近年のNBAは拮抗しており、複数回の優勝を飾るのがほぼ不可能になっている。2018年のゴールデンステイト・ウォリアーズを最後に、連覇を達成したチームはない。
その流れを変えるかもしれないのが、2024-2025シーズンのNBA王者となったオクラホマシティ・サンダーだ。彼らは月並みな優勝チームではない。レギュラーシーズンの平均得失点差はプラス12.9点だったが、これはNBA史上最高の数字だ。そして守備も現代のNBAで有数の出来だった。
ほかのチームたちにとってもっと恐ろしいのは、今が彼らの最終形態ではないということだ。今後数年、サンダーはもっと向上していくだろう。史上屈指の王朝の始まりとなるかもしれない。
サンダー王朝の幕開け
サンダーは若い主軸を容易に維持可能
財政的にサンダーは素晴らしい状況にある。ローテーション選手は全員、来季も契約が残っている。ジェイレン・ウィリアムズとチェット・ホルムグレンはいまだ安価なルーキー契約のため、570万ドル(約8億3220万円/1ドル=146円換算)のタックスペイヤー・ミッドレベル例外条項でフリーエージェント選手を獲得しなければ、ラグジュアリータックス(ぜいたく税)の対象にならない。
今から2年後からは、高額な年俸負担が始まる。ウィリアムズとホルムグレンは新契約を結ぶだろう。だがそれでも、オーナーにタックスを払う気があれば、サンダーは全員を維持することができるのだ。
数年前にジェームズ・ハーデンを放出したことで大きな批判を浴びたサンダーだが、優れたチームには投資をしてきた。球団の歴史で通算1億ドル(約146億円)超のタックスを支払っている。これはNBAチームの中で平均以上の数字だ。
これらに基づくと、シェイ・ギルジャス・アレクサンダー、ウィリアムズ、ホルムグレンの主軸トリオは、当面一緒にとどまるはずだ。
今後、失うかもしれないリスクがある程度存在するローテーションプレイヤーは、アイザイア・ハーテンシュタイン、ルーゲンツ・ドート、ケンリッチ・ウィリアムズ。だが、彼らはいずれも2027年夏までの契約を結んでいる。
さらなる成長が見込まれるサンダーの選手たち
今季のサンダーはリーグで7番目に若いチームだ。平均年齢は24.8歳。歴代の優勝チームで2番目に若い。
主力選手たちはさらに成長するだろう。ギルジャス・アレクサンダーはまだ26歳だ。ジェイレン・ウィリアムズは24歳、ホルムグレンは23歳。ステフィン・カリーが26歳で、クレイ・トンプソンとドレイモンド・グリーンが24歳だった2015年のウォリアーズのようだ。
主力トリオ以外でも、サンダーにはルーキー契約の選手が6人いる。NBAドラフト2024で全体12位指名されたニコラ・トピッチもそのひとりだ。ひざの前十字じん帯のケガのため、今季を全休している。
さらに、サンダーには次のドラフトで全体15位、24位、44位の指名権があり、引き続きタレントを加えていくことが可能だ。31歳のアレックス・カルーソと30歳のケンリッチ・ウィリアムズを除き、主力選手全員がまだ向上できる年齢にある。

無限のトレード可能性を持つサンダー
通常、優勝を競うチームはそれまでに大きなトレードに踏み切り、ドラフト資産を手放している。優勝チームの中でサンダーが独特な状況なのは、この点だ。サンダーは逆に、再建時代からの指名権を多く保っている。
サンダーは今後のドラフトにおける自前の指名権をすべて保有したままだ。また、3つの指名権交換権、最大5つの保護条件つき1巡目指名権、そして18の2巡目指名権がある。過去の王者にはなかったほどの資産だ。
例えば、もしもヤニス・アデトクンボを獲得できるとなったら、サンダーには狙いにいくだけの駒がある。ジャ・モラントやトレイ・ヤング、その他の希望するスーパースターなどについても同じだ。そこまでの大型補強でなくても、例えばボストン・セルティックスがドリュー・ホリデーやデリック・ホワイトのような質の高いスターターを手放すとなれば、サンダーはほぼすべてのチームを上回る条件をオファーできるだろう。
まだサンダーは引き金を引いていない。すでに優れたロスターがあり、アップグレードできるところを見つけるのは簡単ではないからだ。本当に、彼らの悩みはぜいたくである。
サンダーはほかのチームとの差を広げており、優勝を競うライバルとなるチームたちは、急いで追いつこうとしている状況だ。セルティックスは2023-2024シーズンから後退した。デンバー・ナゲッツは財政的な問題で強化するための方法が少ない。インディアナ・ペイサーズはタイリース・ハリバートンのケガが深刻なら、彼を失うことになる。
先日デズモンド・ベインを獲得して補強に踏み切ったオーランド・マジックは、ファイナルに勝ち進めるだけの良いチームかもしれない。だが、彼らやニューヨーク・ニックス、クリーブランド・キャバリアーズ、ヒューストン・ロケッツが、サンダーを倒せるだろうか?
2025-26シーズンもサンダーは優勝候補の最右翼だ。2027年も同様だろう。今のサンダーには、2020年代の最後まで独走するだけの可能性があるのだ。
原文:Thunder could be the NBA's next dynasty: Why Oklahoma City should be favored for 2026 title and beyond(抄訳)
翻訳:坂東実藍