■大嶺祐太氏、キャンプのブルペン投球見学でプロの凄さを実感
2006年の高校生ドラフト1位指名を受けてロッテに入団した大嶺祐太投手は2007年、生まれ故郷である石垣島での春季キャンプで第一歩を踏み出した。いきなり痛感させられたのは、レベルの違い。2軍スタートとなる中、練習見学でプロの凄さを体感することになった。
「とんでもないところに来てしまったと思いました」。第1クールはブルペンで先輩投手の投球を見学。「捕手の後ろで見ていたんですけど『この人たちでも1軍に行けないのか』というほどの球の切れを感じました。球の切れは映像ではどうしても分からないし、実際に見ないと感じられない部分。『マジかよ』と思いました」。今まで見たことがない感覚だったと振り返る。
さらに衝撃だったのが、2軍の投手だということ。「話を聞いたら、1軍では全然投げていない。2軍でも数試合しか投げていないんです。『これは、やっべーな』って感じでした」。出はなをくじかれたのである。
じっくり育成する球団の方針もあり開幕は2軍。3月29日のイースタン・リーグ、巨人戦(ロッテ浦和)でプロ初の公式戦登板を果たし、5回2失点と上々のデビューを飾った。続く4月8日のヤクルト戦(戸田)は6回2失点で8奪三振の好投。さらに同15日の楽天戦(千葉マリン)も150キロを計測して5回7奪三振2失点(自責1)と好結果を残した。
このプロ3試合目の登板は1軍との“親子ゲーム”。ナイターで行われる1軍の試合前に開催され、ボビー・バレンタイン監督を含む1軍首脳陣も視察していたことで、大きなアピールになった。同22日の巨人戦(越谷)も6回2失点。安定した投球が続いていた。
■プロの洗礼、1軍初登板で5失点「ファームとの差を感じた」
同時期に1軍の先発ローテーションを担っていた小野晋吾投手が左脇腹を痛めて離脱。すると大嶺氏に1軍から声がかかった。「たまたま、僕と晋吾さんのローテーションが似ていたからだと思います」。同30日の西武戦(グッドウィルドーム=現ベルーナドーム)で先発。初めて1軍のマウンドに上がった。
初回は無失点で立ち上がったが3点リードの2回、アレックス・カブレラ内野手に一発を浴びるなど5失点。その後は立ち直ったものの、4回0/3を投げて5失点で降板した。いきなり味わったプロの洗礼。「ファームとの差を凄く感じました」と回顧した。
「思っていたのと、だいぶ違いましたね。威圧感もそうですし、(打者が)狙っている球は少しでも甘くなれば一発で仕留める。その確率が物凄く高いんです。狙っていない球は、大げさに言えば真ん中付近でも打たないんですけど、狙っている球は簡単に打たれました」
結局、1年目の1軍登板はその1試合だけ。それでも高卒ルーキーにとっては貴重な経験であり「そんなに早く(1軍に)上がれるとは思っていなかったですし、今振り返ると、凄くありがたい話ですね」と当時を思い起こした。
2軍では14試合に登板して力をつけていった1年目。この年から石垣島でキャンプが開催されたことには「凄く感謝しています」と力を込める。
「自分が子どもの時は間近でプロ野球を見ることがなかった。それが、小さい子どもたちや中学生、高校生がキャンプを見て、情報を得られるようになったのは大きい。どれぐらいの力量までいければプロ野球選手になれるんだという目標設定ができます」。来年から1軍キャンプ地は宮崎の都城市に移るが、一定の効果があったと感じている。石垣島出身初のドラフト1位選手が、チームにも島にも与えた影響は大きかった。
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