ジム・ラトクリフ氏、アモリム監督を3年間マンチェスター・ユナイテッドで指揮させる意向を表明

小鷹理人 Masato Odaka

Emily Nicole

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マンチェスター・ユナイテッドの共同オーナーであるジム・ラトクリフ氏が、ルベン・アモリム監督に全面的な支持を示し、3年間の猶予を与えたいと語った。

ポルトガル人のアモリム監督は、2024-2025シーズンのプレミアリーグで15位に終わったこと、そして新シーズンも好スタートを切れなかったことでプレッシャーを受けている。

リーグ戦7試合で3勝しか挙げられず、EFLカップ(カラバオカップ)では英4部のグリムズビー・タウンにPK戦で敗れるという屈辱も味わった。

クラブ内では監督解任の噂や、アモリム監督自身が辞任するのではという憶測まで流れていた。

しかし、ラトクリフ氏は『The Times』紙のポッドキャスト「The Business」に出演し、アモリム監督への完全な信頼を表明した。

彼は「サッカーは一、夜にして結果が出るものではない」とした上で、「彼が偉大な監督であることを証明するために3年間を与える」と語った。

INEOSのオーナーでもあるラトクリフ氏は、アモリム監督の歩みを元監督のアレックス・ファーガソン氏やアーセナルのミケル・アルテタ監督と比較した。

「アレックス・ファーガソンを最初の2年で解任すべきだという声がどれだけあったか、今でも覚えている。アルテタだって、最初の2年間はひどい時期を過ごしていた」

ラトクリフ氏はさらにこう続けた。

「最終的には結果がすべてだが、忍耐が必要だし、結果だけで判断してはいけない。ユナイテッドには多くの良い要素がある。長期的な計画を持って取り組まなければならない。スイッチを押せばすぐ変わるようなものではない」

「ルベンには、3年間で偉大な監督であることを証明してもらいたい」

ラトクリフ氏、マンチェスター・ユナイテッドの現状を率直に語る

クラブのスポーツ部門を統括する72歳の大富豪ラトクリフ氏は、率直に自身の考えを明かした。

彼はコスト削減の理由、グレイザー家(クラブの筆頭オーナー)を擁護する発言、そしてユナイテッドの長期的な方向性について説明した。

「サッカークラブにはビジネス面スポーツ面の2つの側面がある。結果と最も強く相関しているのは、好むと好まざるとにかかわらず収益性だ。資金が多ければ多いほど、良いチームを作ることができる。F1のマシンと同じで、良いマシンを作れれば速く走れる」

ラトクリフ氏は、ユナイテッドを「史上最も収益性の高いクラブ」にすることを目標に掲げていると述べた。

2005年にクラブを買収したグレイザー家については、「彼らは本当に良い人たちで、クラブに情熱を持っている」と擁護。

また、自身が「現場に足をつけたローカル担当」であるのに対し、グレイザー家はアメリカにいるため、互いに補完的な関係を築いていると説明した。

さらに、グレイザー家がアモリム監督解任を求めることも「あり得ない」と断言。

「そんなことは絶対に起きない。健全な関係があるからだ。彼らは取締役会に出席して、一緒に話し合う。もちろん、これまでにミスも犯したが、それを共有して修正してきた。完璧な人間などいない」

コストの削減とアカデミーについて語る

ラトクリフ氏は、クラブ・アカデミーの強化についても言及した。彼は「以前ほど質の高い選手を輩出できていない」と指摘し、改善が進めばクラブの財政面でも利益をもたらすと語った。

経営面での動機は明確であり、ラトクリフ氏はすでに改革の影響を与え始めている。

「ユナイテッドには素晴らしい人材が多い一方で、一定の凡庸さも存在していた。組織が肥大化していたんだ。無料ランチを廃止したことで批判も受けたが、私はこれまで誰からもタダ飯をもらったことはない」

クラブは2024-2025シーズンに収益6億6,650万ポンド(約1,300億円)という過去最高額を記録したものの、3,300万ポンド(約66億円)の赤字を計上した。それでも、前年の1億1,300万ポンド(約226億円)の損失からは大幅に改善している。

コスト削減策によって人件費を5,100万ポンド(約102億円)削減する一方、クラブは今夏の移籍市場で2億ポンド(約400億円)を超える補強を行った。

ラトクリフ氏は「コスト削減も補強も、どちらも満足している」と述べている。

さらに、クラブは約20億ポンド(約4,000億円)規模・収容人数10万人の「ニュー・トラフォード・スタジアム建設計画」を発表。この巨大プロジェクトは、多くの関係者が「どうやって資金を確保するのか」と眉をひそめるほどの野心的なものだ。

しかし、クラブの負債総額は約11億ポンド(約2,200億円)に上ると報じられており、財務状況は依然として不透明だ。

それでも、ラトクリフ氏はこれまでになく率直で誠実な姿勢を見せている。

アモリム監督への信頼、さらなるコスト削減、そして長期的な再建計画。果たして共同オーナーとして、ラトクリフ氏はマンチェスター・ユナイテッドを立て直すことができるのだろうか。

原文:Sir Jim Ratcliffe backs Ruben Amorim to lead Manchester United for 3 years
翻訳:小鷹理人(スポーティングニュース日本版)

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小鷹理人 Masato Odaka

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。埼玉県出身。南アフリカW杯を機にサッカーに魅了され、欧州サッカーを中心に幅広く観戦。大学・大学院でスポーツマネジメントを専攻し、理論と実践の両面からスポーツを追求。フットサル部では全国大会出場経験あり。趣味はスポーツ観戦でサッカー、格闘技、MLBなど幅広く観戦。NBAは現在勉強中。

Emily Nicole

Emily Nicole is a freelance contributor for The Sporting News. Emily is a sports journalist, with a passion for motorsport with professional experience across print, broadcast and social media. Emily holds a Journalism Bachelor’s Degree and a Media & Communications Master’s Degree, both from City, University of London. You can follow more of Emily's work on The F1 Rundown on TikTok (https://www.tiktok.com/@thef1rundown).