。

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Getty Images

マンチェスター・シティはどのようにチームを再構築してきたのか?

2017年から2022年まで、パブロ・サバレタ、ヤヤ・トゥーレ、ヴァンサン・コンパニ、ダビド・シルバ、セルヒオ・アグエロ、フェルナンジーニョといった名選手たちが惜しまれつつクラブを去った。そのたびにグアルディオラ監督、当時のフットボールディレクターであるチキ・ベギリスタイン、そしてクラブの首脳陣がチームの方向性をしっかり維持し、勝利を重ねながら着実に進化を続けていた。

しかしここ2シーズンは、その戦略がうまく機能しなかった。三冠を達成した2022-2023シーズンの後に加入した新戦力の中で、即戦力として確実にチームに貢献したと言えるのはDFヨシュコ・グヴァルディオルだけだろう。MFマテオ・コヴァチッチは有用なバックアップとして一定の役割を果たしているものの、決定的な存在にはなれておらず、FWジェレミー・ドクは観客を沸かせる爆発力を備える一方で、プレーのムラが多い選手である。さらにMFマテウス・ヌネスはチームの負傷者事情によって、本職の中盤よりも右サイドバックなどの複数ポジションを任されるケースが目立っていた。

2024年夏、チームに変化が求められていたにもかかわらず、マンチェスター・シティの補強は消極的だった。新たに加わったのはFWサヴィーニョと、古巣に戻ったMFイルカイ・ギュンドアンの二人のみ。ただ両選手とも、今夏の移籍市場で放出の噂が絶えない存在である。結局、グアルディオラ監督は昨シーズンも頼れる主力に依存する選択を取り続け、その限界がはっきりと表れた。

しかし、今年1月に普段は静かなシティにしては異例の積極補強を実施し、FWマルムシュ、DFフサノフ、MFニコ・ゴンザレスを獲得した。さらに今夏にはGKトラフォード、MFラインデルス、DFアイト=ヌーリ、MFシェルキを迎え入れ、戦力の刷新が進んでいる。スパーズ戦ではフサノフを除く全員が先発に名を連ね、新たな顔ぶれの台頭を印象づけた。

グアルディオラ監督は試合後に自身の采配についてこう語った。「もしかしたら今回の敗因は選手起用による部分もあるかもしれない。でも私がこういう決断をしたのは、ニコもラインデルスも練習で成長を見せ、先発に値すると判断したからだ。また、スパーズやブレントフォード(フランク監督の古巣)と対戦するときは、相手が自陣に深く引いて守る。だから、攻撃の質やビジョンが非常に優れているシェルキも必要だと考えたんだ」

ただしシェルキをベルナルド・シウバより前に起用したのは、新戦力への期待が少し先行しすぎた面もある。もっとも、キャプテンのベルナルドが後半から入っても状況は大きく改善しなかった。一方、最後の15分に投入されたMFロドリとMFフォーデンは、経験豊富な優勝請負人らしく安定感を示し、その重要性を改めて証明した。

今後、シティがトッテナム戦のようにバラバラで不安定な姿を見せることは避けなければならない。確かに、グアルディオラ監督の下には才能ある選手が揃っているが、チームとしての共通理解はまだ十分とは言えない。グアルディオラの長期政権が続くことで、選手たちは彼の戦術を熟知した相手と戦っていくことになるが、その中でより“シンプル”で正確なプレーを身につけていく必要がある。

今季のシティの最大の見どころは、過去のような安定感や絶対的な強さが失われた中で、いかに戦うかという点にある。

原文:Man City and Pep Guardiola's big problem with the 'simple things'
翻訳:小山亮(スポーティングニュース日本版)

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Dom Farrell

Dom is the senior content producer for Sporting News UK. He previously worked as fan brands editor for Manchester City at Reach Plc. Prior to that, he built more than a decade of experience in the sports journalism industry, primarily for the Stats Perform and Press Association news agencies. Dom has covered major football events on location, including the entirety of Euro 2016 and the 2018 World Cup in Paris and St Petersburg respectively, along with numerous high-profile Premier League, Champions League and England international matches. Cricket and boxing are his other major sporting passions and he has covered the likes of Anthony Joshua, Tyson Fury, Wladimir Klitschko, Gennadiy Golovkin and Vasyl Lomachenko live from ringside.

小山亮 Akira Koyama

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。埼玉県出身。都内の大学に在学中。15年間にわたりサッカーに打ち込んできたが、プロの試合観戦や分析も趣味。幼少期からJリーグや欧州サッカーを追いかけ、現在は年間20試合以上をスタジアムで観戦している。大学のサークルでは監督を務め、全国2位を経験した。