2026年のFIFAワールドカップは、史上最大規模の大会として、FIFAの歴史に新たな1ページを刻むことになりそうだ。
今大会は100年近い歴史の中で初めて、出場国が48チームへと拡大。アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国での共同開催となり、約1カ月にわたって世界中から注目を集めることになる。
大会は2026年6月11日に開幕し、全104試合が連日のように行われる予定だ。そして7月19日、ニュージャージー州のメットライフ・スタジアムで行われる決勝戦をもって大会の幕が閉じる。
ただ、大会前に対戦カードと組み合わせ表を確定させる必要がある。そこで行われるのがFIFAワールドカップの組み合わせ抽選会である。
本記事では、その抽選会のフォーマットやルール、グループ分けなどについて詳しく解説していく。
組み合わせ抽選会はどのように行われるのか
2026年FIFAワールドカップの組み合わせ抽選は、4つの段階で実施される。
まず、各出場国の名前が書かれた紙がプラスチック製のボールに入れられ、FIFAランキングに基づいて1〜4の番号が付けられた「ポット」に振り分けられる。
その後、抽選参加者が各ポットから1つずつボールを引き、4チームで構成されるグループを順に埋めていく。
続いて、地理的制限(同一大陸からのチームが同じグループに入りすぎないようにするルールなど)に基づき、コンピューターによって各チームが適切なグループに自動的に割り当てられる。
抽選がすべて終了すると、各チームはグループステージで対戦する相手だけでなく、グループを1位または2位で突破した場合にどのようなトーナメントルートを進むことになるのか、その全体像も把握できるようになる。
組み合わせ抽選会の概要
- 日時:2025年12月06日(土)2:00(日本時間)
- 会場:ジョン・F・ケネディ・センター(アメリカ・ワシントンD.C.)
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2026年ワールドカップの抽選フォーマットとルール
出場国数が史上初めて48チームに拡大されることで、2026年大会の組み合わせ抽選はこれまでの大会とはやや異なる形式で行われることになる。
ただし、基本的なフォーマット自体はこれまでと大きく変わらない。従来通り、FIFAランキングに基づいてチームがポットに分けられ、各グループの構成が順に決定される仕組みが採用される予定だ。
ポット分けとシード
出場する48チームは、FIFAランキングに基づいてそれぞれ4つの「ポット」に振り分けられる。開催国は自動的にポット1に含まれ、あらかじめ決められたグループに割り当てられる。
また、大陸間プレーオフの通過チームは抽選の時点で確定していないため、FIFAランキングに関係なくすべてポット4として扱われる。
抽選の進め方
各グループのバランスを保つため、各ポットからそれぞれ1チームずつが割り当てられる。従来のように「4チーム×8グループ」ではなく、2026年大会では「4チーム×12グループ」が編成される点が大きな違いだ。ただし、基本的なルールや手順はこれまでとほぼ同じとなる。
開催国についてはあらかじめグループが決められており、メキシコはグループA、カナダはグループB、アメリカはグループDに自動的に配置される。
抽選の際は、まずポット1から順にボールを引いていく。引かれたチームは、コンピューターによってアルファベット順の最初の空いているグループに割り当てられる。ただし、同じ大陸のチームが1つのグループに入りすぎないよう、地理的制限がある場合は、そのグループを飛ばして次の候補グループに割り当てられる仕組みとなっている。
地理的制限
ワールドカップの組み合わせ抽選では、同じ大陸連盟に属する国同士が同じグループに入らないようにするという原則がある。これは、予選でも対戦している可能性のある国同士の再戦を避け、できるだけ多様な対戦カードを生み出すための仕組みだ。
ただし、ヨーロッパ(UEFA)だけは例外となっており、1グループに最大で2カ国まで入ることが認められている。
この例外が設けられている理由は、単純に出場チーム数が多いためだ。2026年大会では、ヨーロッパから16カ国が本大会に出場する予定であり、すべてのチームを完全に分けることが現実的に不可能なため、このような特例が適用されている。
2026年ワールドカップのポット分けはどうなる?
