マイク・トムリンの声明の冒頭数ワードは奇妙なものだった。
その文章は「熟考と内省を重ねた末に」というフレーズから始まっていた。
たった16時間で、いったいどれほどの熟考と内省ができたというのだろう。
スティーラーズがテキサンズに敗れた現地12日(月)夜のプレイオフ終了から16時間後、トムリンは辞任を発表した。
Statement from Mike Tomlin: pic.twitter.com/66O3ktES2m
— Pittsburgh Steelers (@steelers) January 13, 2026
彼はテキサンズ戦の前からこの幕引きを考えていたと思うべきか?
「この試合に負ければ7連敗だ。8連敗は絶対に避けたい」と考えていたと。
トムリンのスタイルにはマッチしない考え方だ。彼ならば、私の高校最後の年のYMCAリーグチーム「ディーコンズ」を率いてもマーチマッドネス(全米大学バスケットボール選手権)に進出し、16番シードが1番シードを倒す番狂わせを期待させる、トムリンはそんな印象を与えてくれる人物だ。
トムリンの今回の決断は彼の性格とは全くそぐわない。しかもスティーラーズにとっても最悪のタイミングだ。チームにとっては今こそ彼の力、ロスター内の能力を最大限に引き出す力が必要とされていた。実際、クォーターバックがダック・ホッジスであれ、ミッチ・トゥルビスキーであれ、アーロン・ロジャースであれ、トムリンはその力を発揮させてきた。
ところがトムリンは、胸が張り裂けるようなプレーオフ敗退を経験してきた主力選手たちと同じようにチームを去る決断を下した。正直なところ、彼にはもっと期待していた。過去20年間に何度も見せてきたあの闘志を今回も発揮するものと考えていた。
彼のコーチとしての欠点を信じるようになったファンは、この決断を大いに歓迎することだろう。トムリンはそんな評価に反する実績を山ほど残してきたにもかかわらずだ、
そしてスティーラーズは来季、ヘッドコーチの経験不足とクォーターバックの人材難という厳しい状況で開幕を迎えることがほぼ確実となった。コーディネーター職に新たな人材が加わればこの最悪のニュースにも良い面はあるかもしれない。だがそれもトムリン退任が生む課題を克服するには不十分だろう。

この10年間、スティーラーズはチーム史上屈指のQBベン・ロスリスバーガーの後継者を探し続けてきた。そして成果が出なかった時期、ファンやメディア関係者はトムリンに次期QBの発掘と育成を任せることはできないと主張してきた。
公平を期すならば、チームは2022年のドラフト1巡目でケニー・ピケットを指名している。今にしてみれば荒唐無稽な指名と言えるが、当時はファンや地元メディア内にも広く支持されていた。だが結果的にこの決断がトムリンに対する信頼感を損なうこととなった。
実際にはもっと信頼されてしかるべきだったはずだ。なぜならトムリンはロスリスバーガーが成長途上の若き才能だった時からエリート級の守備陣に支えられたチームの中で彼を育て上げ、スーパースターとなってからは守備陣が崩壊しつつあるチームを数シーズンにわたって支え続けた。その功績が十分に評価されてきたとは言い難い。
スティーラーズは2026年NFLドラフトの指名順位を上げるために活用できるドラフト指名権を多数保有している。ただ、そうまでして指名するに値する有望株がいるかは明らかでなく、ましてやその1巡指名選手が成長には時間もかかる。その間、攻撃陣を率いることができる選手を見つけられる可能性はさらに低い。
また今回の件で多くの人は見落としている。なぜ我々は社長のアート・ルーニー二世がトムリン並みの優秀なコーチを探してこられると信じているのだろうか?
ルーニー氏は組織の方針に従い、才能ある若手アシスタントコーチを採用するだろうか? 他チームでのコーチ交代が相次いでいる現在、リーグ内には多くの人材が存在している。デンバーやニューイングランドが成功した手法を試みるのか? マイク・ブラベルのような人材がいれば理想的だが、彼には今週末試合がある。
トムリンにもいくつかの欠点はあった。最も顕著なのはスタッフに創造的なアプローチを持つ有望な若手コーチを起用してこなかったことだ。それでも、19シーズン連続で勝率5割を下回らなかった実績は息をのむものだ。トムリンは偉大な故ダン・ルーニー氏が組織に残した不朽の貢献を体現していた。1969年のチャック・ノール、1992年のビル・カウアー、そして2007年のトムリン起用は、ルーニー氏がオーナーとして下してきた偉大な決断だった。56年間チームを指揮した3人のヘッドコーチに共通するのは二つだ。起用したルーニーのヘッドコーチたちに対する絶対的な信頼、そして殿堂入りの経歴に刻まれたロンバルディ・トロフィー獲得の栄光である。
過去10年近く、スティーラーズのファンはプレーオフ初戦での連敗に苛立ち、怒りさえ示してきた。ジャガーズにホームで45-42の逆転負けを喫した2017年シーズンから始まり、月曜夜のテキサンズ戦まで続いている。だが近い将来、このプレイオフでの苦戦の日々ですら懐かしく思われる日が来ないとは限らない。
トムリンに必要な内省と思索は、テキサンズ戦での痛ましい終盤の数分間に全て行われたのかもしれない。長い間接戦だった試合は突然、アクリシュア・スタジアムに残った観客の一部にとって恥辱の時間となり、11月のビルズ戦での敗戦時に聞かれた「トムリンを解雇しろ!」というチャントが再びスタジアムに鳴り響いた。
自分をクビにするのか? 5試合中4勝して地区優勝を決めたのに? せいぜい頑張ってくれ。
スティーラーズには最近あまり良いことがなかった。
今こそチームには幸運が必要だろう。
原文:Mike Tomlin's abrupt departure from Steelers leaves organization in a tough spot
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版)
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