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チーム名を変えて5年で現在の地位を確立したNFLワシントン・コマンダーズが元の名称に戻す理由はあるか?

Mike DeCourcy

石山修二 Shuji Ishiyama

チーム名を変えて5年で現在の地位を確立したNFLワシントン・コマンダーズが元の名称に戻す理由はあるか? image

ワシントンD.C.を本拠地とするNFLチームがスーパーボウルで優勝してから30年以上が経ったが、彼らがチャンピオンに相応しい実力を示したのはそれほど昔のことではない。

2020年にチームの旧名称を廃止した決定は、元オーナーのダン・スナイダー氏がチームの歴史に残したポジティブな貢献の一つと言える。その名称は、可能な限りタイプすることを避けようとするほど侮辱的なものであった。また、その代わりとして「コマンダーズ」という名前を選んだことも街の歴史に美しく溶け込む点で評価できる。

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数十年にわたり抑圧と弾圧の象徴だった名前を放棄することは不可欠だった。ワシントンはそこからさらに前進し、力強さと栄光を反映した新しい名前を採用した。また、2023年7月にフランチャイズの経営権を取得した新オーナーのジョシュ・ハリス氏がコマンダーズ・ブランドへのコミットメントを表明し、決定を擁護したことも印象的だった。彼は「スポーツは人々を結びつけるべきもので、その邪魔になるべきものではない」と説明した。

ただ、この質問は完全に消えたわけではない。ハリス氏は今年2月のポストシーズン記者会見でこの質問を受けた。次に記者団の前に立つ際、おそらく今週金曜日にバージニア州アッシュバーンのチーム本拠地で始まるトレーニングキャンプの開幕前後には、再びこの質問を受けるだろう。ただ、その答えは2024年の素晴らしいシーズンを終えた後の彼の回答で十分だ。

「この名前は、私たちのチーム、文化、コーチングスタッフに受け入れられていると思う」とハリス氏は述べた。

「だから、私たちはこのまま進んでいく」

「今、この施設内で『コマンダーズ』という名前は確かな意味を持っている。それは、フットボールを愛し、フットボールに優れ、激しくヒットし、精神的にタフな、素晴らしいチームメイトである選手たちを表す。本当に意味のある名前だ。この名前はますます意味を深めている」

チームの旧名称は時が経つにつれてますます嫌悪感を抱かせるものになってきている。メリアム=ウェブスター辞書は、このチームの旧ニックネームを「侮辱的で軽蔑的な用語」と定義し、『Dictionary.com』 は、「古い俗語:軽蔑的で不快」と表現している。TwitterのAIチャットボット『Grok』は、この用語を「人種差別、固定観念、およびネイティブアメリカンコミュニティの疎外と関連しているため、今日では広く不快で無神経であるとみなされている」としている。

ワシントンの旧名称については長年にわたり調査が行われてきたが、最も包括的なものとしては2020年に2つの主要大学が実施した調査がある。この調査では、ネイティブアメリカンの49%がその言葉を不快または非常に不快だと感じていることが明らかになった。この問題に関する世論調査の最も良い要約は、オセージ族のメンバーであるルイ・グレイ氏が2013年の『タルサ・ワールド』の記事内で述べている。

「何かが人種差別的かどうかを調べるためになぜ世論調査を行うのか?」と彼は言った。

「他の民族に対してはそんなことはしないだろう。アフリカ系アメリカ人に対し、どのような言葉が人種差別的かを決めるための投票などしないだろう」

ワシントンのNFLチームはついに5年前、その全てを過去のものとした。その後構築された新時代に入って、「コマンダーズ」という新名称の導入、ハリス・オーナーグループによる新体制、そして最も重要なのはルーキーQBジェイデン・ダニエルズを軸に昨シーズン12勝5敗の成績を残したチームの台頭が訪れた。ダニエルズはパス3,568ヤード、25タッチダウンを獲得、先発QBとして70.5%の勝率を記録し、ルイジアナ州立大学(LSU)で前年獲得したハイズマン賞に続き、昨年はスポーティングニュースの新人賞を受賞した。

昨シーズンの卓越したパフォーマンスからさらにクォーターバックのポジションが向上すると見込まれる中、フリーエージェント市場でラン守備の弱点を補強(DLジャボン・キンロー)し、ドラフトでチームの要のクォーターバックを守るための補強(OTジョシュ・コナリー)を行ったコマンダーズは、新たな黄金時代の確立へ勢いを増している。

経営陣はこのタイミングでチームの勢いを損なうような後退的な措置を講じることは無謀だと認識している。

4月、チームは旧本拠地RFKスタジアムの跡地に新スタジアムの建設する計画を発表する記者会見を開催した。スタジアム建設だけで27億ドル(1ドル147円換算で約3942億円)の予算をかけて2030年に完成予定の新スタジアムは、屋根付きのスタンドとフィールドを備え、今後スーパーボウルやファイナル4、2031年のFIFA女子ワールドカップといったイベントの開催地としてワシントンは有力な候補地になりうる。

30年以上にわたって郊外に拠点を置いてきたチームをワシントンD.C.に戻すことは、コミュニティにとって素晴らしいことだろう。

ただ、この状況下でもチームは大きな影響力を持っている。

『WUSA』の現地7月16日の報道によると、スタジアム建設承認のためのワシントンD.C.の独占期間が切れた後、メリーランド州とバージニア州の指導者たち16人はチームの本拠地への関心を再表明するためにチームに接触したとのことだ。

したがって、仮にフランチャイズのD.C.復帰計画に何らかの脅威が生じたとしても、代替案は豊富にある。コマンダーズは既に最も重要な一歩を踏み出している。彼らは自らの尊厳を取り戻したのだ。

原文:Washington's NFL team is commanding great respect on and off the field – no reason to risk that now
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)


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Mike DeCourcy

Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 37 years and covered 34 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.

石山修二 Shuji Ishiyama

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。生まれも育ちも東京。幼い頃、王貞治に魅せられたのがスポーツに興味を持ったきっかけ。大学在学時に交換留学でアメリカ生活を経験し、すっかりフットボールファンに。大学卒業後、アメリカンフットボール専門誌で企画立案・取材・執筆・撮影・編集・広告営業まで多方面に携わり、最終的には副編集長を務めた。98年長野五輪でボランティア参加。以降は、PR会社勤務・フリーランスとして外資系企業を中心に企業や団体のPR活動をサポートする一方で、現職を含めたライティングも継続中。学生時代の運動経験は弓道。現在は趣味のランニングで1シーズンに数度フルマラソンに出場し、サブ4達成。