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骨折、中継ぎ調整経てまさかの指令「マジで無理です」…ロッテ右腕が強行登板に耐えた背景

尾辻剛 Go Otsuji

骨折、中継ぎ調整経てまさかの指令「マジで無理です」…ロッテ右腕が強行登板に耐えた背景 image

Jiji Press

力投するロッテ・大嶺祐太

■大嶺祐太氏、故障とリハビリ続きのプロ野球人生

2006年の高校生ドラフト1位指名を受けてロッテに入団した大嶺祐太投手は、2009年にはプロ初完封を記録するなど5勝をマーク。大器の片りんを示し、先発ローテーションの一角に食い込みかけたが、2011年以降はケガとの闘いが続いた。

「リハビリは結構しんどかったですね。MRI検査でも画像上は問題ない。だから投げるんですけど、痛みが取れないんです。それが続いたのが一番きつかったですね」

2010年は2度目の完封勝利を挙げたものの3勝止まり。2011年は右肩を痛めて1軍登板は1試合にとどまる。この辺りからケガとの長い闘いが始まった。翌2012年は右肩痛の影響もあって入団6年目で初めて1軍登板なく終了。2013年は完封勝利を含む4勝、2014年は3勝を挙げたが、メディカルチェックで右肘の疲労骨折が判明した。

骨折明けの2015年はキャンプで出遅れて2軍で中継ぎ調整。球数は巨人やヤクルトなどでも手腕を発揮した名伯楽の小谷正勝2軍投手コーチから指示が出ていた。日によって30球、50球、80球、100球と大きな差があったという。

「もしかして小谷さん、僕が中継ぎ調整ってことが分かってないのかなって思いながら投げてました。それで小谷さんに『僕、今年から中継ぎだって言われてるんですけど』と言った時に『バカやろう、何でもっと早く言わないんだ!』って怒られました。『すみません、てっきり分かっているものだと思っていました』と言ったら『わしは分からんよ、そこまでは』と言われました」

今でこそ笑い話として話せるが、当時は中継ぎ調整ながら真剣に100球の投球練習を行ったのである。同年の1軍初登板は4月19日のソフトバンク戦(QVCマリン)。2番手でマウンドに上がり、いきなり3回を投げ1安打無失点に抑えた。

すると落合英二1軍投手コーチから「『次の試合は先発をやりなさい』と言われました」という。先発投手陣が不調や故障者続出で駒不足に陥っているチーム事情があったものの、中継ぎ調整してきた中でのまさかの通達。「『いや、無理です』って断ったんです。でも『また3回まででいいからやりなさい』って言われて。『いや、マジで無理です』って言ったんですけど……」。そこで、思わぬ事態が起きた。

後に監督を務める主力の井口資仁内野手が通りかかったそうだ。「井口さんが『お前がやってくれよ』と言ってきたので『分かりました』と答えました」。大先輩2人からの“ムチャぶり”に、決意を固めるしかなかったのである。

■2015年は自己最多8勝「充実していました」

中6日で迎えた同26日の楽天戦(コボスタ宮城)に先発。3回どころか5回まで投げ、6安打2失点と粘った。打線の援護がなく敗戦投手となったが「井口さんからも落合さんからも握手されました。褒めてもらいましたね」と懐かしそうに回顧する。

思わぬところで生きた、小谷コーチの100球指令。「足はプルプルしてました」と限界寸前の状態で力を振り絞った。このシーズンは24試合に登板して完封勝利1度を含む8勝7敗、防御率3.17。登板数、勝利数、防御率はキャリアハイの数字が並び「あの年は、これぞプロ野球って感じで充実していましたね。体力的にはしんどかったですけど」と振り返った。

骨折明けでフル回転した反動か、2016年は不調に陥り1勝止まり。2017年も2勝に終わった。2018年には右肘痛を発症し1軍登板なし。オフに靭帯損傷が発覚してトミー・ジョン手術と鏡視下滑膜切除術を受けた。

「トミー・ジョン手術の時は、手術すれば投げられるというのはもう(他の選手で)証明されていたので、何の根拠もないですけど治ればまた投げられるという自信はありました」

長いリハビリの末、2019年の育成契約を経て、2020年8月23日に支配下復帰。9月1日の西武戦(ZOZOマリン)で3年ぶりの1軍登板を果たした。

「手術した後は、何か開き直った感じで投げることができました。『別に打たれてもいいじゃん』と思って投げている時の方が抑えられるんですよ。もちろん打たれる時もありますけど、変な四球とか少なくなりました」

ケガとリハビリを繰り返したプロ野球人生。現役生活の終盤に経験した手術によって、ようやく自分の理想とする投球が見えたのである。

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Staff Writer