ポットの最終的な構成は、すべての出場国が決定した時点で確定する。各チームのポット分けはFIFAランキングによって決まるため、抽選直前まで変動する可能性がある。
なお、たとえ現在FIFAランキングが非常に高いチームであっても、抽選時点での最新ランキングが基準となるため、今後の試合結果によってポットが変わる可能性がある点に注意が必要だ。
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ワールドカップの抽選は他の大会と何が違うのか
ワールドカップの抽選は、世界中のサッカー大会の多くと基本的な流れはほとんど同じであるため、ファンにとっても大きな違和感はない。
特に、かつてのチャンピオンズリーグの抽選方式(スイス方式導入前)と非常によく似ており、グループごとにポットからチームを引き当てる形式が採用されている。
一方で、イングランドの国内カップ戦のように、チームにボール番号を割り当てる方式とは異なる。ワールドカップでは、チーム名が書かれた紙をボールの中に入れ、そこから抽選で引くという形が取られる点が特徴だ。
抽選会の歴史
ワールドカップの抽選は、時代とともに大きく進化してきた。1930年の大会当初は招待制で実施される簡単なシード方式に過ぎなかったが、現在ではコンピューターを使ったテレビ中継イベントとして世界中で注目される存在となっている。
大会初期の頃は、強豪チーム同士が早期に対戦しないようにシードが設けられ、単純なノックアウト形式で試合が行われていた。
1950年大会でグループステージが導入されると、初めて本格的な抽選が実施された。1982年には出場チームが24チームに拡大され、ノックアウト前に2回のグループステージが設けられたが、この形式はすぐに廃止された。
1998年に出場国が32チームに増えた際には試合数とグループ数が増えたものの、抽選のスタイル自体は大きく変わることはなかった。
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ワールドカップ抽選を巡る論争
FIFAはワールドカップの抽選を大会開幕の祝祭として位置付けているが、必ずしも問題なく進むわけではない。
時折、抽選手順にトラブルが発生し、単なるハプニングとしての恥ずかしい場面から、不正の疑惑が浮上するケースまである。
ボールを引く形式の抽選では、特定のボールを識別できるように暖めたり冷ましたりしているのではないかと疑うファンもいるが、実際に不正が証明された事例はこれまでにない。
中でも、結果以上にトラブルが印象に残った抽選会を紹介する。
1982年スペイン大会
ワールドカップの抽選会の中でも特に有名なトラブルは、1982年のスペイン大会で起きた。
当時のFIFAは地理的制限の導入を試みており、南米のチーム同士が同じグループに入らないようにするルールを設けていた。そのため、本来はブラジルやアルゼンチンが入るグループが決まるまでは、ペルーとチリをポット2から除外する予定だった。しかし、抽選開始前にこれを忘れてしまい、さらに最初に引かれたベルギーとスコットランドの2チームも正しいグループに配置できず、後で修正する羽目になった。
その上、抽選に使われた機械はスペインの国営宝くじで使うものと同じで、故障してボールが出てこなくなり、スタッフが棒で突き出すという事態に。さらに追い打ちをかけるように、ボールのひとつが機会内で破裂するハプニングまで発生し、抽選は完全に混乱したものとなった。
ワールドカップ抽選シミュレーター
一部のファンは、実際の抽選会の前にワールドカップ抽選をシミュレーションして、どのような組み合わせになるかを楽しむこともある。
中でも評価の高いシミュレーターが『Draw simulator』と呼ばれるもので、現実に近い条件で抽選を体験できる。
一方で『Sim World Cup』も利用できるが、こちらは2026年大会の開催国(アメリカ、カナダ、メキシコ)を事前に正しいグループに配置する機能がない点に注意が必要だ。
原文:How does the FIFA World Cup draw work? Full guide to format, rules, pots, groups and more for 2026 event
翻訳・編集:小山亮(スポーティングニュース日本版)
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