過去10年間で、アメリカにおけるサッカー人気は飛躍的に高まっており、ヨーロッパのサッカークラブは、アメリカで試合を行うことの経済的な魅力を認識してきた。
その背景には、既存のアメリカ人の間でのサッカー認知度の上昇と、移民コミュニティ内での根強い人気がある。こうした要素が相まって、アメリカにおけるサッカー文化は急速に広まった。
放映環境の整備により、MLS(メジャーリーグサッカー)だけでなく、海外クラブの試合にもアクセスしやすくなり、ファンの数は大幅に増加している。
FIFAも2025年夏、アメリカで初めて開催したクラブワールドカップを一定の成功と見ており、2026年の北中米共催のワールドカップに向けて機運が高まっている。
ここ数年、ヨーロッパの主要クラブがアメリカでリーグ戦を行うという構想が囁かれてきたが、国内ファンから「金儲け目的」と批判されることを恐れ、多くのリーグが実現を拒んできた。しかし、ラ・リーガはその一線を越える寸前まで踏み込んでいた。
バルセロナvsビジャレアルはマイアミで行われるのか?
『The Athletic』のアダム・クラフトン記者の8月の報道によると、スペインサッカー連盟(RFEF)は、12月にバルセロナ対ビジャレアル戦をマイアミで開催することを承認した。その後、この開催地変更の要請はUEFAとFIFAに提出され、10月6日、UEFAがこの申請を承認した。
しかし、UEFAはこの決定を歓迎していなかった。形式上の承認には応じたものの、「法的には拒否できない」という自らの規定の不備を理由に、「遺憾ながら承認する」との立場を明らかにした。
UEFAの声明では次のように述べられている。
「現在、見直し中のFIFAの関連規定が十分に明確でないため、UEFA理事会は例外的措置として、今回の2件の要請をやむを得ず承認した。UEFAは今後、FIFAが主導するルール改正に積極的に関与し、国内大会の整合性やクラブ・サポーター・地域社会の強い結びつきを保護するよう努める。」
UEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長も、今後このような事態が再び起こらないよう、規則の抜け穴を塞ぐ意向を示した。
「リーグ戦は自国で開催されるべきだ。そうでなければ、熱心なファンを疎外し、競技の公正性を損なう可能性がある。我々の協議の中で、この懸念が広く共有されていることが確認された。55の加盟協会の建設的かつ責任ある対応に感謝する。」
もしこの試合がアメリカで開催されていた場合、欧州主要リーグ史上初めて、自国以外の地で公式リーグ戦が行われることになっていた。
レアル・マドリード、国外開催案に猛反発
レアル・マドリードは、この試合をアメリカで行うことに断固反対の立場を取った。
8月12日に発表した声明で、同クラブは次のように主張している。
「国外での試合開催は、ホーム&アウェー制における“領土的互恵の原則”を侵害するものであり、競技の公平性を損ね、申請クラブに不当なスポーツ上の優位性をもたらす」
さらに、「大会の一貫性を保つためには、すべての試合が同一条件下で行われる必要がある。この原則を一方的に変更することは、競争者間の平等を壊し、結果の正当性脅かし、スポーツ以外の要因に基づく例外を容認する前例となる。これは競技の健全性に影響を与え、重大な転換点となる。」と述べた。
その後、リーグ内外で抗議が高まり、10月18〜19日の試合週末には、ラ・リーガの選手たちが試合開始直後の15秒間プレーを止めるという抗議行動を実施。レアルのダニ・カルバハルやティボー・クルトワもマイアミ開催案を批判した。
バルセロナ対ビジャレアルのマイアミ開催は中止
この試合は、12月20〜21日の週末に予定されていた。最終的に、ビジャレアルのホーム「エスタディオ・デ・ラ・セラミカ」で開催されることとなった。
10月21日火曜、ビジャレアルがチャンピオンズリーグでマンチェスター・シティと対戦している最中に、ラ・リーガは マイアミ開催が正式に中止された ことを発表した。アメリカのプロモーター会社リレバント・スポーツが、スペイン国内の情勢不安を理由に中止を申し入れたという。
ラ・リーガは声明で次のように述べた。
「ラ・リーガは、マイアミでの公式戦開催に関してプロモーターと協議を重ねた結果、最近のスペイン情勢の不確実性を踏まえ、主催者側の判断でイベントを中止することを決定した。ラ・リーガとしては、スペインサッカーの国際化における歴史的な機会を失ったことを深く遺憾に思う。この試みは、リーグの国際的存在感を高め、選手のブランド力を向上させ、アメリカのような戦略的市場でスペインサッカーの価値を強化する大きな一歩となるはずだった。」
なぜラ・リーガはアメリカで試合を行いたいのか?
他のリーグが国外開催に慎重な姿勢を見せる中で、ラ・リーガは過去10年にわたってこの構想を積極的に推進してきた。
最初の試みは2018年、バルセロナvsジローナの試合をマイアミで開催しようとしたが、当時はRFEFとFIFAが強く反対した。当時、ラ・リーガとスペイン連盟の関係は悪化しており、その対立も大きな障壁となった。しかし、現在の関係は改善している。
ラ・リーガが国外開催にこだわる背景には、アメリカ市場の拡大がある。特にバルセロナとレアル・マドリードはアメリカ国内でも圧倒的な人気を誇り、ラテン系コミュニティを中心に巨大なファン層を抱える。こうした状況を活用すれば、スペインサッカー全体の国際的影響力を強化できるというわけだ。
実際、ラ・リーガはすでに国外での大会開催を経験している。2020年以降、スペイン・スーペルコパはサウジアラビアで開催されており、2021年版のみ新型コロナの影響で国内開催となった。
アメリカのプロスポーツリーグも同様の取り組みを進めている。メジャーリーグベースボール(MLB)はここ数年、日本で開幕シリーズを開催しており、NFLもイギリス、ドイツ、そして最近ではメキシコやブラジルでも試合を行い、国際的な市場拡大を目指している。
原文:Will Barcelona vs. Villarreal be played in Miami? La Liga plans for match in USA cancelled
翻訳:小鷹理人(スポーティングニュース日本版)
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