2026年サッカーW杯開幕まで8ヶ月を切り、10月中旬に行われる2試合を含めメンバー入りのために実戦アピールできる機会もあと数試合となった。
来年6月の開幕前のメンバー発表まで、W杯登録メンバー入りの可能性がある選手の経歴と注目ポイントを紹介していく。
記念すべき第一回目は、前大会のカタールW杯でも最終メンバーに選ばれ今大会ではエースとして活躍が期待される「上田綺世」(以降、上田)を紹介。
経歴
上田は茨城県出身の現在27歳。中学生まで鹿島アントラーズ(以降、鹿島)の下部組織でサッカーを続け、ユースに昇格できなかったことで茨城県高校サッカーの名門鹿島学園高校に進学。高校卒業後は大学サッカーの強豪法政大学に進学した。
法政大学でも全日本大学サッカー選手権のタイトル獲得などにも貢献し順調に学生サッカーでのキャリアを積み上げていたが、大学生ながらも日本代表として参加した2019年コパアメリカ(南米サッカー連盟大会日本は招待国として参加)でチャンスに絡みながらも得点できずに6月末に帰国すると、その直後に2021年シーズンからの加入が内定していた鹿島に2年前倒しで加入を発表した。
鹿島加入後は、同年7月にトップチームデビューを果たすと、8月10日当時鹿島と優勝争いをしていた横浜F・マリノス(以降、横浜FM)との試合で終盤に決勝点を挙げ初ゴール(以後、横浜FMとの試合では毎試合のようにゴールを挙げることから横浜FMキラーと呼ばれる)。
その後も順調に出場し2019年は13試合で4得点を挙げた。
シーズンスタートから在籍した2020年は26試合10得点、2021年は29試合14得点とJリーグではトップレベルのFWとして認識を強めていった。
2022年3月日本代表に2019年以来の選出。鹿島ではシーズン半ばまでに18試合で10得点と驚異のペースで得点を量産し、夏の移籍市場でベルギーのサークル・ブルッヘに移籍しヨーロッパに渡った。
サークル・ブルッヘでも1年目からエースとして活躍し公式戦41試合で22得点、2023年夏からはかつて小野伸二の在籍したオランダのフェイエノールトに移籍した。
フェイエノールトではサークル・ブルッヘ時代に比べ適応に苦しんだものの徐々にエースとして信頼を勝ち取り、2025-2026年シーズンはリーグ開幕戦でゴールを決めると8試合8得点。チームだけでなくオランダリーグとしてもトップのFWとしてチームを牽引している。
特長
FWとして必要な能力が総じて高い万能型のストライカー。
182㎝の高身長を活かした打点の高さ、両足から放たれる強烈なシュート、スピードとフィジカルの強さもあり、相手DFとの駆け引きにも長けているため、多彩な得点パターンを持っている。
筆者の選ぶベストシーン
鹿島在籍時の2020年11月3日アウェイ日産スタジアムで行われた横浜FM戦での得点。
2点リードされた39分に、土居聖真からのロングフィードをスピードを落とすことなくトラップし間髪入れずにシュート。
背後からのハイスピードのパスをスピードに乗った状態で的確にボールを処理する技術、相手DFが寄せる前にシュートに移行するアジリティの光ったワールドクラスの得点だった。
注目ポイント
相手チームの分析が進み選手に対しても情報が溢れた現代サッカーでは、分析が及ばないプレーをできなければ得点を奪うのは難しい。上田の多彩な得点パターンは分析外のことを試合中に起こせる可能性があり、個人の能力で上回ることができればさらに得点への期待は高まる。
日本代表はW杯でベスト16に進んだ過去4大会でいずれもあと1点が取れずにベスト8への道を絶たれている。2026年W杯時、28歳と選手として一番脂の乗っている時期を迎える上田の活躍が日本代表悲願のベスト8を叶えると言っても過言ではない。